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「楽天」に未来はあるか?もはや通販の会社ではない/馬渕磨理子

2019/7/22 08:30 日刊SPA!

※公式サイトより ※公式サイトより

「あの企業の意外なミライ」を株価と業績から読み解く。滋賀県出身、上京2年目、犬より猫派、好きな言葉は「論より証拠」のフィスコ企業リサーチレポーター・馬渕磨理子です。

 私はこれまで、上場銘柄のアナリストとしてさまざまな企業の業績予測、市況予測を行ってきました。また、自身で株式投資を5年以上に渡って行い、市場に向き合ってきました。本企画では、そんなリサーチャーである私馬渕の視点からみなさまに「あの企業の意外な情報」をお届けます。

◆楽天って、ホントはなんの会社?

 今回取り上げるのは、「楽天市場」「楽天トラベル」でおなじみの楽天<4755>の財務分析です。楽天創業時のビジネスモデルは、「ネットでモノが買えるショッピングモール」を手がける会社でした。

 インターネット上で物品を販売できるサイト「楽天市場」に出店してくれる店舗を集めるために社員は全国を飛び回り、1997年の楽天市場開設時の出店店舗は13店舗。売上高は32万円からのスタートでした。(出典:楽天ブログ 楽天の創業秘話)

 それから22年。

 現在、楽天は「インターネット」、「フィンテック」、「モバイル」の3つのセグメントにまで事業を拡大。2004年にはプロ野球参入を果たしたほか、最近では、国内のフリマアプリ大手の「Fril(フリル)」の買収、携帯キャリア事業への参入など、貪欲なまでに成長を続けている企業です。

 そんな楽天の財務状況はどのようになっているのでしょうか? その本質を、楽天の財務諸表に注目して3分ほどで説明していきます。

◆現在の楽天は“金融の会社”

 同社の損益計算書(略して“PL”= profit and loss statement)を見てみましょう。PLとは、簡単に言えば企業に「出てくるお金」と「入ってくるお金」を示したグラフのこと。

 楽天の事業別の売上高を分解してみます。

【インターネット事業】、【フィンテック事業】、【モバイル事業】の3つあるメイン事業のなかで、インターネット事業(楽天市場に代表される国内EC事業)は54.9%の売上高を占め、次にフィンテック事業が36.9%を占めています。

事実、フィンテック事業の営業利益は…
2017年720億円

2018年790億円(+70億円)

インターネット事業の主力である国内EC事業の営業利益は…

2017年740億円

2018年610億円(−130億円)

 となっており、2018年度は、営業利益でフィンテック事業がEC事業の利益を上回っています。つまり、現在の楽天は“金融の会社”であることが、PL分析をすることで見えてきました。

◆楽天が“金融の会社”であるもう一つの根拠

 それに加えて、財務諸表(略して“BS”=Balance Sheet)を分析すると、同社の意外な事実が分かります。

 BSについて、改めて復習しておきましょう。

 左側に置くのが「資産」。これはビジネスの戦場でどのような軍備を持っているのかを示すものです。現金や商品在庫、工場、ソフトウェアなどがその代表例です。

 右側は「負債」。これは借金や未払金などが含まれます。右下に置かれるのが「純資産」。株主から調達した資産や利益の蓄積が記載されます。

 さらに、資産と負債の中を2つに分類し、BSを「流動資産」「固定資産」と「流動負債」「固定負債」「株主資本」の5つにわけて見るのが基本です。この5つを押さえると、その企業が倒産しないかどうかの“安全性”を見極めることができるだけでなく、PLだけでは見えてこない事実を発見できます。

 では、楽天のBSはどうでしょうか。

<BS分析 楽天は自己資本比率が低い(2018年度連結)>
●資産7兆3450億円
(そのうち現金預金7008億円 のれん3568億円)
●負債6兆5687億円
●純資産7762億円
※決算資料より馬渕作成

