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吉祥寺のランドスケープに迫る ―ハビタ・ランドスケープ 特別編(第1回)

2019/7/12 18:25 ソトコトオンライン

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井の頭公園や善福寺公園の緑に囲まれ、若者から家族連れ、お年寄りまで世代を交えにぎわう吉祥寺。住みたい街として常に人気を維持する理由をランドスケープから見つめる。

武蔵野の原風景・善福寺公園

 ゴールデンウィークの吉祥寺。井の頭公園の近くに住む私は、自転車に乗り、朝の井の頭池を渡った。爽やかな新緑が水面に揺れる。フォトグラファーの渋谷さんと吉祥寺駅で合流した。今日は自転車に乗って吉祥寺の街を回ってみたい。吉祥寺は自転車で移動するのが、ちょうどよい街なのだ。

 まず、北側の善福寺公園に向かう。武蔵野市の市境を越え、杉並区に入ったところに東京女子大学がある。校裏手には樹林が鬱蒼としており、木々は住宅地内の巨木としてにじみ出し、お隣の善福寺公園の樹林にまで繋がっていく。

 もともとは一体の広大な樹林であったのだが、分離された敷地を跨ぎ、かじりかけのピザのように樹林はまだ残っている。

 周りの住宅地から少し下った窪地にある善福寺公園には、ふたつの大きな池がある。池の周りにはゆったりとラウンドした石の遊歩道がつづき、桜の老樹が枝を垂れ、ロープを低く通しただけの柵によって水面と分けられている。犬を連れて散歩する人や、ストレッチをしているジャージ姿のおじいさんが「おはようございます」と声を掛け合い、ご近所同士のゆるい空気感が漂っている。

 子どもにしーっと言いながらお母さんが池の島を凝視している。島はジャングルのようにブッシュ化しており、枯れ枝に止まった青いダイサギが水面を凝視している。ポチャンと音がして、ダイサギは小魚を咥え、子どもは明るい笑い声を上げた。

 下の池の終わりに堰がある。ここから善福寺川が始まり、途中で神田川と合流して、東京湾に下る。堰の手前の水面には蓮の浮葉が広がっており、向こうには葦原が柔らかく揺れている。奥の岸にはシダレヤナギと、大きく育った三角樹形のメタセコイアが覆っている。人工物は何も見えない。東京23区内にいるとはどうも思えない。

 私は大阪育ちなのだが、東京に来て初めて善福寺公園のこの地に立った時、武蔵野台地の「原野」性を感じた。関西の平野部は、二千年ほど人が密集して土地を開発し尽くした感があるのだが、関東の野は江戸開府から400年ぐらいしか人が使っておらず、野の風情がまだ残っていると思った。のどやかさが非常に心地よく、近所に住んでいた私は暇があるとこの場所に通い、蓮の花が開くのや、トンボの群れが赤く染まるのを、近所の散歩人と共に眺めていたものだ。善福寺公園は、ランドスケープが、棲む人びと、生きものと共にあり続けることの素晴らしさを教えてくれた場所だった。

鯉のぼり

 善福寺の上池を跨いで、色とりどりの鯉のぼりが泳いでいる。鯉のぼりの下端には「遅野井」という湧水があり、岩から水が噴き出しているが、現在では地下からポンプアップしたものだ。善福寺池は標高およそ55mにあるのだが、武蔵野台地の南北にわたる55mライン上に、石神井公園、善福寺公園、井の頭公園、深大寺があり、それぞれ湧水地となっている。関東ローム層に覆われた武蔵野台地に浸透した地下水は、ローム層の下の「東京礫層」という帯水層を通ってゆっくりと移動する。緩やかな武蔵野台地の扇状地を下ってきた地下水は、高低差7mほどの崖につきあたり、崖下で露出して湧き出る。このガクンと落ちる地形の変化点が武蔵野台地の標高55mラインにあるのだ。

 鯉のぼりの起源とは、武家が、メスの鯉を餌にオスの龍を呼び込み、龍の力を得ることにあったと聞く。善福寺池に架けられた鯉のぼりは、武蔵野台地の気脈を読み、風水の通り道に誰かがセッティングした壮大なランドアートのように思えた。

(第2回に続く)

★『ハビタ・ランドスケープ』の刊行を記念し、著者によるトークイベントの開催が決定!

20190802イベント告知

日本37箇所の地域を歩き、自然と人為の相互作用の中で生まれてきた風景のなかで、人々はどのようにその地域を棲みこなしてきたかを紡ぎ出した書籍『ハビタ ・ランドスケープ』。

日常にある風景の断片に潜む、思いもよらぬ物語と出会う瞬間を描いたこの出版を記念して、数々のエリアリノベーションや公共空間をデザインし、都市の理想的な風景を考察・実現化してきた建築家の馬場正尊さんをお招きして建築、都市計画とハビタ ・ランドスケープの関係を探ってみたいと思います。都市課題解決のプラットフォームとして支援を行う京橋のシティラボ東京で、皆さまのご参加をお待ちしております。
詳細・お申し込みはこちら:http://www.kirakusha.com/news/n30588.html

 文 滝澤恭平
写真 渋谷健太郎

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