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発達障害の人を救う、誠実で実践的な体験談/鴻上尚史

2019/6/30 08:50 日刊SPA!

※写真はイメージです ※写真はイメージです

― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

◆発達障害の人を救う、誠実で実践的な一冊

『ほがらか人生相談』という連載を始めて、それがネットに転載されて注目を集め、毎月、150人ぐらいからいろんな相談が送られてきます。

 その中で、「私は発達障害です」という相談が、一定数、あります。

 もちろん、僕は専門家ではないので、医学的に何かを言えるわけではありません。

 なのに、僕に「自分は発達障害である」と思っている人が大勢、相談のメールを送ってくるということは、それぞれの人がかなり追い込まれて、苦しんでいるのだろうなあと思います。

 最近読んだ『発達障害グレーゾーン』(姫野桂/扶桑社新書)は、今まで、僕が読んできた「発達障害」に関する本の中で、じつに実践的で誠実な本でした。

 本書によれば、発達障害は「生まれつきの脳の特性で、できることとできないことの能力に差が生じ、日常生活や仕事に困難をきたす障害」です。

 大きく分けると「注意欠如・多動性障害(ADHD)」、「自閉スペクトラム症(ASD)」、「学習障害(LD)」の3つの種類があります。

 それぞれの主な症状は、「ADHD|不注意が多かったり、多動・衝動性が強い」「ASD|コミュニケーション方法が独特だったり、特定分野へのこだわりが強い」「LD|知的発達に遅れがないにもかかわらず、読み書きや計算が困難」です。

 ただし「この3つのうち『これだけが当てはまる』という人はほとんどおらず、実際には障害の程度や出方は人それぞれであり、ADHDとASDを併存、または全種類を併せ持っている場合もある。だからこそ、発達障害は『グラデーション状』だといわれている」のです。

 筆者は、こう書きます。

「私も(発達障害の)当事者の一人として、もし、これを読んでいる人のなかに発達障害の方がいたとしても、『発達障害だからといって極度に落ち込む必要はない』と言いたい。発達障害は能力の偏りがあるという事実のみで、それ以上でもそれ以下でもないと、個人的には思っているからだ」

 発達障害に苦しんでいる人は、勇気づけられる言葉だと思います。

◆生き抜くためのノウハウがある

 大学までは、試験の成績もよく、少し変わった性格だと思われても、ちゃんとやってきたのに、「社会に出たとたん、マルチタスクがこなせなかったりケアレスミスが多かったり、人間関係でトラブルを起こしやすかったりして、発達障害の特性が表面化する」ことがあります。

 問題は、発達障害の結果、失敗を重ねて自信をなくして卑屈になったり、激しいストレスからさまざまな病気になったりして、「発達障害そのものより二次障害のほうがしんどい」という現状になってしまうことが多いことです。

 対策として、筆者は、さまざまな人に会い、さまざまな体験を知り、生き抜くためのたくさんのノウハウを紹介しています。

『15歳のコーヒー屋さん 発達障害のぼくができることから ぼくにしかできないことへ』(岩野響/KADOKAWA)という本を読んで、「発達障害を抱えてドロップアウトした人でも、特性を活かせば自分らしく生きられるのだと希望を持てた」という発達障害の男性の言葉を紹介しています。

 彼は、都内の大学を卒業後、新卒で入った会社で人間関係に悩み1カ月しか続きませんでした。

 僕に「私は発達障害です」と相談を送ってくる人は、孤立している人が多いです。

 著者の姫野さんは、発達障害のグレーゾーンであることに苦しむ人達が集まり、話し合う茶話会「ぐれ会!」に参加して、その様子を紹介しています。

 あきらかに発達障害と思われるマンガやアニメ、映画の主人公の名前をみんなで話す、という企画は、なるほどと思いました。

 また、発達障害傾向のある人達に対して就職に向けた支援を行う福祉サービスも紹介しています。

 この本を読んで「自分は発達障害だったのか」と気付く人もいると思います。根本の原因を理解しないで、二次障害に苦しんでいる人も多いのです。

 この本で、一人でも多くの人が楽になったり、救われたりしたらいいなと思います。

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