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「大麻を拾った」と言い張る被告と検察官の探り合い<薬物裁判556日傍聴記>

2019/6/22 08:50 日刊SPA!

イラスト/西舘亜矢子 イラスト/西舘亜矢子

薬物事案の裁判の傍聴に556日間通い、法廷劇の全文を書き起こしたという斉藤総一さんの手記。今回の被告萩原敦は大麻取締法違反で逮捕されたデザイン会社社員。両手の甲にタトゥーを彫った男は、職務質問中に「拾った(ことすら忘れていたという)大麻」の所持が発覚。その場で咄嗟に飲み込もうとするも、結局吐いてしまい逮捕に至った。その大麻にはコカインが付着していた。法廷での被告の印象は「とにかく消沈していた」とのことだが、誘導尋問的な検察官の質問に対する答えを見ると、被告の低いテンションからはしたたかな一面も垣間見える。

   ***

◆「大麻は拾った」はっきりとしないやり取りが続く

 まず検察官による起訴状の朗読から。

検察官「公訴事実。被告人はみだりに平成28年6月6日。神奈川県横浜市中区長者町11-7-22「横浜鑑定団 長者町店」駐車場内において、大麻成分であるテトラヒドラカンナビノールおよび麻薬であるコカインの付着する植物片、1.157gを大麻と認識して所持したものである。罪名および罰条、大麻取締法違反、同法第24条の2第1項。以上」

 のちに明らかになりますが、これはコカインを付着させた大麻を巻きタバコのように巻いたものです。今度は検察官による証拠調べを見ましょう。

検察官「検察官が証拠によって証明しようとする事実は次のとおりです。第1に被告人の身上経歴などです。被告人は静岡県で出生し、高校中退後、現在はデザイン会社に勤務しており、住居地で単身生活していました。被告人に前科前歴はありません。

 第2に犯行状況等ですが、被告人は、アメリカのサンフランシスコに行った際、友人に誘われて大麻を吸うようになりました。被告人は巻紙で大麻を巻いて、これに火をつけて吸引する方法で大麻を使用していました。被告人は犯行前日、自宅のバルコニーで大麻を吸引しました。犯行状況は公訴事実記載のとおりであります。

 第3として、その他情状など。以上の事実を立証するため、証拠など、関係カード記載の各証拠を請求します。以上です」

 検察官は「職務質問により大麻所持が発覚した前日、被告は自宅バルコニーでも大麻を喫煙していた」と説明しますが、この証拠調べから“物言い”がつきます。

検察官「信用性を争う部分については、何も聞かれないということでよろしいですか?」
弁護人「ちょっとこちらについても、裁判官、質問してもよろしいですか?」
裁判官「はい」
弁護人「一応確認しておくんですけど、乙2号証、大麻を使用したと記載があるっていうことなんですけど、使ったか、使ってないかっていうと、あなたはどうですか?」
被告人「使っていないです」
弁護人「使っていない。ということですね。で、使ってないというかたちの、別の調書を警察のほうで取ったことはありますか?」
被告人「あります」
弁護人「ただ今回出て来ている証拠は、大麻を使ったことがあるという証拠でよろしいですか?」
被告人「はい」
弁護人「以上です」

 どこか奥歯にものが挟まったようなやり取りです。被告は過去に大麻を吸引したという証拠があることは認めるものの、この法廷では大麻の吸引歴があるとは一度も認めていません。

◆どのようにして大麻を入手したのか?

 なぜ、どのようにして被告は大麻を入手し、この場にいるのでしょうか。

検察官「この日、あなたが持っていた大麻っていうのは、どういうふうにして手に入れたものですか??」
被告人「神南町に飲みに行った時に拾ったものです」
検察官「大麻が、落ちていたっていうことですか?」
被告人「そうです。あの、ビニールの袋に入っていて、落ちていたんで、拾っちゃったんです」
検察官「それは今日見せたような、その葉っぱがむき出しの状態で入っていましたか? それとも別の状態で入っていましたか?」
被告人「巻かれている状態で入っていました。そのことを調書で言いました」
検察官「あなたが見つけた時に、ビニールに入っていたという大麻は、そうすると、あなたの話だと、大麻の、その大麻がむき出しの状態で入っていたわけじゃなくて、タバコのような状態で巻かれていたっていうことですか?」
被告人「そうです」
検察官「あなたそれを見た時に、何だと思ったんですか?」
被告人「最初なんだかわからなかったんで、手に取って、匂いをかいで、それでサンフランシスコにいた時に嗅いだことあるヤツだったんで、大麻かなあと思った」
検察官「じゃあそうすると、拾って、中の匂いを嗅いだ時に、以前自分が嗅いだことのある大麻の匂いと似ていたから大麻だろうと思った。そういうことですか?」

