「ネタりか」終了のお知らせ

いつも「ネタりか」をご利用いただきありがとうございます。

この度「ネタりか」は、2019年10月16日(水)をもちまして、サービスを終了させていただくことになりました。

これまで長きにわたりご利用いただき、ありがとうございました。

ライザップの急落は予測できた。CMとは違い財務はメタボ気味

2019/8/19 08:30 日刊SPA!

公式ホームページより 公式ホームページより

「あの企業の意外なミライ」を株価と業績から読み解く。滋賀県出身、上京2年目、犬より猫派、好きな言葉は「論より証拠」のフィスコ企業リサーチレポーター・馬渕磨理子です。私はこれまで、上場銘柄のアナリストとしてさまざまな企業の業績予測、市況予測を行ってきました。また、自身で株式投資を5年以上に渡って行い、市場に向き合ってきました。本企画では、そんな私、馬渕の視点からみなさまに「あの企業の意外な情報」をお届けます。

◆売上2倍でも利益は赤字、株価も大暴落

 今回取り上げるのは、ライザップグループ<2928>の財務分析です。ライザップグループといえば、M&Aにより急拡大したあと、相次いで買収した企業の再建に手間取り、大幅な赤字となった“急拡大と破綻”のイメージが強い企業ではないでしょうか。

 事実、2019年3月期第四半期に赤字に転落し、通期で193億円と大幅な赤字となり、一時、1500円以上あった株価が、200円台まで(7分の1以下)に下落しています。そんなライザップですが、直近決算2019年3月期第1四半期では営業利益が黒字転換しています。

 8月9日に開いた決算説明会で瀬戸健社長は「赤字の中でも赤字幅が大きく縮小したり、黒字の会社の黒字が大きく伸びたり、ひとつひとつ進めている。今期はしっかり足元を整えて、来期は大きなV字回復に向けて進みたい」と述べています。

 そもそも、ライザップが大幅赤字になる前に、財務上の兆候はなかったのでしょうか? 分析すると、その答えは、しっかり潜んでいたのです。その答えを、ライザップの財務諸表に注目して3分ほどで説明していきます。

 キーワードは、「メルカリ転売で稼ぐ副業サラリーマン」です。

◆ジェットコースターのような営業利益

 ライザップの損益計算書(略して“PL”=profit and loss statement)を見てみましょう。PLとは、簡単に言えば企業に「出てくるお金」と「入ってくるお金」を示したグラフのこと。ライザップのPLを見てみると、売上高は…

2016年…約554億円

2017年…約952億円(+398億円)

2018年…約1220億円(+268億円)

2019年…約2225億円(+1005億円)

営業利益は…

2016年…約31億円

2017年…約102億円(+71億円)

2018年…約135億円(+33億円)

2019年…約-93億円(-228億円)

 となっており、〈売上高はわずか3年で4倍。営業利益は2年で4倍〉になっています。が、その翌年には、大赤字に転落しています。

 なぜここまで急転落したのでしょうか?

◆答えは「負ののれん」にあった!

 答えを急げば、急転落の背景にあったのは「負ののれん」の存在。

「のれん」については、以前紹介した楽天の財務分析でも詳しい解説をしています。

 のれんについておさらいしておきましょう。

 企業を買収する際に、その企業の簿価純資産額を下回る金額で買収した場合、その差額は収益として計上されることになっています。

 例えば、ある会社を買収したとします。

 その会社の簿価純資産額は20億円。その会社を10億円で買収した場合、20億円−10億円=10億円が「負ののれん」です。この10億円は、「その他の収益」に組み込まれるのです。実際、有価証券報告書で「負ののれん発生益」の欄で記載されているデータを見ると、

2017年…58億円
2018年…86億円
2019年…12億円

 と推移しており、営業利益が拡大していた時期に、ライザップは「負ののれん」として収益に計上していたことから、純利益が高く見えていましたが、本来のパーソナルトレーニング事業での営業利益は「見かけよりも低かった」のです。

 これは、SPA!ではおなじみのメルカリ転売で稼ぐサラリーマンで例えるとわかりやすいかもしれません。本来の年収は300万円と変わらないものの、メルカリ転売で年間100万円稼いでいたサラリーマンがいたとします。

 彼はメルカリ転売用に、リサイクルショップで服を何着も仕入れていたとします。その服はメルカリで転売した場合、仕入れ値より高くつくものばかり。ある年は、メルカリ転売がかなりうまくいきそうで、副業収入が200万円に達しようとしていました。そこで転売した場合に見込まれる利益を「副業収入」として自分の年収に計上していたのです。

 サラリーマンの年収は300万円のままでも、副業収入が100万円、200万円…と毎年増え続ければ、トータルでの年収は高くなります。しかし、転売が思うようにいかなくなった場合、一気に年収は下がります。サラリーマンとしての年収が上がっていないからです。

