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アフリカと日本の架け橋になるために。「オープンイノベーション」で未来を開く。

2019/9/18 08:00 ソトコトオンライン

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アフリカの農業の生産性が上がれば、経済も発展し、持続可能な未来にもつながります。 そのためには資金に加え、技術やノウハウが必要です。 投資でアフリカ支援を行う『アフリカ緑の革命ファンド』を立ち上げた美齊津敬二さんが、イノベーションや知的財産の専門家である安彦元さんを訪ね、対談しました。

 今年8月には、横浜市で「第7回アフリカ開発会議(TICAD7)」が開催されるなど、アフリカの国々は日本にとって重要なパートナーであり、国としての支援も続けている。

 そんななか、美齊津敬二さんは、民間からの投資でアフリカの農業の発展を支援しようと『アフリカ緑の革命ファンド』を設立した。今後、日本の技術やノウハウをアフリカの経済発展に活用するため、そのヒントを得ようと、東京都千代田区の九段下にオフィスがある『イノベーションIP・コンサルティング』代表の安彦元さんを訪ねた。

日本企業と、アフリカのベンチャーをつなぎたい。

 美齊津敬二(以下、美齊津) 今日はありがとうございます。私は『アフリカ緑の革命ファンド』の立ち上げをとおして、アフリカの魅力を日本の投資家に伝え、アフリカと日本が互いに持続可能な経済発展を実現していくサポートをしたいと考えています。たとえば農業分野であれば、灌漑技術や肥料開発など、日本の技術やノウハウがいくつもあります。それらを活用し、農業の生産性が向上すれば、アフリカの経済発展がもっとスピーディに進むと思っています。

 安彦 元(以下、安彦) 美齊津さんのアイデアは、グローバルな「オープンイノベーション」の発想ですね。オープンイノベーションとは、企業や団体が外部の企業や大学・研究機関、起業家などから新たな技術やアイデアを募集・集約し、協業することで、革新的な新製品やサービス、ビジネスモデルを開発するイノベーションの手法です。オープンイノベーションの事例では、異業種間の交流や大企業とベンチャー企業による共同研究・開発などがあり、採用する日本企業も増えています。

ケニアの首都・ナイロビ郊外。まだ舗装がされてない道路も多く、砂ぼこりが舞っていたのが印象的。ケニアの首都・ナイロビ郊外。まだ舗装がされてない道路も多く、砂ぼこりが舞っていたのが印象的。

 美齊津 安彦さんは、ビジネス、イノベーション、知的財産(IP)を網羅し、互いのシナジー効果を発揮させるためのコンサルティング会社『イノベーションIP・コンサルティング』を立ち上げて、オープンイノベーションの支援をさまざま手掛けていますよね。国境を越えたオープンイノベーションは、アフリカにどのように貢献すると思われますか?

 安彦 アフリカにおいても、もちろんオープンイノベーションは重要だと思います。ただし、注意すべき点がいくつかあります。まず、先進国の成功事例をそのままアフリカに転用しても、必ずしもうまくいくとは限りません。アフリカをはじめとした新興国のイノベーション戦略は、日本を含む先進国のそれとは異質のものと考えるべきです。スペックをダウンサイジングした安価な製品づくりなども、アフリカの消費者に受けるとは限りませんし、過当競争のリスクも高くなります。

 美齊津 私は昨年、ケニアとガーナを計3回訪問して現地調査を行いましたが、意外だったのが、先進国並みに人件費が高いこと。食品や資源を輸入に頼っているので物価も想像以上に高かったですね。

美齊津さんがケニアで視察をしたコーヒー農園で。美齊津さんがケニアで視察をしたコーヒー農園で。

 安彦 おっしゃるとおり、日本とは社会情勢や自然環境も全く違うでしょうし、我々が持つイメージとのギャップもあると思います。だからこそ、アフリカの消費者が心の奥底で考えている「満たされないもの」は何なのか、アフリカが抱える問題点や真のニーズを深く探ることが大切です。

