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「サギデカ」「私ね、犯罪者の娘なのよ」加害者への思いやりと同情は違う。木村文乃の危うい涙が示した3話

2019/9/21 09:45 エキレビ!

イラスト/たけだあや イラスト/たけだあや

「やり方を変えなきゃいけなくなった。私ね、犯罪者の娘なのよ」

9月14日(土)放送のNHK土曜ドラマ『サギデカ』(NHK総合)第3話。
詐欺を追いかける警察官・今宮夏蓮(木村文乃)は、4歳の頃に両親を亡くしている。今宮の両親は、借金の返済のために詐欺をおこなっていた。今宮は、自分がその詐欺を手伝っていたことをついに思い出した。

二人の「詐欺師の娘」と、主人公の危うさ


3話では、2人の「詐欺師の娘」が描かれた。ひとりは、自分が詐欺師の子だということを忘れていながらも、犯罪に惹かれ警察官になった今宮。もうひとりは、自分も詐欺師になった福田亜佐美(古川琴音)。

福田は、都道府県をまたいでキャッシュカード詐欺をおこなっていた。元号が変わったことを理由にキャッシュカードを新しくしなければいけないと言って、老人からカードと暗証番号を受け取る。

住所不定のまま両親を乗せた車で生活していた福田。元々は父親(牧トオル)が詐欺をしていた。特に強制されているわけでもなく、彼女はそれを受け継いでいた。

福田「死ねば良かったのにな。じゃないと、終わらない」

自分に対して「死ねば良かったのに」と言っているようでもあり、虐待をおこなってきた父親に対しての台詞にも聞こえる。

今宮「あなたがいまやっていることは、復讐?」
福田「どうだろう。復讐って言われると少し、違うのかも。なんだろう。言わせたいんだと思う、あの二人に。『あなたがいてくれて良かった』って」

両親に「あなたがいてくれて良かった」と言われたくて、父親と同じ詐欺というかたちで家族を支えてきた福田。一方、今宮は自分が詐欺師の子だと知って、かえって自分を強く律するようになる。

今宮「両親のことを考えると、罪を犯す者にも道理があるって思ってしまいたくなるから。警察官は、罪は絶対的に憎まなきゃいけない。犯罪者に道理なんかない。絶対に許されない」

これまでずっと、今宮は涙もろい女として描かれてきた。振り込め詐欺の掛け子・加地颯人(高杉真宙)の生い立ちを知ったときや、詐欺被害者の苦しみを思ったとき。加害者、被害者問わず、犯罪に関わる者を思って涙を流してきた。

上司の手塚賢三(遠藤憲一)が言うように、それは今宮が情に厚い人間だからという理由もある。だが、犯罪者の娘だとわかったことで、その涙には加害者である自分や両親への憐憫や擁護の気持ちが混ざっている可能性があると今宮は気づいてしまったのではないか。

情に厚いだけならば、犯罪者にも道理があると思う自分をそこまで律しなくても良いはずだ。情に厚いとは、目の前の相手を思いやる気持ちの強さだから。NHKスペシャル『詐欺の子』(NHK総合)やドラマ『スカム』(MBS/TBS)、本作などの振り込め詐欺ドラマを見て「振り込め詐欺の加害者たちにも、そうなる理由がある」と知った人も多いことだろう。そう認識すること自体は、間違っていない。

しかし、詐欺師たちに思いやりを持つことと憐れみや同情心を抱くことは違うと、本作は「詐欺師の娘」という立場の今宮を通して示す。彼ら加害者の背景に思いを馳せることと、かわいそう、仕方なかったんだと罪を軽く見てしまうことは違うのだと。

今宮というひとりの女性、彼女の危うさをもって、加害者への思いやりと憐れみのバランス感覚を表している。彼女のキャラクター設定のみならず、その難しい危うさ、揺らぎを演じる木村文乃の力量。

振り込め詐欺の時代の終わり


一方、掛け子・加地もひとつの転換期を迎える。慕っていた振り込め詐欺の店長(玉置玲央)が、強盗殺人未遂事件の被疑者となってしまった。振り込め詐欺は、直接人を傷つけるわけではない。それを拠り所にしていた加地は、店長が老人に手をかけてしまったことに動揺する。

店長の上司にあたる番頭(長塚圭史)に、大金を静岡県山内市まで届けるように言われた店長と加地。「金を使うってことがどういうことか勉強して来い」と言われた二人は、静岡のショーパブのような店で遊ぶ。そのとき、店長は雑談のようなトーンで加地にこう言った。

店長「俺さあ、金貯めて飲食とかやりたいんだよね」

殺人を犯したあとに加地と電話をしたとき、店長は電話の向こうで振り込め詐欺を引退したかった思いを吐露する。1話では、加地は「自分の正義だけ信じて、身内だけ愛して生きていくことの何が悪いんですか」と詐欺の仕事を肯定していた。でも、慕っていた店長は詐欺を辞めたいと思っていた。

捕まるのが怖かったのか、罪悪感があったのか、それとも言葉どおり他にやりたい仕事があったのか。番頭に大金をもらっているにも関わらず店長は詐欺を辞めたかった、その理由は明確にはされない。店長は死に、理由を知る術がなくなってしまった。だからこそ、この先、加地は自分のやっていることに悩むだろう。

番頭「下は捕まるって、もう世間に知られていますし」

ドラマの終盤では、絶対に捕まらないと言われてきた振り込め詐欺が、業界的に揺らいできていることが示される。加地という個人の思いの揺らぎと、業界としての大きな揺らぎが、今後どのようにぶつかり波紋を広げていくのか。

ところで、『スカム』の主人公(振り込め詐欺の掛け子・誠実(杉野遥亮))は1986(昭和61)年生まれだった。今作で両親の詐欺に関わってしまった今宮は、1989(平成元)年に4歳だったので、1985(昭和60)頃の生まれだろう。『スカム』と『サギデカ』の主人公は同世代だ。

筆者も1986年生まれで同世代。そんな理由もあり、自分たちが言わば「特殊詐欺第一世代」のような世代だという点につい注目してしまう(「特殊詐欺」という名前がついたのは、2004年のこと)。

「どうせ捕まえられない」とか、思ってんじゃねえぞ>

本作のポスターやWebサイトのトップページには、こんなコピーが記されている。『サギデカ』が振り込め詐欺の加害者たちを捕まえること、ひいてはこの振り込め詐欺時代の終わりをどんな風に描くのか。あるいは、この時代は終わらないことを描くのか。特殊詐欺の時代を生きてきた世代のひとりとしても、残りの2話を楽しみに待ちたい。
(むらたえりか)

■作品情報■
土曜ドラマ『サギデカ』

総合:2019年8月31日(土)スタート 毎週土曜 よる9時から9時49分<連続5回>
BS4K:2019年8月28日(水)スタート 毎週水曜 よる7時50分から8時39分<連続5回>
再放送:総合 毎週木曜 午前0時55分から1時44分(水曜深夜)
配信:NHKオンデマンド  https://www.nhk-ondemand.jp/program/P201700161900000/

出演:木村文乃、高杉真宙、眞島秀和、清水尋也、足立梨花、玉置玲央、長塚圭史、鶴見辰吾、香川京子、青木崇高、遠藤憲一、ほか
脚本:安達奈緒子
音楽:谷口尚久
制作統括:須崎岳(NHKエンタープライズ)、高橋練(NHK)  
演出:西谷真一、村橋直樹(ともにNHKエンタープライズ)
制作:NHKエンタープライズ

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