「ネタりか」終了のお知らせ

いつも「ネタりか」をご利用いただきありがとうございます。

この度「ネタりか」は、2019年10月16日(水)をもちまして、サービスを終了させていただくことになりました。

これまで長きにわたりご利用いただき、ありがとうございました。

春風亭小朝さんを変えた一曲「AKB48は噺家に欠ける部分を気づかせてくれた」

2019/8/25 12:06 日刊ゲンダイDIGITAL

落語家の春風亭小朝さん(C)日刊ゲンダイ 落語家の春風亭小朝さん(C)日刊ゲンダイ

AKB48「君のことが好きだから」

【私の人生を変えた一曲】

 春風亭小朝さん(落語家・64歳)

 ◇  ◇  ◇

 子どもの頃から落語やクラシック音楽が自然にそばにあるような家庭に育ちました。噺家になりましたけど、カルロス・クライバーというカリスマ指揮者の演奏会や、ウラジミール・ホロビッツというピアニストの演奏会に影響を受けて、ほかにもマンハッタン・トランスファーというジャズのコーラスグループや、ハイ・ファイ・セット、ユーミンのコンサートも楽しんできました。

 今はそこにAKB48が加わりました。“人生が変わった”と思った、一番最近の音楽ですね。彼女たちを「口パク集団だ」みたいに言う人がいますけど、彼女たちがどれだけ頑張っているか。私はしの笛で、彼女たちの震災復興応援ソング「掌が語ること」を気分転換で吹いたり、移動の車の中とか高座に上がる前にも聴いたりしていますよ。

■何度聴いても心が揺れます

 AKB48に深入りするようになったのは、4年前。依頼が来て、秋葉原で「イヴはアダムの肋骨」というAKB48の劇場特別公演をプロデュースしたんです。それまでAKB48の存在は知っていましたが、詳しくは知りませんでした。プロデュースをするにあたって、彼女たちの歌を聴いて、タイトル、メンバー、セットリストなどを全部決めたんですけど、10代、20代の女子たちがどんなことに喜び、イラつき、怒るってことが、なかなかわからなかった。それが選抜総選挙やショールームを見ると、リアルにわかるんですね。

 昔はアイドルって、自分たちの本音を隠そうとしたでしょ。でも、今のアイドルは隠したらやっていられないから、ショールームでは自分の思いや考えをファンに訴える。総選挙では念願の選抜メンバーに入ったり、傷ついたり、悔し涙を流して卒業していったり……残酷なシステムですけど、生のドラマがあります。10~20代の人間の生々しい生きざまを見ている感じがします。これは落語やお芝居をやるうえでも、血となり肉となります。貴重な人間観察をさせてもらってると思います。これは今まで生きてきて、なかったことです。

 彼女たちは貴重な青春時代を、ただ学校とレッスンに明け暮れ、恋愛は禁止され、遊んでいる時間はありません。しかも、まわりは全員ライバル。総選挙で容赦ない浮き沈みを、短い人ではAKB48で活動するたった4、5年で経験するんですよ。

 AKB48は今、全盛期よりメンバーはかわいくなり、ダンスのスキルも上がっています。トークもできて、うまくボケることもできる。にもかかわらず、グループ全体としては行き詰まっている。ただ売れたい、チヤホヤされたい、という人が増える一方で、このままじゃダメになる、と頑張っている人たちもいます。それは、彼女たちを見ていればハッキリわかります。たとえば、最後にみんなで並んで挨拶をして、ステージから手を振りながら引っ込んでいく時。お客さんから見えなくなるわずか30センチ手前ぐらいで気を抜く人もいるけど、スターは“もう一入れ”して消えていくんです。

ファンをどうつかむか 本当に苦しんで考えている

 これは、われわれの世界にも共通するので、教えられちゃう。われわれ噺家って“ファンの心をつかむ”という意識はありません。落語を一生懸命やって、聴いて喜んでもらって、お客さんが増えていくんだけど、握手会があるわけじゃなく、「落語やってりゃいいんでしょ」って思ってる人のほうがはるかに多いと思います。

 それに比べ、彼女たちは、どうつかむか、どうしたらお客さんが少しでも喜んでくれるか、本当に苦しんで考えている。彼女たちは噺家に欠けてる部分を持ってるな、と思います。彼女たちの生きざまを見せてもらい、気づかせてくれて、私の人生が豊かになったと思います。

 私も入門して新人の頃、よく先輩方に「見る人は、見てるよ」と言われました。今、私が先輩の立場になってみると、そのとおりで、AKB48を見ても同じことを感じます。

「イヴはアダムの肋骨」をプロデュースした時、最後の曲にしたのが「君のことが好きだから」でした。これはAKB48グループを象徴する曲だと思うんです。

 ファンの男の子の気持ちを歌った歌。歌詞のなかに“好きだ”という言葉がたくさん入っていて、私はこの“好きだ”という言葉が、“愛してる”より好きなんです。“愛してる”というのは西洋から入ってきた、神がかった完結した言葉。それに比べ“好き”という言葉は庶民的で、“大好き”と言ってみたり、“すごく好き”と言ったりもできる。

 “好き、好き”と何度も聞いていると心が揺れますね。

■推しメンは?

 私が推しているメンバーは岡田奈々さん、岩立沙穂さん、村山彩希さん、卒業した小嶋真子さん、姉妹グループのSKE48だと大場美奈さん、江籠裕奈さん……。

 器量がいいとか、彼女たちのグッズを持っているということじゃないんです。誰も見てなくても、とにかく頑張るぞって人たち。

 彼女たちの頑張りによっては、AKB48は変わる可能性があります。

(聞き手=中野裕子)

▽しゅんぷうてい・こあさ 1955年、東京都生まれ。70年、春風亭柳朝に入門。80年、36人抜きで真打ち昇進。落語界初の日本武道館公演を成功させ、近年は文豪・菊池寛の作品を落語にして口演するなど常に新しい企画に挑戦している。俳優としては「三匹が斬る!」(テレビ朝日系)やNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」などで活躍。2014年度芸術選奨文部科学大臣賞など多数受賞。

このネタ読んでどう思う?

投稿ありがとうございます。
よかったらログインしてコメントも書きませんか?閉じる

このネタへのコメント10

コメントを投稿するにはログインが必要です。

ログインしてコメントを書く

カテゴリ別アクセスランキング

トップ