 美齊津 たしかに、日本と真逆だと感じたのがチョコレートに対する価値観です。日本では「口溶けがいいもの」が人気ですが、ガーナは平均気温が30度以上もあるので、むしろ硬くて溶けにくいチョコがよしとされていました。

 安彦 まさにアフリカならではの消費者心理ですね。ほかにも、農業や食の面ではより深刻な課題もあるはずですし、課題が深刻なほど、その背後には高いニーズがあります。ですから、アフリカ消費者の真のニーズを知る現地パートナーとタッグを組み、アジャストする製品やサービスを提供できれば、爆発的なイノベーションを起こすことも可能だと思います。

ガーナのインキュベーションセンターでは、物流関連サービスの事業モデルのプレゼンテーションを受けた。ガーナのインキュベーションセンターでは、物流関連サービスの事業モデルのプレゼンテーションを受けた。

イノベーションのヒントは、アフリカの社会課題。

 美齊津 アフリカでは今、政情不安を背景に海外に出ていた優秀な人材がどんどん戻ってきていまして、私が視察で出会った起業家たちも若くて熱量の高い方ばかりでした。そして、従来の資源依存の経済を脱却するためにイノベーションを起こしていきたいと、強く語っていたのが印象的でした。

 安彦 美齊津さんは、ファンド設立を通して、そうしたアフリカのスタートアップ企業の支援を目指しているわけですね。

 美齊津 そのとおりです。ただ現状で言いますと、アフリカのスタートアップ支援はアメリカや中国などが先行しています。なかでも成功事例として知られているのが、ルワンダの山岳地帯の住民などにドローンを利用して救急医薬品を搬送するビジネスです。「物流インフラが未整備のため、救急対応が早期に行えない」というニーズにうまく適合させたケースと言えます。

 またケニアの『サファリ・コム』は、「何百万人もの国民が銀行口座を持っていない」という状況を逆手に取り、携帯電話によるモバイル送金サービス「エムペサ(M-PESA)」というイノベーションを生み出しました。

 安彦 未解決の課題を、ドローン、ICT、フィンテック、AI、IoTといった最先端技術で解決するケースが多いわけですね。

 美齊津 通信インフラの整備が遅れた分、固定電話よりも携帯電話やスマートフォンが普及していたり、余計なレギュレーションがないため、『Uber』などの先進的なサービスが急拡大したりと、発展途上だからこそ生まれる勢いやチャンスも強く感じています。

 安彦 新興国ならではの「ブルーオーシャン」にいち早くリーチするためには、イノベーション創出を的確に支援できる仕組みづくりが勝負の分かれ目になると思います。そこでまず重要なのが資金面でのスタートアップ支援、つまりベンチャーキャピタル(VC)を通じて投資を募るシステムだと思いますが、すでにアフリカを含む新興国対象のVCは数多くありますよね?

 美齊津 欧米では、アフリカを専門に投資するVCは一定数以上あり、最近では中国でも同様の動きが出ています。日本では、インドや東南アジアを中心に投資をするVCはありますが、アフリカ専門のVCはまだ非常に少ないです。物理的な距離の問題や情報不足などで、うまく回らなかった時期があったと聞いています。

 安彦 ただ、現在ではいろいろな意味でアフリカとの距離が縮まっているのではないでしょうか。VCも投資をして「はい、終わり」というモデルではなく、「投資→イノベーション創出→ビジネス化」という育成プロセスを、一気通貫型でアシストする仕組みづくりも可能ですよね。それができれば、出資元である日本企業も投資回収の可能性が高くなり、高いメリットが期待できます。

 美齊津 それはまさに『アフリカ緑の革命ファンド』の理念とも合致するところですね。アフリカ農業の発展を目指すスタートアップベンチャーにとっても、日本企業にとってもプラスの成果が生まれるような、一石二鳥のファンドモデルが構築できればと思っています。

