乳がん母さんの明るい共病7|悪気の無い人たちの発言に、軽く傷つく患者の心~その1~

2019/6/9 15:00 Suits-woman.jp

今から6年ほど前のこと。人間ドッグでオールAの判定をいただき、「なんか頭悪そう」ってほどに健康体な私が、実はガンでした。ガーン!!というのが、このコラムの出発点なわけですが。
これまでのお話はコチラ。

「私だったら受け入れられない」発言

今日は、昨日の続きです。

今日の続きに、明日があります。

でも、昨日、今日、明日と、まったく同じような日が続くなんて保証はどこにもありません。ナッシングです。

当たり前の毎日って、けっこう当たり前ではないし、それほど地続きでもないです。

ある日突然、不測の事態が降りかかって人生が変わる。

そういう事ってありますよね。それは恋かもしれないし、事故かもしれません。

私の場合は病気でした。乳ガンです。

 

「あなたは強いわねえ。私だったらダメだわ~。突然、ガンだなんて言われても受け入れられない!! この世でいちばん私がかわいそう、くらいの勢いで不幸にひたっちゃうわ~」

ある友人は、私の病気を知って、こう言いました。

いやもう、どうぞビチャビチャにひたりきってくださいな。なんなら上からもジョウロでおかけしますけど? ……とは言いませんでしたよ。大人なので。(ちょっと思ったけど)

 

この、「私だったら受け入れられない」発言は何度も聞きました。ネットで知恵袋的な人生相談を読んでも、しょっちゅう出てきました。

ホワイ? ジャーパニーズピーポー、ホワ~イ? ……いささか古いですね。ごめんなさい。

でもこれ、私は本当に不思議でした。

「受け入れられない」ってナニ? 病気になったのは事実だし、少しでも早く治療を始めなければいけない。そこは動かしようのない決定事項なわけです。病気って、「受け入れられる」とか「受け入れられない」で分別するようなものなの? ゴミみたいに?

 

あと、「どうして私が?」「なんで私ばっかり?」という嘆きもよく見聞きしました。

でもね、と私は思うんです。

もしもこれが宝くじで、たまたま買った1枚が当たったら、「そんな幸運、受け入れられません!!」と思う人はいないんじゃないでしょうか。

宝くじで大金が当たる確率は100万分の1とかです。対して乳ガンは成人女性の7人に1人はなるといわれています。

100万分の1の幸運は自分のものと喜べるのに、7分の1の不運は受け入れたくありませんってのは、ちょっと通らないかな~!? と思いませんか。人生に幸運を期待するなら、不運もセットでついてきちゃうんですよ。マクドナルドのバリューセットのポテトみたいに。

……なんていうと、必ず返ってくるセリフは「あなたは強いわねえ。でもみんながあなたみたいに強いわけじゃないのよ」でした。

いやいやいやいや。強いとか弱いとかも関係なくない?だって、病気になったのは私のせいじゃないですし。タバコは吸わないし、基本的に食事も自炊。ほぼ健康体重で、犬の散歩程度は毎日、運動しています。人間ドックではA判定。そんな私がガンになるってことは、誰だってガンになる可能性があるってことです。何が悪かったかといえば、いささか運が悪かった。それだけ。その運だって、7分の1程度の高確率の悪運です。

「だって、私のせいじゃないし」

ガンになった自分を受け入れられなくて、ただ泣くばかりで治療に向き合えない人は、そうつぶやいてみるのも一つの手ではないかと思います。

本当にあなたのせいじゃないのですから。もちろん、私もふくめて。

「な~んだ」って、どうよ!?

さて、もしもあなたが突然にガンを宣告されたとします。

あなたの人生はガラリと変わりますが、周囲の人たちは何も変わらないので(←当たり前)、病人の立場からすると無神経と思える発言を、けっこうくらう事になると思います。

私の場合、「実は乳ガンになって……」と報告した友人から、こう返されました。

「ほら。よく、5年後とか10年後とかの数字が発表されているじゃない。あれで乳ガンの”死亡率”ってどれくらいなの?」

それをいうなら5年後”生存率”です……。

「うん。幸い、乳ガンって5年後”生存率”(←さりげなく強調)はわりといいんだよね~。9割いくよ」

すると。この友人はこう言ったのです。

「な~んだ」

ああ……、もうさ~……。頼むからさ~……。

みんな悪気はないんです。

遠慮のない口の悪さが面白くて、長年、つき合っている友人は何人もいます。当然、私も口は悪いほうです。お酒はぬるめの燗がいいように、笑いはきつめのギャグがいいです。

しかし、元気な時なら笑って受け答えできる軽口が、心にやけに刺さって笑えないときもあります。他人の言葉を流せるかどうかは、心身の健康のバロメーターなのかもしれません。

第一、私だってガンになる前は同じ事をしていました。

実はその数年前、家族ぐるみで仲良くしているある友人が、まだ30代の若さで乳ガンを発病しました。夫さんはあわてて、嘆き悲しみ、「女房が死ぬかも……」とお酒の席でウチの夫に弱音を吐きました。

その話を聞いた私はいたく同情したものの、夫から「でも、乳ガンって生存率は9割なんだって」と教えられ、「な~~んだ」って言ったんですよっ!!

あ~~~~っ、タイムマシンであの日に戻って、私をぶん殴ってやりたいよ、ドラえも~~ん!!

数字ではわからない、当事者の心境

生存率が9割だろうがなんだろうが、残りの1割に入ってしまえば、それはその人にとっての10割です。つーか、まず普通に健康な人は「10年後に私が生きている確率は何割だろう?」なんて考えないですし。

たとえるならば。壇上に10人の男女が選ばれて上がります。そこで、司会者はこう言います。「このうちのお一人が命を落とされます。誰が亡くなるかはルーレットで決めます」。観客席にいる人たちは、自分と関係ない話だと思っているので、「なんだ9割も助かるのか。大したことないじゃん」。

じゃあ、その観客は自分が壇上にあげられても、「大したことないじゃん」と言っていられるのでしようか? 観客席の7人に1人が壇上に上げられる確率だとしても?

乳ガンだけでも、7分の1なのです。乳ガン以外にも病気なんて山ほどあります。事故の可能性だってあるでしょう。そうやって考えると、昨日、今日、明日と、当たり前に平穏な日々が続くことのほうが、奇跡に思えてきます。

どうして「私だけは大丈夫」なんて思えるのでしょうか。何の根拠もないのに。

でも、まあ、私みたいなおバカモンは、自分の身にふりかからなければわかりませんでした。少なくとも、もう私は、病気やケガやアクシデントや身の回りの不幸に悩む人に対して、「大したことないじゃん」とは思いません。それが大したことなのかどうかは、その人が判断するもので、他人がジャッジするようなものではないのです。

それがわかっただけでも、ケガの功名というか、乳ガンの功名はあったと言えなくもない……、ような気がする……、かも…………?

 

患者を傷つけない会話、発言って一体どんなもの?~その2~に続きます。

 

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