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マクドナルドが大赤字からV字回復できた最大の理由/馬渕磨理子

2019/8/7 08:30 日刊SPA!

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「あの企業の意外なミライ」を株価と業績から読み解く。滋賀県出身、上京2年目、犬より猫派、好きな言葉は「論より証拠」のフィスコ企業リサーチレポーター・馬渕磨理子です。

 私はこれまで、上場銘柄のアナリストとしてさまざまな企業の業績予測、市況予測を行ってきました。また、自身で株式投資を5年以上に渡って行い、市場に向き合ってきました。本企画では、そんなリサーチャーである私馬渕の視点からみなさまに「あの企業の意外な情報」をお届けます。

◆“不祥事=マクドナルド”は過去のもの

 今回取り上げるのは、日本マクドナルド<2702>の財務分析です。

 マクドナルドといえば、少し前までは不祥事や大規模な店舗閉鎖など、“不調”のイメージが強い企業だったのではないでしょうか。

 2014年7月に、中国の工場で期限切れの鶏肉の使用問題が発覚し、信頼を大きく失った日本マクドナルド。事実、2014年、2015年は営業損失赤字に転落し、14年~15年の損失は567億円となりました。

 そんなマクドナルドですが、その後たった2年で黒字化に成功。2018年12月には営業利益250億円を計上するまでにV字回復しているのです。どのようにして、マクドナルドはこのV字回復を成功させたのでしょうか。

 新メニューの開発? 「夜マック」を始めたから? 赤字店舗を閉鎖したから? メニューの新名称の公募でバズったから?

 どれも正解かもしれませんが、それよりもっと大事なことがありました。その答えを、マクドナルドの財務諸表に注目して3分ほどで説明していきます。

 ヒントは、“開業医”の成功戦略です。

◆2年で600億以上の増収

 まず、マクドナルドの損益計算書(略して“PL”=profit and loss statement)を見てみましょう。PLとは、簡単に言えば企業に「出てくるお金」と「入ってくるお金」を示したグラフのこと。

 マクドナルドのPLを見てみると、売上高は…

2013年…約2604億円

2015年…約1894億円(-710億円)

2017年…約2536億円(+642億円)

 営業利益は…

2013年…約115億円

2015年…約-234億円(-349億円)

2017年…約189億円(+423億円)

 となっており、わずか2年で600億以上の増収、400億円以上の増益となっています。

 ちなみに不祥事発覚前のマクドナルドはの閉店店舗数は2012~2013年で約300店舗でしたが、2014~2015年の合計は約260店舗と、減少傾向にあります。

 さらに、2015年以降毎年改装を行ってきた店舗は500店舗近くあります。現在の同社は攻めの経営をしていることがわかります。

◆V字回復、最大の理由は「たっぷりの貯金」

 なぜマクドナルドはここまで急速な回復ができたのでしょうか。

 答えは、「体力」を温存できていたから。

 同社の財務諸表(略して“BS”=Balance Sheet)を分析すると、意外な事実がわかります。

 マクドナルドのBSは、不祥事が起きる前の2013年時点で、現金が600億円あり、自己資本比率が80%を超える状況でした。つまり、ほぼ無借金だったことで、攻めの経営をできたという背景があります。

 新しいことを始めるにはお金がかかります。

 仮にお金がなければ、まずは目先の利益を求めて、メニュー単価を下げてお客様を呼ぶ戦略をとっていた可能性もあるでしょう。

 日払いのバイトをするよりも、まずは初期投資として資格学校に通い、資格手当のついた仕事を選んだほうが中長期的には高い年収を得られると説明すればわかりやすいでしょうか。医学部はお金がかかりますが、卒業後は高い収入が保障されいています。ただし、そのためには学費を払えるだけの貯金が必要となります。

 その点で、マクドナルドには現金600億円がありました。これならば、店舗改装に加え、単価の高い新メニューの開発や仕入れを行うことができます。

 会社が“ヤバい時”には、貯金(=体力)がある会社ほど再建しやすいのです。

◆マクドナルドを“クリニックを開業した一家”にたとえると

 さらに、キャッシュフロー計算書(略して“CS”= Statement of cash flows)を分析すると、同社の意外な事実が分かります。

 CSについて、改めて復習しておきましょう。

 CSとは、簡単にいうと、「会社にどのくらいの現金があるか」ということがわかるデータです。

 キャッシュフロー計算書では、資金の流れを

「営業活動」
「投資活動」
「財務活動」

 の3つにわけて表します。

「営業活動によるキャッシュフローがプラス」というのは、会社の事業で稼げていることを意味します。

 逆にマイナスだと、事業を続けるほど現金が出ていく状況を示しています。

 開業医の家庭でたとえれば、「営業活動によるキャッシュフローがプラス」とは、日々の診療費で入る収入のことを意味します。

 マクドナルドの場合、営業活動によるキャッシュフローは下記のように推移しています。

【マクドナルドの営業活動によるキャッシュフロー】

2015年…約-145億円

2017年…約319億円

 このように、プラスに転換しており、会社の事業で現金を稼げている状態に戻っていることがわかります。

 続いて、「投資活動によるキャッシュフロー」を見てみましょう。

 これは、会社の将来のためにどれだけ投資できているかを示したものです。

 成長している会社の「投資活動によるキャッシュフロー」は通常、マイナスになります。

 先ほどの開業医家庭の例を続ければ、息子に将来医学部に入ってクリニックを継いでもらうために、息子を日能研に通わせる“塾代”といえばわかりやすいでしょうか。

 マクドナルドは2015年、2017年ともに、「投資活動によるキャッシュフロー」はマイナス。

 将来のために、現金を使って投資をしている状態は変わりないということがわかります。しっかり未来のために投資をしているんですね。

 最後に、「財務活動によるキャッシュフロー」を見てみましょう。

 こちらがマイナスだと、負債を減らしてお金を返しているため、現金が潤沢であることを示します。

 開業医ならば、クリニックを建てたときにかかった建設費や設備費を毎月売上で返している状態です。

 一方、こちらがプラスだと、銀行からお金を借りたり、株式を発行して現金を得ている状態を示します。

 マクドナルドの財務活動によるキャッシュフローは以下のように推移しています。

【マクドナルドの財務活動によるキャッシュフロー】

2015年…約196億円

2017年…約-148億円

 2年で「財務活動によるキャッシュフロー」はマイナスに転換しており、財務状態が健全化されたことがわかります。

 開業医の例で言えば、銀行などから借金せずに、日々の診療費でしっかりクリニックを建てたときにかかったお金を返済しているのです。

 つまり、マクドナルドは安定した収入がある開業医であり、病院を継いでもらうために息子も塾に通わせている“代々医師の家系”といえば理解しやすいかもしれません。

 PLとBSを見るだけで、ここまで企業のイメージは変わるもの。

 経営者の資質のみに着目するのでもなく、PLとBSという無機質なグラフだけとにらめっこするのでもなく、その両者を観察することで「気になる企業の未来」はクリアになっていくのです。

【馬渕磨理子】
日本テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi

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