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ジェファーソン・エアプレインの『フィルモアのジェファーソン・エアプレイン』はライヴアクトとしての実力を世界に知らしめた傑作!

2019/8/23 18:00 OKMusic

ジェファーソン・エアプレインはアメリカを代表するロックグループのひとつであり、その存在はドラッグやヒッピーといったアメリカならではのアイテムと密接に関連しているため、日本人には理解しにくい部分がある。ジェファーソンとともにサンフランシスコの3大グループと呼ばれたグレイトフル・デッドやクイックシルバー・メッセンジャー・サービスについても同じことが言えるのだが、サイケデリックロックと呼ばれた彼らの新しいスタイルは、60年代半ばに起こったブリティッシュ・インヴェイジョンからの巻き返しを図っただけでなく、ロックンロールが“ロック”へと変わったことを実感させるサウンドで、70sロックへの橋渡し役も務めた。今回取り上げるのは彼ら初のライヴ盤となった5thアルバム『フィルモアのジェファーソン・エアプレイン(原題:Bless Its Pointed Little Head)』では、ライヴアクトとして大いに評価されていただけに、スケールの大きい演奏が繰り広げられている。クリームやザ・フーなど、ブリティッシュロックのアーティストにも大きな影響を与えた傑作である。

ライヴ可能なコーヒーハウスの隆盛

1950年代末、すでにロックンロールが生まれていたとはいえ、その頃の流行はフォーク・リバイバルであり、アーティストが多くいた東海岸ではライヴ演奏のできるクラブの開店が待たれていた。日本でよく知られているのは、グリニッチ・ビレッジのビターエンドやガーズ・フォーク・シティ、ボストンのクラブ47あたりだろうか。60年代初頭には大小さまざまなクラブが作られ、フォークシンガーたちは毎夜のように出演していた。ボブ・ディラン、エリック・アンダーソン、フィル・オクス、ハッピー・アンド・アーティ、デイヴ・ヴァン・ロンク、トム・パクストン、ジョーン・バエズ、ジュディ・コリンズ、ティム・ハーディン、ジェリー・ジェフ・ウォーカー等々、この時代のフォークシンガーは今でも忘れられてはおらず、彼らの歌や精神は現代の若手シンガーにも影響を与え続けている。

西海岸への移住

フォーク・リバイバルの噂を聞きつけた全米各地の若者たちは、グリニッチ・ビレッジやボストンへと押し寄せるようになるが、純粋に音楽の腕を磨きたいアーティストたちにとっては音楽を聴くでもなく増えていく迷惑な観客に我慢できず、離れていく者が増えた。新天地を求めて彼らが向かった先は、はるか遠く離れたロスアンジェルスやサンフランシスコといった西海岸の町である。60年代半ばにはサンフランシスコのヘイト・アシュベリー周辺に居つく若者たちが急増し、「自然に還ろう」や「愛と平和」をスローガンにした西海岸独特の文化が生まれる。彼らは申し合わせたようにジーンズ、バンダナ、長髪、ヒゲで、反戦思想を持ち自然を愛した。アルコールやタバコはもちろん、大麻やLSDなどの麻薬もよく使っていた。彼らは“ヒッピー”と呼ばれ大人たちが主導する文化を否定、若者たちだけのコミューンを作るなど、カウンターカルチャーを押し進めた。「30歳以上は信じるな!」という時代であった。

西海岸でヒッピーが激増したこともあって、さまざまな音楽イベントや朗読会などを開くために会場の確保が急務であった。ビル・グレアムはフィルモア・オーディトリアム(のちに移転しフィルモア・ウエストとなる)を作り、サンフランシスコでロックのメッカとして知られるようになる。ここでヒッピーたちを中心に大きな人気を誇っていたのが、グレイトフル・デッド、クイックシルバー・メッセンジャー・サービス、ジェファーソン・エアプレインの3グループである。アドリブ中心のサイケデリックロックは、アシッドやアルコールでトリップ状態になっているオーディエンスにとっては文句なしの演奏であった。中でも、ジェファーソン・エアプレインはライトショー(トリップ状態を高めると言われる)と長尺曲のライヴ演奏を組み合わせるなど、地元周辺で大きな支持を得ていた。

マトリックスの登場

ジェファーソンのリーダー、マーティ・ベイリンはフィルモアの成功を見て、自分たちのホームとなるライヴハウスを作ろうと奔走する。ベイリンと友人3人の投資によって65年にできたのがマトリックスである。ジェファーソンがマトリックスのハウスバンドとして出演すると、新聞等で彼らのことが取り上げられるなど大きな評価を得る。マトリックスには他にもグレース・スリック&グレート・ソサエティ、サンタナ、ビッグブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーなどシスコの人気ロックグループや、ジョン・リー・フッカー、ハウリン・ウルフ、オーティス・ラッシュらのような本物のブルースマンも出演するなど、マトリックスはフィルモア・ウエストと並んで、サンフランシスコの音楽シーンにおいて大きな役割を果たしたと言える。

ジェファーソン・エアプレインの デビュー

ほどなく、ジェファーソン・エアプレインはRCAレコードと契約が決まり66年にデビューアルバム『テイクス・オフ』をリリースする。彼らはサンフランシスコ以外でライヴを行なったことがなく、メディアに取り上げられることもなかったため、レコード会社もそんなに売れるとは思っていなかったが、蓋を開けてみると好セールスを記録する。しかし、このアルバムはフォークロックの要素やバーズやビートルズの影響が強く、彼ら独自のサウンドはまだ確立されてはいなかった。

