芦田愛菜インタビュー「自分の存在意義って?」【海獣の子供】

2019/6/16 12:00 ウレぴあ総研

撮影:熊谷 仁男 撮影:熊谷 仁男

映画のヒロインと同い年の芦田愛菜は何を感じたのか?

自分の気持ちを言葉にするのが苦手な中学生の琉花は、夏休み初日に部活でチームメイトと問題を起こしてしまう。それによって、以前から母親とも距離を置いていた彼女は、長い夏の間、学校でも家でも自分の居場所を失うことに。

そんな琉花が、父親が働く水族館のある海辺の街で“ジュゴンに育てられた”不思議な兄弟、“海”とその兄の“空”と出会うが……。

映画『海獣の子供』は、琉花がひと夏のかけがえのない出会いの中で、命の誕生の秘密や大自然の神秘に触れながら成長していく姿を、美しくも、まるで生き物のようなダイナミックな映像で描き上げた壮大な海洋冒険ファンタジー。

本作で14歳のヒロイン・琉花の声を担当した芦田愛菜が、アフレコ時のエピソードや不思議な少年“海”に命を吹き込んだ同い年の石橋陽彩(17年の『リメンバー・ミー』日本語吹替版で主人公の少年ミゲルの声を担当して話題に)の声の印象から、映画が描く壮大なテーマに対する自らの考え、普段の生活で大切にしていることまでたっぷり話してくれました。

「素直になれない女の子」に共感

――五十嵐大介さんの原作のコミックを最初に読まれたときはどんな感想を持たれましたか?

絵がすごく繊細で、綺麗で、とても好きな雰囲気だな、と思いました。

そして、今回の映画もそうですけど、水の動きがダイナミックで、生きている感じがして、気持ちがよかったです。しかも原作は白黒なのに、海の中に本当にいる感じがして、不思議な雰囲気に包まれました。

――ストーリーについてはどう思いました?

この後どうなるんだろう?と先の展開が気になったので、一気に読んじゃいました。

――芦田さんが声を担当された琉花はどんな女の子?

心の中では思っていることがたくさんあるし、いろいろ感じているのに、それをうまく言葉にできなくて、誰かにそんな自分の気持ちを分かって欲しいのにそれも言えない。

そんな風に、素直になれないところがあるけれど、自分でもそれがもどかしいと感じている女の子なのかなと思いました。

――そういった部分は共感できましたか?

そうですね。私も自分に素直になれない瞬間があったりするので、すごく共感できました(笑)。

「心の声を表現するモノローグ」ではすごく感情を入れた

――これまでにも声のお仕事をされていると思いますが、今回特に意識したことは?

心の中で思っていることをうまく言葉にできない女の子なので、心の声を表現するモノローグが多かったんです。

なので、心の中を伝えるモノローグではすごく感情を入れて、豊かに雄弁になるようにして、逆に実際に口に出して言うところはうまく話せないように表現して、それが伝わるようなお芝居をしました。

――声のお仕事は表現の仕方や筋肉の使い方が普通のお芝居と違いますよね。

普段のお芝居はちょっとした目線の動きや動作で表せることもありますが、アニメーションの場合は声だけでそのキャラクターのすべてを、彼女がどんな気持ちなのかを表現しなければいけないので、そういうところはやっぱり難しいですが、すごくやりがいがありました。

――渡辺歩監督からはどんな指示がありました? 琉花を演じる上でのヒントになるような言葉はありましたか?

監督は私が声を録音するブースの中に一緒にいてくださって、この作品に対する想いだったり、どういう作品にしたいのかなど、琉花の気持ちやそのシーンの意味を直接うかがうことができました。

何回かテイクを重ねながら、私の方から監督に「ここはもっとこういう風にした方がよかったですか」と伝えて、監督が「そうだね」とか「ここはこれでいいんじゃないかな」と返してくださったり。

そういうコミュニケーションをとりながら、こだわってやらせていただけたのは嬉しかったです。

――原作者の五十嵐大介さんともお話されました?

