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あの谷川俊太郎も「ひとり暮らし」!むなしくなったら思い出して

2019/8/9 14:45 AM

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by Edu Grande

ひとり暮らしは、どうしても生活が単調になったり、殺風景になったりしがちだとは思う。休日は何時に起きても何時に寝ても誰にも怒られないし、食べるのは自分だけだから、ちょっと人にはお見せできないようなテキトーな食事をとっていたりする(納豆ご飯にスーパーのお惣菜だけとか)。学生のひとり暮らしなら心おきなく満喫できるこの自由も、30代にもなってくるとちょっと虚しいというか、寂しいというか。
Twitterや匿名ブログで「ひとり暮らしのこんな生活、なんのために生きているのかわからない」と悲痛な叫びを吐露している人を見かけると、そこまで思いつめなくても……と同情しつつも、腹の虫の居所が悪いとそういう気持ちになってしまうのもわからなくはない。

対策としては、私のおすすめは部屋に花を飾ることである。ペット禁止の賃貸に住んでいる人もいるだろうから(私もそう)犬や猫やハムスターを飼うのは難しいけれど、部屋の中に自分以外の生き物がいる、というのはよい。花はいわゆるペットではないけれど、かわいい花束を買ってきて活けて、生活をする中でつぼみが膨らんだりしおれたりするのを眺めていると、殺風景さがいくらか緩和する気がする。

谷川俊太郎さんの「ひとり暮らし」

詩人の谷川俊太郎さんも「ひとり暮らし」の人であり、その様子はエッセイ『ひとり暮らし』に書かれている。過剰に虚しさや寂しさを煽るわけでもなく、かといって華やかなわけでもなく、淡々と日々の暮らしについて書かれているこのエッセイは、ひとり暮らしを続けている(あるいは、家族がいたがふたたびひとり暮らしになった)大人におすすめだ。

「毎日変わりばえのしない朝昼晩を繰り返してきたように思える」と谷川俊太郎さんは言うが、「死にもせず殺されもせず大病にもかからず、そういう毎日を繰り返せたこと自体、ほとんど奇跡と言っていいほどドラマティックなこと」だ、とも書く。
殺風景なのは工夫次第でどうにかなるし、単調なのは考えようによってはありがたいことでもある。もちろん「そうは言っても、虚しいものは虚しい」と思う気持ちもわからなくはないが、しかし虚しいと言っているばかりでは発展がないので、そういうときは「あの谷川俊太郎もひとり暮らし」ということをまず思い出してもらいたい。

このエッセイで谷川俊太郎さんは「人間社会の基本単位は一人の個人だ」と書いているのだけど、若い頃は「基本単位は一組の男女だ」と考えていたらしい。考えが変わった理由は離婚などの紆余曲折を経たからだろうが、一組みの“男女”とする考え方は今の社会状況とも合っていないし、まあ、やっぱり人間社会の基本単位は一人の個人なのだろう。家族やパートナーは「一時的な協定」くらいに考えていたほうが、家族がいる側にとってもいない側にとっても、気楽ではないだろうか。

ひとり暮らしを楽しむこと、老いを楽しむこと

変わらない単調な日々と言いつつ、時間はどんな人にも平等に訪れるので、体はどうしたって衰えていく。そのせいか、『ひとり暮らし』には老いについて書かれている部分も少なくない。
「結婚式よりも葬式のほうが好きだ。葬式には未来がなく過去しかないから気楽である。結婚式には過去がなく未来ばかりあるから、気の休まるひまがない」という文章が『ひとり暮らし』にはあるのだけど、そういうものだろうか。多くの人が寂しい、虚しい、悲しいととらえるところを、谷川俊太郎さんは楽しい、自由だ、気楽だと書いている。もしかしたらこれらの要素は、表裏一体なのかもしれない。

自分のことだけを考えていればよかった10代20代が終わり、30代を越えると、「自分以外の誰かのため」に生きることを考えるようになる人も少なくない。ひとり暮らしの大人にはその選択があたえられていない場合が多いので、これをもどかしく感じる人もいるのだろうけど……谷川俊太郎さんや、あとは上野千鶴子さんの『おひとりさまの老後』などを読んでいると、どうやら老人になると、もう一度「ひとり」に向き合わなければいけない時期がやってくるみたいだ。

「他人に求められなくとも、自分のうちから湧いてくる歓びをどこまでもっていられるか、それが私にとっての老いの課題かもしれない」と谷川俊太郎さんは書く。
「自分のうちから湧いてくる歓び」を考えることは、ひとり暮らしの人間が毎日を虚しいと思わないために、すごく重要だ。

ひとり暮らしを楽しめるか否かは、老いを楽しめるか否かと、共通する部分があるのかもしれない。上手な老い方の訓練をしていると思えば、ひとり暮らしの虚しさも、少し軽減されはしないだろうか。

Text/チェコ好き

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