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薬物取引ドキュメンタリー「DOPE」に戦慄。観なきゃいけない配信を徹底チェック!新連載「配信中毒」

2019/7/19 09:45 エキレビ!

エキレビ! エキレビ!

どうもみなさまこんにちは。細々とライターなどやっております、しげるでございます。ぬるっと始まりました配信中毒、ここではネットフリックスやアマゾンプライムビデオなど、各種配信サービスにて見られるドキュメンタリーを中心に、ちょっと変わった見どころなんかを紹介できればと思っております。みなさま何卒よろしくどうぞ。

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ギャングにヤク中、捜査官に賞金稼ぎ……全員集合の薬物取引ドキュメンタリー『DOPE』


この連載のタイトルが「配信中毒」、中毒といえば麻薬、麻薬といえば……というわけで、第一回目となる今回取り上げたいのが、ネットフリックスにて配信中の『DOPE』である。タイトルはドープと読み、「麻薬」「薬物」という名詞や「麻薬を使う」という動詞としての意味、そこから転じて「ヤバい」「イケてる」みたいな形容詞としても使われる単語だ。スポーツなどの「ドーピング」もDopeにingがついた言い回しである。

この番組のコンセプトはいたって簡単。特定の都市の麻薬取引に関して、売ってる側や麻薬を使う側と取り締まる側の両方にカメラを入れてインタビューを交えつつ取材、それをドキュメンタリーとして配信するというものである。なので当然、「売ってる側」として登場するのはバキバキに強面のギャングやドラッグディーラーや運び屋やヤク中。取り締まる側も警察や保安官事務所の職員から、潜入捜査官に賞金稼ぎ(アメリカにはマジで今でも賞金稼ぎがいるのだ)に到るまでよりどりみどり。毎回冒頭に「ヤラセじゃないぞ!」と字幕が出る。どうやってそんなところにカメラを入れたのか、劇中では全然説明されない。

この『DOPE』、なかなかの人気プログラムのようで、すでにネットフリックスでの配信は3シーズンを迎えた。毎回とんでもないギャングたちがドカドカ登場してくる本作、思えばシーズン1の第1話「アメリカ人の好物」からいきなりフルスロットルだった。

「アメリカ人の好物」は、カリフォルニア州オークランドでのコカイン取引を追った内容。キャンピングカーでドラッグを配送し末端のディーラーに卸す「エル・キャピタン」というギャングを軸に、取引にカメラが張り付く。凄まじいのは、キャピタンの顧客で末端のディーラーである「ビッグ・エディ」の家にカメラが入るシーンだ。

エディは「俺は昔気質のディーラーだ」「コカインに混ぜ物をしようとは思わない。そんなことをしたら客が離れる」「ウチは品質重視なんだ」と、まるで老舗の和菓子屋のようなことを言い出す。まあ、やってることはコカインの塊を崩して数グラムずつのパケにまとめる作業なんだけど……。

そんな品質重視のエディを支える人物として出てくるのが、金属タワシみたいな頭をしたヨレヨレの黒人の爺さんである。爺さんは「俺はこれを1974年からやってんのよ」と自慢しつつ、コカインを溶かして液状にしたものを注射器で吸引、それをいきなり腕にブッ刺してガンギマリにキマってしまう! この爺さんは、入荷したコカインを試すテスターなのだ。

映画などで見たことがある人もいると思うが、コカインは普通パイプや丸めた紙幣などを使って粉末状の薬を鼻から吸う。いきなり注射すればすぐに効き目が現れるが、気泡一個が注射器に入ったらそのまま死ぬこともある。そんなめちゃくちゃ危ない方法でコカインをテイスティングした挙句、「こいつはいい! 一晩中でもやってられるよ!」とバッキバキにキマった目つきで断言する爺さん。もちろんモザイクなしの顔出しでそのまま画面に映っている。なんというか、コカインソムリエがこの人の天職なんだろうな……。しかしこれ、そのまんま映していいのか。他人事ながら心配になる。