(中略)

検察官「それで、犯行当日のことを聞くんですけど、その日、職務質問を受けた時に、車を見せてほしいと言った時のことなんですけど、車を当初、見せたくないっていうふうに拒んだんですよね?」
被告人「そうですね。その思い出したんで。あるな車に。と思って」
検察官「あなたとしては大麻が入っているのを思い出したんで、警察に見られたらマズいと思った?」
被告人「はい。そうです」
検察官「そのあと、あなた自身、大麻を口の中に入れて、っていうような行動をしていますよね? 反省文にも書いてますけど」
被告人「はい」

(中略)

検察官「サンフランシスコに行った時に、嗅いだことのある匂いだと、先程言っていましたよね? 見つけた時に匂いを嗅いだっていう」
被告人「はい」
検察官「その海外に行った時に、あなた自身に吸った経験はあるんですか?」
被告人「そこは答えたくないです」

◆発言に不明点が多いが、「嘘である」証明はならず

 過去の海外旅行時に、大麻がどういうものかを認識した。とはいえ、ここでも「吸った」とは言いません。続きを見ましょう。

検察官「先程、大麻を最近吸っているか吸っていないか? という先生(=弁護人)の質問に対して吸っていないと答えているんですけど、他方で、あなたが取り調べの中で、この日ね、捕まった当日むしゃくしゃしていて、自分で使おうと思いましたっていう供述調書……結構勾留期間の後ろのほうになって作成されている供述調書の中に、そういう内容が出てくるんですけど?」
被告人「はい。むしゃくしゃして吸おうと思っていました」
検察官「それは、この逮捕された日に、使おうと思っていたということですか?」
被告人「まあ、うーん、いつかとか、決めていたわけではないです。何かまあむしゃくしゃしていたんで、そういう時に吸おうと思っていました」
検察官「じゃあそうすると、いつかっていうのはおいておいて、仮にあなたが生活してむしゃくしゃした時に、吸おうと思って持っていたという意味ですかね?」
被告人「はい」
検察官「で、今回あなたの車の中から、ジョイントだったり……」
被告人「ジョイント???」
検察官「ああっ、まあ巻紙。だったり、出てきていると思うんですけど、それはあなたとしては、大麻を使うようなものではない。ということでいいんですかね?」
被告人「そうです。巻きたばこを吸うんで」
検察官「タバコを巻くために持っていた。そういうことですかね?」
被告人「そうです」

 被告の発言には不透明な点が少なくありません――大麻は拾ったもの。なぜコカインが付着していたのか? むしゃくしゃした時に吸おうと思っていたというが、それがいつかはわからない。大麻がどういうものが知っているが吸ったことはない。あるいは答えたくない――。かといってまた、その不透明さが「(被告の発言が)嘘」であると証明することにもならないわけです。ということで、判決は以下です。

 主文。
 被告人を懲役6ヶ月に処する。この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予。

 これまで紹介した法廷でも触れましたが、初犯での大麻の不法所持は「懲役6か月、執行猶予3年」が一般的な判決。今回の法廷も、この例に漏れなかったようです。

   ***

 斉藤さんによれば、被告の沈んだ表情が印象的な法廷だったという。だが、この法廷でのやり取りを見るに、その消沈の様子が演技とは言わないまでも、なんとなく傷口を最低限に抑えよう(現実の生活にできる限り早く戻ろう)という気概のようなものが感じられる。

「ジョイントだったり……」と検察官が使った大麻を指すスラングに対し、「ジョイント??」と応じた被告は、この時どんなことを思っていたのか。大麻を吸わない人間が、なぜその言葉を知っているのか。そのツッコミを用意していたであろう検察官は、肩透かしを食らったのではないか。

<取材・文/斉藤総一 構成/山田文大 イラスト/西舘亜矢子>

【斉藤総一】
自然食品の営業マン。妻と子と暮らす、ごく普通の36歳。温泉めぐりの趣味が高じて、アイスランドに行くほど凝り性の一面を持つ。ある日、寝耳に水のガサ入れを受けてから一念発起し、営業を言い訳に全国津々浦々の裁判所に薬物事案の裁判に計556日通いつめ、法廷劇の模様全文を書き残す

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