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【涙活】3分で泣ける実話ショートストーリー「さよならゴハン」

2019/7/20 20:00 DOKUJO[独女]

ーー#20年前 #彼ごはん #料理上手 (DOKUJO文庫編集部)

◆3分で泣ける実話ショートストーリー「さよならゴハン」

その連載記事に惹かれたのは、タイトルからだ。

「彼ごはん」

全くもってズバリの、彼氏に作る料理レシピだ。

男女共同参画が大前提の常識となった現在、こういうタイトルにカチンと来る人もいるはずだろう。

でも、私は週一で載るこの記事を楽しみにしていて、切り抜いてスクラップにまでした。

残念ながら私は、現在恋人はおらず、実家で六人家族の炊事を担当している。

「彼ごはん」は家族のために作っても良さそうなレシピではあるが、

作りたくないワケが私にはあった。

私に初めて、正真正銘の恋人ができたのはもう二十年も前。

生来の病の為に発育が遅く、

同級生の背中を追っていくだけで精一杯の子ども時代を過ごした。

また思春期にはいじわるな言葉を浴びたことは、今も記憶に残る。

自分は早く死ぬのだからとフツウの夢さえ抱かずにいた高校・短大時代を経て、

その「春」を迎えた時の私の震える程の嬉しさを想像してもらえたらと思う。

「君は、何もねだったりしないんだな」

と、物足りないような顔をした彼に言われたことがあった。

が、それは遠慮でもなく、私は本当に満ち足りていたのだ。

彼と同じ時間を共に過ごせるだけで。

彼が「お代わりっ」と私が作ったゴハンを平らげてくれること。

それ以上に望むことなど、なんにもなかった。

でも、二年後の定期健診で私は病の進行を告げられた。

丁度、彼が他県へ転勤になった事と重なり、私はある決意をして彼の下宿先を訪ねた。

「ここでの生活に落ち着いたら結婚しよう」

彼の言葉に私は絶句した。

息を詰めてうつむく私を、きっと彼は驚きと嬉しさで言葉が出ないと思ったのだろう。

優しく抱きしめ、私の名を幾度も呼んだ。

翌日、彼が帰宅するまでに、私は彼の好物を作り続けた。

ゼロニンジンカレー、野菜コロッケ、ちくわのニンジン揚げ、厚揚げ煮。

そして、キッチンを片付け、タッパーに料理を詰め、

テーブルへ、まるで行楽弁当のように包み置いてその上へ手紙をのせた。

綿々と決意のいきさつを綴り、最後のおねだりと、こう綴ったことを覚えている。

「ありったけの愛を込めて作った、私の最後のゴハンを食べて、あなたは新しく生きてください」

二十年も経った今でも苦しくなる。

実家で母や姉一家の為に台所に立つ度に、彼のため小さなキッチンに立った時の事を思い出し、哀しくもキュンとする。

「彼ごはん」には、あの人の好みそうな物がいっぱいある。

あれから、彼ごはんは一度も作っていない。

でも、いつか、まぐれと奇跡が重なって、「彼ごはん」を作る日が訪れたなら。

そんな望みが微塵も無くなるまでは、愚かでも命在る支えとさせて欲しい。

あの人は今、何を食べているだろう。

「アイツの方が美味かったな」と思ってたら、なんて。

作:鈴木みのり(協力:あのころの味エッセイ大賞)

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