この後、女性リードヴォーカルのシグネ・トリー・アンダーソンとドラムのスキップ・スペンスが脱退(モビー・グレープを結成する)。その代わりにヘイト・アシュベリーで圧倒的な人気を誇っていたグレート・ソサエティのグレース・スリックが参加することになり、グループは大きな注目を浴びることになる。当時、頭角を現し始めたジャニス・ジョプリンでも、グレースのカリスマ性にはかなわないと言われていたほどのスターである。なんと言っても彼女は容姿が美しく、日本でも当時ママス&パパスのミッシェル・フィリップスと人気を二分していた記憶がある。ドラムはスペンサー・ドライデンが加わり(のちにニュー・ライダース・オブ・ザ・パープル・セイジに加入)、グループはこの時点で最強の布陣となった。

大きな評価を得た 『シュールリアリスティック・ピロウ』

リードヴォーカルとコーラスは、マーティ・ベイリン、グレース・スリック、ポール・カントナーの3人が担当、ある時はユニゾンで、ある時はハモるという彼ら独特のヴォーカルアレンジはユニークで、こういうスタイルは今でも他にはいない。巧みなリードギターとヴォーカルにはヨーマ・コーコネン、ベースにジャック・キャサディ、ドラムにスペンサー・ドライデンというメンバーで、これまでにも増してライヴ演奏の評価は高まっていく。

このメンバーで2ndアルバム『シュールリアリスティック・ピロウ』(‘67)をリリースすると、全米チャート3位という驚異的な成功を収める。シングルカットした「あなただけを(原題:Somebody To Love)」は5位、「ホワイト・ラビット」は8位になった。この2曲はスリックのグレート・ソサエティの頃からの持ち歌で、サンフランシスコのヒッピーたちの間ではすでによく知られていたのである。創刊されたばかりのロック専門誌『ローリング・ストーン』でもこのアルバムは大いに評価され、ジェファーソン・エアプレインの名は世界レベルで広まっていく。ヒットした2曲はサイケデリックロック(ガレージパンクというほうが的確か)の香りはあるものの、アルバム全体を通すとフォークロック的な要素が強く、ライヴ演奏時の激しさがあまり感じられなかったため、ライヴ盤を待ち望むファンは多かった。

フェスへの参加と ジミヘン、ジャニスの影響

マトリックスとフィルモアの出演はもちろん、67年には伝説の『モンタレー・ポップ・フェス』に参加、ジミヘンとジャニスの演奏を間近で観てジェファーソンの面々も大きな影響を受けることになる。前作から1年経たずにリリースされた3rdアルバム『アフター・ベイシング・アット・バクスターズ』(‘67)は、フォークロック色は影を潜め、攻めのサイケデリック路線を追求した作品となった。メンバー間のコミュニケーションがうまくいっているのか、初期のスタジオ盤の中ではこのアルバムの完成度が最も高いと言えるだろう。

68年には4thアルバム『創造の極致(原題:Crown of Creation)』をリリース、ジャケットに原爆のキノコ雲が使われていたり、「忠臣蔵」という日本語の曲が収められていたりするなど、これまでにない反体制的な主張を感じる作品となった。全編を覆う重苦しい暗さが特徴であるものの、チャートでは6位になるなど、彼らの人気ぶりが窺える。

本作『フィルモアのジェファーソン・ エアプレイン』について

1969年、ようやくライヴバンドとして本領を発揮する作品が制作される。それが5作目となる本作『フィルモアのジェファーソン・エアプレイン』である。収録曲は10曲で、収録時間はLP盤に収められるギリギリの50分強というボリューム。録音場所はフィルモア・イーストでの収録が4曲、フィルモア・ウエストが6曲で、1968年10月〜11月にかけてのもの。全編にわたり(イントロの1曲目は除く)、ライヴならではの熱いノリが満載だ。3人のヴォーカルの掛け合いはスタジオ盤よりはるかに攻撃的で、スタジオとライヴでは別グループのようだと言う人がいるのも頷ける。名曲「あなただけを」はライヴバージョンを聴いてしまうとスタジオ盤は物足りなく感じてしまう。アルバムのラストを飾る「ベアー・メルト」は11分以上に及ぶ大作で、サイケデリックロックのテイストに満ちている。曲のほとんどがアドリブで構成されており、60sロックのエッセンスが詰まっている。また、ジャック・キャサディとスペンサー・ドライデンのリズムセクションは、かなりR&B的なフィーリングを持っているのも、スタジオ盤を聴いているだけでは分からない側面だ。ロックが最もロックらしかったあの時代、本作はまさに時代の雰囲気をそのまま閉じ込めた傑作だと思う。

なお、CD化に際してはボーナストラックが3曲収められており、ビル・グレアムが好きな名バラード「Today」をはじめ、どれもフィルモア・ウエストでの録音である。

TEXT:河崎直人

アルバム『Bless Its Pointed Little Head』


1969年発表作品



<収録曲>
1. クラージー/Clergy
2. 恋して行こう/3/5 of a Mile in 10 Seconds
3. あなただけを/Somebody to Love
4. ファット・エンジェル/Fat Angel
5. ロック・ミー・ベイビー/Rock Me Baby
6. 人生の裏側/The Other Side of This Life
7. イッツ・ノー・シークレット/It's No Secret
8. プラスチック・ファンタスティック・ラヴァー/Plastic Fantastic Lover
9. ターン・アウト・ザ・ライト/Turn Out the Lights
10. ベアー・メルト/Bear Melt
〜ボーナス・トラック〜
11. トゥデイ/Today
12. ウォッチ・ハー・ライド/Watch Her Ride
13. ウォント・ユー・トライ/Won't You Try

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