はい。原作に「ギャッ」というひと言を描いた大きな一コマがあるんですけど、どういうイメージでその一コマを描かれたのかをお聞きして、その声をどう表現すればいいのかということを五十嵐さんと監督、私の3人で話し合ったりしました。

――この作品のアフレコはおひとりずつ声を収録されたみたいですけど、ボイスキャストは同世代の方が多いですよね。声のお仕事も同世代の人とやった方がやりやすい、みたいなことはありますか

同世代の人……というより、石橋陽彩さんのお声を初めて聞いたときに、昔から知っている友だちみたいに、あっ、“海”くんだ!と自然に思えたんです。

それに、今回は私より先に石橋さんが声を収録されていて、私が声を録音するときにはすでに“海”くんの声が入っていたので、かけ合いのシーンなどはとてもやりやすかったです。

――芦田さん自身は、自分と同世代のキャラクターの声をやるときと世代の違うキャラクターの声を表現するのとではどちらがやりやすいですか?

今回の琉花は私と同い年の14歳という等身大の設定だったので、共感できるところもたくさんありましたし、演じやすかったです。

でも、世代の違う役を演じるのも、例えばどうやったら幼い感じになるだろう?と考えながらやるのが楽しくて。だから、どちらも好きですね。

水の表現が、命を感じるようなものになっている

――完成した映画を観た感想をお聞かせください。

水の表現が特にそうなんですけど、映像と音がお互いを引き立て合っていて、命を感じるようなものになっているのがいいなと思いました。

そして、私はこの作品が伝えたいことは答えが出せるものではないのかな、と思っているんですが、そのこととも関係した好きなセリフがあって。

「人は言葉にしないと思っていることの半分も伝えられないけれど、クジラたちは、もしかしたら感じたことや思ったことを歌で伝え合っているのかもしれない」というセリフなんですけど、それを聞いたときに、この世界には言葉では表現できないことがたくさんあるのかなと思って。

それを言葉にしなきゃいけないとか、ちゃんと理解しなきゃいけないとか、そういうことではなくて、感じることが大切なのかな、と思いました。

ラストの30分は難しいことが描かれている

――受け取り方は観た人によって違っていいわけですね。

そう思います。作品全体を通してもそうですけど、特にラストの30分は難しいことが描かれていると思います。

私自身もいろいろなことを感じて、いろいろなことを考えたんですけど、いまもお話ししたように、明確な答えはまだ出せていないんですよね。

逆に、これが正解、みたいなものがあるわけじゃないのかな、と思ったりもして。

この作品にはさまざまなテーマがあるので、みなさんきっと、観たときに思うことや感じることが違うような気がするんです。

ですから、それぞれ自分が身体で感じて、その感じたことを大切にしていただけたら嬉しいなと思います。

生きることと死ぬこと、命の誕生が表現されている

――芦田さんはどんなことをこの作品から受け取りました?

生きることと死ぬこと、命の誕生が表現されていると思うんですけど、自分の命がそんなに長くはないということを知っている“海”くんと“空”くんは、死の方向から生きるとはどういうことなんだろう?って見ているんですけど、琉花は自分が生きているということを実感しながら、死ぬってどういうことなんだろう?って見ているんですよね。

そういった意味では、生きることと死ぬことは正反対のものではなく、隣り合わせにあるものなのかな、と感じました。

自分の存在意義って何だろう?

――この作品に触れて、生命や地球に対する価値観は変わりましたか?

命の誕生って何だろう? とか、自分の存在意義って何だろう? ということを、これまではそんなに深く考えことはなかったんです。この映画は、そういうことについて考えるきっかけを与えてくれた作品だと思います。

――考えた結果、どんな答えが導き出されました?

いえ、そこについてもまだ答えは出せてなくて。でも、大人になって14歳の自分を振り返ったときに、あのとき感じたことや、立ち止まって考えたことがいまに繋がっているのかなと思えたらいいですよね。

――海に対するイメージも変わりました?

海は私たちのすごく身近にあるものですけど、深海など、まだ謎に包まれている部分がたくさんあると改めて思いました。

それに、穏やかなときもあれば、怖いときもありますよね。そういう印象がより強まったような気がします。

水槽の中の“海”くんと初めて出会うシーンがすごく好き

――好きなシーンはどこですか?

水槽の中の“海”くんと初めて出会うシーンがすごく好きです。音楽が盛り上がっていくし、波やお魚がすごく綺麗で、とてもワクワクしました。

――ところで、芦田さんは泳ぎは得意ですか?