さらにこの「アメリカ人の好物」では、同じエル・キャピタンからコカインを買っているディーラーとして「アンブロージア」という人物も現れる。このアンブロージア、顔を隠しているから細かいところまではよくわからないものの、デカい黒人のおばちゃんである。「男と同じくらい素早く動けるからなんも怖くねえ」「母親も売人で、兄貴が20年の刑を食らったから自分でやってる」と語る彼女は、コカインの密売に加えて売春の元締めまでやっている。

このアンブロージアさんも相当強烈だ。頭を短く刈り込み、当然拳銃も携帯。自分の下で飼っている売春婦と半ば家族的な繋がりを持ち、同時にその売春婦を抱きまくっているという猛者である。「私はベッドの上では獣だ」「見たら腰を抜かすよ」「30センチのディルドを使うんだ」とソファーにふんぞりかえって力説するアンブロージアさん。30センチ……嘘だろおい……! さすがアメリカ、しみじみと恐ろしい国である。しかし30センチって、そんなの本当に入るんですかね……? さすがの『DOPE』も、そこまでは見せてくれなかった。

過当競争に新製品開発、意外に世知辛い麻薬取引


というわけで毎回売人と警察が繰り広げる地獄のいたちごっこを見せてくれる『DOPE』だが、現状最新シーズンであるシーズン3の第4話「映画とは違う世界」はなかなか世知辛い。今までアメリカ国内がメインだったが、この回ではオランダのアムステルダムに取材班が飛ぶ。そこで出てくるのはミスター・ピンクと名乗るストリートディーラー。1984年からドラッグを売っているという、この道30年以上のベテランである。

「最近は客より売人のが多い」「稼ごうと思って長時間路上にいると、すぐ警察にしょっぴかれる」と愚痴るミスター・ピンク。アムステルダムには世界中からじゃんじゃかドラッグが集まるため、そこらじゅう売人だらけになってしまった。だから普通に路上でコカインなんか売っていても、価格競争に飲み込まれて全然儲からなくなっちゃったのである。

この状況でも商売をするため、ミスター・ピンクはオリジナルの主力商品をせっせと作る。用意するのは純度の高いコカインと、度数が80%のアルコール。キッチンのコンロでおたまに盛ったコカインを溶かし、鏡の上で練ってからアルコールを混ぜて火をつけて化学反応を起こすのである。出来上がったドラッグはピンク色の粉末になるから、名付けて「オリジナル・ピンク」だ。「これを味わったら他の奴からはコカインを買おうと思わない!」と話すミスター・ピンク。サングラスとバンダナで顔を隠していても、なんとなくドヤ顔なのが伝わってくる。

しかし、ドラッグの密売というのは、危険だけど楽してドカドカ儲かるから嬉しい……という商売ではなかったのか。仕入れにも金がかかるし、そこまで無理して仕入れても、今度はディーラーの数が増えすぎてダンピングするとか混ぜ物を入れたりしないと商売にならない。顧客を囲い込もうと思ったら、特製の商品を手作りで用意しないといけない。ネタが麻薬だからといって、市場原理から逃れられるわけではないのだ。思ったより世知辛いというか、それならもう普通の堅い勤めと変わらなくね……という疑問が湧いてくる。

薬物やってぶっ飛ぶのも、それが原因で逮捕されるのも死ぬのも勝手。売るのも勝手だけど、うまく儲けるためには知恵も努力も度胸も必要。もちろん、麻薬に関わらずにおとなしく生活するのだって自由だ。『DOPE』があぶり出すのは、そんな究極の個人主義に貫かれた麻薬取引の世界である。おっかないけど、めちゃくちゃ頑張れば儲かる(かもしれない)、だけど基本的にはどこまでいっても経済の原理から逃れられない……。そんならおれは怖い思いをしないで済むほうがいいな……と、しみじみ思うのだった。


(文と作図/しげる タイトルデザイン/まつもとりえこ)

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