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育休明けに転勤を命じられ退職…企業の対応はパタハラではないのか?弁護士に聞いてみた

2019/6/21 09:03 シェアしたくなる法律相談所

What to do. Sad cheerless beaded man sitting together with his girlfriend and looking troubled while thinking about his problems What to do. Sad cheerless beaded man sitting together with his girlfriend and looking troubled while thinking about his problems

先日、ある企業に勤める男性の妻が、Twitter上で「パタハラ」を明かしたことが話題になりました。

育休から復帰したところ、その2日後に関西への異動を告げられたそうで、4月に新居を構えたばかりの夫妻は困り果ててしまったそう。

結局退職せざる得なくなった夫

準備のための延期や、有給休暇の申請を行いましたが、全て却下されたそうで、5月末で退職せざるをえなくなったとのこと。

この話題が拡散され、企業に批判が集まりますが、当該企業は弁護士などを交えて調査した結果、「当社対応に問題なし」という結論を発表し、再炎上しています。

「パパの育休」が奨励されつつある時代に発生したこの事件。本当に企業の対応に問題はないのでしょうか?

琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に見解を伺いました。

 

法的に問題はないのか?

川浪弁護士:「結論から言うと、ケースバイケースであり、法的に許されない場合もあるものと考えます。

まず、異動辞令(以下「転勤命令」といいます。)自体は労働契約書や就業規則にその根拠が明記され、労働契約が転勤のあることを前提としている場合には、会社側には転勤を命じる権利があります。

他方で、労働契約で勤務地が限定されている場合には、会社は、その勤務地以外の場所に転勤を命じることはできません。

しかし、労働契約上、転勤することが前提となっていても、会社の転勤命令が権利の濫用にあたるとして、例外的に無効になる場合があります。

すなわち、①業務上の必要性が存在しない場合または、②業務上の必要性が存在する場合であっても、「他の不当な動機・目的」をもってなされたとき、もしくは、労働者に対し「通常甘受すべき程度を著しく越える不利益」を負わせるものであるとき等、特段の事情があるときには転勤を命じることはできません。

今回のケースにおいて、業務上の必要性があったか否かは、会社の主張が明らかにならない限り判断できませんが、裁判例上、業務上の必要性については認定されやすい傾向にあるといえます。

この点について、最高裁判所は「(業務上の必要性を)当該転勤先への異動が余人をもっては容易に変え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは業務上の必要性の存在を肯定すべき」と判示し、会社の裁量的判断を広く認めています。

次に、仮に業務上の必要性があったとしても、育休から復帰してわずか2日後に転勤を命じる行為については、そのタイミングからして、一見「会社に不当な動機や目的がある(育休を取得したから転勤を命じられた)」と労働者が不審に思っても仕方ないのかもしれません。しかし、「育休から復帰して2日後」という事情のみで、直ちに「会社に不当な動機や目的がある」と判断することはできません。

最後に、転勤命令によって労働者が被る不利益については、育児・介護休業法26条が

「事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。」

と規定し、就業場所の変更を伴う配置転換については、会社側に子の養育状況への配慮を要求しているという趣旨を考慮して検討しなければなりません。

本件では、労働者に対して、育児の状況について十分に考慮し、転勤先について配慮する必要があるといえます。

育児休暇から復帰したばかりの労働者の具体的な育児状況を考慮せず、居住地から遠く離れた地域へ転勤を命じた場合には、「通常甘受すべき程度を著しく越える不利益」を負わせるものと判断される可能性があります。

ただし、「通常甘受すべき程度を著しく越える不利益」は、簡単には認められませんので、その可能性は低いといえます。(もちろん、その他の事情を考慮する必要があるため、断定的な判断はできません)。

有給休暇や時期の変更の却下は問題では?

川浪弁護士:「有給を取得する権利は、労働基準法所定の要件を満たすことによって労働者に当然に発生する権利であり、労働者は、有給を取得したい時季を特定して自由に取得することができます。

これに対して、会社は、労働者が請求した時季に有給取得を認めることが事業の正常な運営を妨げる場合には、有給取得の時季を他の時季に変更することができます。

もっとも、別の時季に労働者が有給を取得できる可能性がない場合には、会社が時季変更をすることはできません。

今回のケースでは、労働者が有給取得を申請した時期が退職直前であることから、労働者には別の時季に有給を取得できる可能性がないと思われますので、「事業の正常な運営を妨げる場合」であっても、会社が有給取得時期を変更することは認められない(会社が労働者の有給取得申請を却下することはできない)と考えます。

続いて、転勤に猶予を設けない措置についてですが、転勤に猶予を設けるか否かは基本的には会社の裁量事項ですので、一律に違法とはいえません。

しかし、転勤に猶予を設けない措置は、転勤命令自体の有効性に影響を与える可能性があります。すなわち、

①転勤に猶予を設けないことで、労働者に「転勤に応じたくない」との気持ちを生じさせ、間接的に退職するよう仕向ける意図が会社にあったとすれば、会社に不当な動機・目的があるといえますし、

②転勤に猶予を設けないことで、急な転居による思わぬ出費が発生したり、育児に多大な影響が及ぶなどした場合には、転勤によって労働者の被る不利益が大きくなります。

これら①、②のような場合、転勤命令自体が権利濫用にあたるとして無効と判断される可能性があるでしょう」

慎重に対応するべき

「育休を取得したから転勤を命じられた。」等と誤解するような時期に転勤を命じることについては、慎重に対応すべきと思います。

業務上の必要があり、その時期に転勤を命じざるを得ないとしても、労働者に理由を十分に説明する機会を設ける等して、労働者の不信感を払拭することが望ましいでしょう。

「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」が叫ばれる今日においては、会社は、これまで以上に、労働者の生活に対する配慮を強く求められるのではないかと思います。

法律違反であるか否かはケース・バイ・ケースとのことですが、労働者への配慮に欠けた振る舞いであることは間違いありません。

父親の育休が取りやすい社会にするためにも、この問題をしっかり議論してもらいたいものです。

 

*取材協力弁護士: 川浪芳聖(琥珀法律事務所。些細なことでも気兼ねなく相談できる法律事務所、相談しやすい弁護士を目指しています。)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

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