いや、そんなでもないです(笑)。だから、“空”くんに手を繋いでもらって「こうしたら速く泳げるんだよ」と教えてもらいたいです。普通の人が泳いでいる感じと全然違いましたものね。

海の中で“海”くんと“空”くんと琉花の3人が遊んでいるシーンは、本当に楽しそうで、すごく好きです。私も“海”くんや“空”くんみたいな人たちに出会えたらいいなと思いました(笑)。

――海に行ったときの何か楽しい思い出はありますか?

最近は行けていないのですが、小さい頃はGWに家族と一緒に、バケツと熊手を持って、潮干狩りに行っていました。

芦田愛菜と両親との関係

――好きな海洋生物は?

イルカが好きです。頭がいいし、可愛いので。

水族館などのイルカショーで、イルカと一緒に泳げるイベントもやってみたいし、イルカとコミュニケーションがとれたら楽しいだろうなと思います。

--琉花ちゃんはお母さんと心をうまく通わせられない女の子でしたが、芦田さんはお父さんやお母さんにしてもらったことでよかったなと思うことはありますか?

本の読み聞かせをしてくれたり、周りに本がある環境で育ててくれたことには感謝しています。

――それでは逆に、両親の反対を押し切ってやったことで、やってよかったなと思うことは?

う~ん、あまりないですね。逆に、親の言うことはちゃんと聞いた方がいいなって最近ちょっと思う瞬間がありました(笑)。

――琉花ちゃんと違って、お母さんに相談したり、いろいろな話もされるんですか?

そうですね。琉花とお母さんのように、お互いに分かり合えないという感じではないです。

ただ、私はポジティブなことは言えるけれど、ネガティブな感情を言葉にできなくて。

例えば、悔しいと思っていても、ちゃんと「悔しい」って言えなかったりする。そういう、自分に素直になれないところがあるんですよね。

――負けず嫌いなんですね。

そうです。負けず嫌いですね(笑)。

いま力を入れていること

――そんな芦田さんがいま力を入れていることは?

部活でマンドリンを弾いているので、マンドリンは頑張って、もっとうまく弾けるようになりたいなと思っています。

――マンドリンを始めたきっかけは?

それまでマンドリンという楽器のことを知らなかったんですが、新入生の歓迎会で先輩たちが演奏されているのを聴いて、可愛らしい音に惹かれたんです。それで、マンドリンクラブに入りました。

――どんな曲を演奏されるんですか?

歌謡曲もやりますし、もちろんクラシックも演奏します。けっこう練習して、いろいろな曲が弾けるようになりました。

――遊びでいまハマっていることは?

学校の休み時間に校庭に出て、毎日のようにバレーボールをやっていることです。

友だちと円になって、レシーブだけで繋いでいくバレーボールなんですけど、それにハマっていると言うか、自然に夢中になっちゃいます(笑)。

――そういう時間が単純に楽しいですよね。

そうですね。いまは特別なことをするより、友だちと他愛もない会話をしたり、一緒に過ごす時間が楽しいです。

――でも、好奇心も旺盛なのでは?

いろいろなものと出会うきっかけは作りたいなと思っています。ひとつひとつの出会いから、新しく知る世界もあるかもしれないので、いろいろなことに興味を持つようにしています。

その誠実でピュアな言葉の数々から、感受性が豊かな芦田愛菜の現在のリアルがリリカルに伝わったはずだ。

映画『海獣の子供』は、そんな彼女のしなやかな感性と色鮮やかなめくるめくアニメーション表現とを呼応させながら、ほかでは見たことのない深淵な世界を映し出していく。

あなたは本作で何を感じ、どんな感想や考えを持つだろうか?

本格的な夏が到来する前に、芦田愛菜が体現した琉花と一緒にスクリーンの中の海に出かけてみてはどうだろう。

(ハピママ*/イソガイ マサト)

このネタ読んでどう思う?

投稿ありがとうございます。
よかったらログインしてコメントも書きませんか?閉じる

このネタへのコメント4

コメントを投稿するにはログインが必要です。

ログインしてコメントを書く

カテゴリ別アクセスランキング

トップ