 楽天は「IT企業らしくない」BS構造であることに気づきます。

 注目してほしいのが、自己資本比率。他のIT企業に比べて、楽天の自己資本率は低いのが特徴です。たとえば、ヤフー<4689>の自己資本比率は67%(2018年度有価証券報告書より)なのに対し、楽天は長期借入金などの借金が大きくなり、自己資本比率は35%。

 これは、金融事業が大きくなってきていることが影響しています。事実、銀行は社債(借金)が固定負債の部分に計上され、自己資本比率が低い傾向にあります。

 下記のように、ネット銀行はどこも自己資本率が低いのです。

【参考:代表的なネット銀行の自己資本比率】

セブン銀行<8410>は18%(2019年度有価証券報告書より)
新生銀行<8303>は10%(2018年度有価証券報告書より)

 営業利益だけでなく、財務諸表の面からも楽天は金融企業(フィンテック企業)になりつつあるのです。

◆この数年、楽天で増えてる「のれん」ってなんだ?

 最後に、そんな楽天のここ数年の株価事情をお伝えします。2015年~2016年の楽天は、積極的に企業買収を進めてきました。

 楽天のような大手企業が会社を買う理由はさまざまですが、一般的には、成長可能性があるにもかかわらず、自分たちで新規参入するのが難しいケースや、自社にはない強み(海外で展開、専門性ある商品)を持っているときに、買収に踏み切るケースが多いようです。

 他には、ライバル企業を仲間にしたいときに買収を進めるというケースもあります。

 いわば、大手企業にとっての買収は「一気に攻め込むためのタイムマシーン」。各駅停車でも行けるけど、新幹線を使えばお金はかかるけど早く目的地に着きますよね。

 しかし、その企業買収は株主にとってリスクを背中合わせと受け取られ、株価も売られる展開が続きました。

 事実、買収を積極的に進めていた2016年度四半期目の楽天の決算は、純利益が55億円と赤字に転落しています。

 その時に財務諸表上に計上されるものが「のれん」です。

「のれん」って、なんのことかわかりますか?

 簡単に言えば、企業の買収金額と純資産評価額の差額のこと。これは、財務諸表上では資産の位置に入ります。

「のれん」は、企業を買収したときに発生します。純資産200億円の会社を500億円で買収すると、差額の300億円が「のれん」として、貸借対照表に計上されます。

「のれん」は、買収対象会社のブランド価値です。つまり、300億円分だけ、買収対象会社にはブランド価値があるということになります。

 2013年から2018年度までの楽天の財務諸表から「のれん」の推移を見てみます。

 楽天有価証券報告書より作成。のれんは、企業買収時の取得原価から、減損損失累計額を除いて測定

【楽天ののれんの推移】

2013年1078億円
2014年1422億円
2015年3636億円
2016年3694億円
2017年3584億円
2018年3568億円

 のれんの額が年々増加しているのがひと目でわかりますよね。

 この「のれん」、買収した事業がうまくいっていない場合は、PLに減損処理(減損処理とは、M&Aの効果が想定よりも得られない時に行います)を計上しなければならないのです。

 しかし、その後の楽天の業績は順調に回復しています。

 2017年度一期目には純利益を黒字に戻し、減損損失計上の額も2017年時点では、ほぼなくなったことから利益を押し上げています。「のれん」の額は年々増加していますが、減損損失は抑えられているのです。

 ここから先は、買収事業と、既存の事業とのシナジーが強化されことによる快進撃が期待されます。具体的に言えば、好調な楽天証券や楽天銀行と、買収したフリマアプリ「フリル」とのお金の連携はすぐに思い浮かぶでしょう。

 PLとBSを見るだけで、ここまで企業のイメージは変わるもの。

 経営者の資質のみに着目するのでもなく、PLとBSという無機質なグラフだけとにらめっこするのでもなく、その両者を観察することで「気になる企業の未来」はクリアになっていくのです。

【馬渕磨理子】
日本テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi

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