アフリカで実証実験を行い、日本に逆輸入する未来も。

 美齊津 私自身、アライアンス・パートナーである『アンドアフリカ』の室伏陽代表と一緒に、現在進行形で現地拠点の構築や情報収集に取り組んでおり、アフリカの現状や文化について学んでいる最中です。ケニア視察の際には、現地の投資マネージャーから、ビジネスの大前提となる信頼関係を構築するだけでも多くのハードルがあるとアドバイスをいただきました。

 その一方で、現地の若手起業家たちからは、しがらみや昔ながらの商習慣とは無縁の新しい時代をつくっていこうという熱い思いを感じました。そうした流れを応援する意味でも、オープンイノベーションを成功させるためのヒントがあれば、ぜひ教えていただきたいです。

ケニア最大のスラム街であるキベラにも、『エムペサ(M-PESA)』のロゴや看板が至るところに。ケニア最大のスラム街であるキベラにも、『エムペサ(M-PESA)』のロゴや看板が至るところに。

 安彦 「知財マネジメント」が鍵を握ると思います。それは現地企業とオープンイノベーションを実現するうえで、互いに信頼感を持ち、よい関係を維持しながら提携するためにも、さらに言えば、アフリカ市場において、ライバル企業より優位に展開するためにも非常に大切なんですよ。

 アフリカへの特許出願は、『アフリカ広域知的財産機関(ARIPO)』及び、『アフリカ知的財産機関(OAPI)』という2つの機関を経由して行う場合がほとんどです。日本からの出願件数は近年増加傾向にありますが、それでも両機関合わせて年間100件も出願されていないのが現状です。

ナイロビ郊外の商業施設開発では、太陽光発電が導入されている。ナイロビ郊外の商業施設開発では、太陽光発電が導入されている。

 美齊津 ということは、知財戦略の重要性があまり認知されていないのでしょうか?

 安彦 そうですね。アフリカで特許を取得しても現地でうまく活用できないのではないか、という懸念もあるかもしれません。しかし、特許権という独占排他的機能を持つ確固とした法的権利があるか否かは、ビジネスが成長局面を迎えた時に大きな影響を生みます。特許権の存続期間は20年間ですので、アフリカの新時代を見据えて、今から手を打っておくべきだと思います。

 美齊津 知財戦略への意識が、先行有利につながるわけですね。

Google』や『Microsoft』といった世界的企業がパートナーとして参画するナイロビの『iHub』。『Google』や『Microsoft』といった世界的企業がパートナーとして参画するナイロビの『iHub』。

 安彦 はい。知財マネジメントまでを盛り込んだアシストができれば、非常に強力だと思います。それにアフリカで起こしたイノベーションを、先進国に「逆輸入」できる可能性も生まれてきますね。こうした流れを「リバースイノベーション」と呼びます。

 先ほど話題に挙がったドローンによる物流ビジネスも、日本では法規制があり実証実験が難しいのですが、まだ法規制のないアフリカであればビジネスの現場で検証ができ、経験やノウハウといった「知的資産」を蓄積することができるはずです。

 美齊津 そういう意味では、日本におけるイノベーション戦略が手詰まりになるなかで、アフリカの市場に一度目を向けてみるとよいかもしれないですね。そこからリバースイノベーションのヒントが生まれる可能性も十分ありますし、ぜひ安彦さんにも、私たちの挑戦に手を貸していただければうれしいです。

 安彦 もちろんです。ぜひ一緒にやりましょう。アフリカはインフラが未整備の地域も多く、さまざまな社会課題があると思います。しかし、だからこそ、日本のすぐれた技術によるイノベーションを待ち望んでいる人が大勢いるのでしょう。私がイノベーターであれば、イノベーションへの情熱が心の底から湧き上がってくる舞台だと思います。

記事は雑誌ソトコト2019年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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