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山の主――七竜のへびを求めて/黒史郎の妖怪補遺々々

2019/8/14 08:30 ムーPLUS

妖怪補遺々々(ようかいほいほい)

ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」! 連載第55回は、前回に続いて京丹後での妖怪補遺々々です。高天山で黒史郎は何を見たのでしょう?

 

小さくても油断は禁物

京丹後市網野町浜詰の夕日ヶ浦海岸と賀茂川の間に、七竜峠という場所があります。頂上には七竜峠ロードパークと展望台があり、そこからはリアス式海岸線を望めます。

この峠には次のような伝承があるのです。

 

網野の塩江村と磯村の間に、大きな岩山の峠道がありました。

ここが七竜峠なのですが、昔は車など通らない石ころの敷かれた道だったそうです。

この峠近くの山の頂上付近に大きな穴があり、その中には1匹の蛇が棲んでいたといいます。この蛇は山の主でした。

 

ある日のことです。この峠をひとりの旅人が通りました。

ひと休みしようと頂上で煙草を吸っていますと、白くて小さな蛇がするするとそばに寄ってきます。食べ物でも欲しいのでしょうか、首を傾げ、ずいぶんと人懐こい様子です。

それを見た旅人は、手にしていた煙管(キセル)で蛇の頭をこつんと叩きました。ちょっとした悪戯のつもりでした。慌てて逃げるだろうと思ったのです。

ところが蛇は逃げません。それどころか、たちまち杖ほどの大きさになるではありませんか。そして、見る見る棒のようになり、電柱のようになって、ついには両手で抱えるほどの太さの大蛇となります。

蛇は旅人の顔を睨むと、あっという間もなく呑み込んでしまいました。

 

そんな恐ろしい光景を、たまたま遠くから見てしまった人がいました。それはもう驚いて、山を駆け降り、必死に逃げ帰ります。なんとか村に帰りつくと、今度は峠で見たことを皆に話しました。やがてこの話は村中に知れ渡り、村人たちはこの白い蛇を【七竜のへび】と呼んで恐れ崇めるようになりました。

この蛇はとても賢く霊験あらたかな神として信仰対象となり、祠も建てられました。願をかける時は鶏卵を神前に供えたといいます。

 

七竜のへびはどこに

【七竜のへび】、あるいは【七竜へび】と記されるこの蛇は、峠の近くにある山の主ということでしたが、その山というのが前回ご紹介した【ババメ】の棲む高天山のようなのです。

 

【ババメ】の骨が横たわっていたとされるババメ谷付近から頂上へ向かって進めば、七竜のへびの棲んでいた大きな穴が見つかるかもしれません。

さらに上を目指して進んでみました。

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頂上までもうすぐという地点で急に開けた場所に出ました。

七竜のへびの巣穴はこの辺りだろうかと捜しましたが、洞穴らしきものは見当たりません。と、ここで気づいたのですが、七竜のへびははじめ、小さな白い蛇の姿で現れています。もしかすると、普段はその小サイズで暮らしていたのかもしれません。それなら、巣も小さい穴で十分です。

そんな小さな穴を山中で見つけるのは不可能です。本当に蛇の巣くう穴を見つけるのも危険です。でも、まだ望みは捨てません。祠まで建ててもらうくらいの蛇ですから、その棲み処である巣も祀られていた可能性もあります。さらに頂上に近い地点で捜すことにします。

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運動不足な作家の体力は、そろそろ限界に達しようとしています。

ネットの情報では、高天山は比較的、登りやすい「低い」山だとあったので少々軽んじていたのですが、そんな私の両脚に容赦なく疲労がしがみついて歩みを重くしてきます。

まるで、こちらの意志を試されているかのように、暑さと倒木が行く手を塞ぎます。
そんなときに、こんな誘惑の言葉が目の前に……。

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頂上まであと250メートルほどのところを、このルートで行けば100メートルで行けるというのです。行かないわけがないでしょう。迷うことなく第2ルートを選びました。

 

このときの私は、暑さと疲労によって冷静な判断ができなくなっていたのです。

待っていたのは、見上げるほどの急な傾斜でした。道らしい道はありません。ロープを放せば即座に落ちるような傾斜を、掴めるものはなんでも掴んで必死に登りました。

きっと登山慣れしている方には難しいルートではないのでしょうが、私のような甘い考えの素人が安易に踏み込んでいいルートではありませんでした。六社クラブの皆様、すみません。

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頂上に辿り着きました。

高天の山中では七竜のへびが祀られているような痕跡は発見できず、大きな穴も見つけられませんでしたが、来てよかったと思える光景と風が、この頂上にはありました。

網野の町が一望できます。青々とした日本海があります。京丹後は浦島伝説で知られる地。なぜ、自分は蛇の屍や巣穴を求めて汗だくで山登りをしているのかとわれにかえることは一度もなく、再びババメと七竜のへびの痕跡を捜しながら下山したのでした。

 

<参考資料>

網野町教育委員会『ふるさとのむかしむかし』

網野町公式サイト https://amino-info.gr.jp/sp/index.html

 

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