 つまり、ライザップは本業(=サラリーマン)での年収アップではなく、副業(=メルカリ転売)で多くの利益を上げていたのです。

◆持ってる資産は「サプリの在庫」

 ここまでで、好調に見えたライザップの実状がかなり明らかになったと思いますが、さらに同社の裏側を読み解くべく、同社の財務諸表(略して“BS”=Balance Sheet)を分析しましょう。

 ライザップのBSは、2016年から2019年にかけて資産が増加しています。ただし、大事なのはその中身。2018年の資産合計1743億円のうち、66%にあたる1166億円は「流動資産」で、ここがポイントです。「流動資産」とは簡単に言えばすぐにお金に変えられるもの、現金・在庫・売掛金です。

 その中でも、売掛債権や、会員向けのサプリの在庫である「棚卸資産」が総資産額の39%を占める一方、現金預金は436億円の25%。つまり、「在庫による資産」が分厚かった背景があります。

「在庫による資産」が多い状態は、財務諸表においては安定した状態とは言いにくいのです。なぜなら在庫は、企業の資金を物に変えた形であり、売れることで初めて利益になります。大量に在庫を抱えて管理が行き届かなくなるケースは多いのです。

 当時のイケイケ企業のイメージとは違い、ライザップは意外と脆弱な財務諸表だったのです。

◆財務諸表界の“リバウンド状態”や!

 最後に、キャッシュフロー計算書(略して“CS”= Statement of cash flows)を分析して、赤字転落が予測できた決定的根拠をお話しましょう。

 CSについて、改めて復習しておきます。CSとは、簡単にいうと、「会社にどのくらいの現金があるか」ということがわかるデータです。

 キャッシュフロー計算書において資金の流れは、「営業活動」、「投資活動」、「財務活動」の3つにわけて表しています。

「営業活動によるキャッシュフローがプラス」というのは、会社の事業(=パーソナルトレーニング事業)で稼げていることを意味します。

 逆にマイナスだと、事業を続けるほど現金が出ていく状況です。ライザップの場合、「営業活動によるキャッシュフロー」は下記のように推移しています。

【ライザップの営業活動によるキャッシュフロー】
・2016年…約8.6億円

・2017年…約1.7億円

・2018年…約0.87億円

・2019年…約-104億円

 一目瞭然。2016年から2019年にかけ、ライザップの「営業活動によるキャシュフロー」は急激に減少し、2019年時点で100億円を超えるマイナスに転換しています。まさに、財務諸表における“リバウンド状態”。せっかく好調だったムキムキの肉体が、見事にメタボ状態に陥ったことがわかります。

 ただし、直近の「営業活動によるキャッシュフロー」はプラスに戻っており、少しづつですが、本業(=パーソナルトレーニング事業)で現金を稼げている状態に戻っていることがわかります。リバウンド後も、再び食事制限と筋トレで体型を取り戻しつつあるんですね。

「投資活動によるキャッシュフロー」はどうでしょうか。これは、会社の将来のために、ライザップがどれだけ投資できているかを示したものです。成長している会社の「投資活動によるキャッシュフロー」は通常、マイナスになります。ライザップの場合、勢いのあった2017年は「投資活動によるキャッシュフロー」はプラスでしたが、この頃は営業利益が鈍化していた状態(先ほどのサラリーマンの例えで言えば、本業の年収は上がっていない)だったので、事業拡大との「ゆがみ」を感じます。

「財務活動によるキャッシュフロー」も見てみましょう。こちらがマイナスだと、負債を減らしてお金を返しているため、現金が潤沢であることを示します。ライザップは、2016年~2019年の間、ずっと「財務活動によるキャッシュフロー」はプラスです。銀行から長期借入金や外部からの資金調達が多かった時期で、ライザップの成長は借金が支えていた状態だったのです。

 つまり、借金をしてメルカリ転売のための服をリサイクルショップから仕入れた状態といえばわかりやすいでしょうか。もちろん、負債を活用し、成長を加速させるのは必要なことです。が、営業キャッシュフローが極端に小さい場合は、要注意なのです。

 ちなみに、現在のライザップですが、経営再建を軌道に乗せた後は、再びM&Aなどの拡大路線にかじを切る可能性があるようです。さすがはダイエット事業を進める企業。自社の財務諸表がリバウンドしても、決して諦めない姿勢が伺えます。はたして、今度はゆがみのない形での成長ができるのか。

 投資家の関心は高そうです。PLとBSを見るだけで、ここまで企業のイメージは変わるもの。経営者の資質のみに着目するのでもなく、PLとBSという無機質なグラフだけとにらめっこするのでもなく、その両者を観察することで「気になる企業の未来」はクリアになっていくのです。

【馬渕磨理子】
日本テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi

このネタ読んでどう思う?

投稿ありがとうございます。
よかったらログインしてコメントも書きませんか?閉じる

このネタへのコメント1

コメントを投稿するにはログインが必要です。

ログインしてコメントを書く

カテゴリ別アクセスランキング

トップ