『弟の夫』漫画家・田亀源五郎「イギリス上陸と同性愛を語る!」大英博物館に展示された複製原画が手に入る!?

2019/6/3 12:00 日刊大衆

 5月23日、イギリス・ロンドンの大英博物館で、日本の漫画をテーマにした展覧会『The Citi exhibition Manga』展が開幕した。

※動画は「taishu.jp」で

 同展は日本の作家約50名、出版社や関連会社約30社の協力のもと、総計約240点にも及ぶ原画などが並び、日本以外の国で催されるものとしては最大規模の漫画展となる。

 この展覧会のオープニングセレモニーに招待され、原稿も展示された『弟の夫』、また現在連載中の『僕らの色彩』などの作品で、ゲイと社会について描いたマンガを発表している漫画家の田亀源五郎先生に、帰国後の空港でお話を伺った。

(複製原画の販売や、Kindleでのコミックス期間限定価格販売についてはコチラ)

【田亀先生のロンドンでの道中は、以下のムービーをご覧ください!】

https://youtu.be/FpqNo45RkyI

大英博物館で自身の作品と

――帰国すぐでお疲れのところお時間を作っていただいてありがとうございます。さっそくですが、大英博物館での展示の印象はいかがでしたでしょうか?

「展示のボリュームがすごくて、見ごたえがありました。展示の仕方もスタイリッシュで綺麗でした。

 それと、マンガを日本文化全体の中の一つとして位置づけるようなキュレーションが見られたのは面白かったですね。会場に幕末から明治のころに活躍した画家・河鍋暁斎の引幕(舞台などで使用する幕)が目玉として展示されていたんですが、マンガという文脈で暁斎と結びつけるということは日本の感覚ではあまりないですよね。

 展示がテーマごとにグループ分けされているんですが、そのグループの組み合わせがユニークで、例えば『聖☆おにいさん』と手塚治虫さんの『ブッダ』が並んで展示されていたりとかするんです(笑)。

 中でも“思いもよらぬアドベンチャー”というグループでは、『ワンピース』と『ナルト』と『ゴルゴ13』が並べてあったりして、あまりマンガ好きからは出てこない発想なので面白かったです。なぜここに『ゴルゴ13』が、と思って(笑)。でも逆に新鮮で、日本の方が観ても面白いかもしれませんね」

――なるほど、それは面白いですね(笑)。以前から海外の展覧会に作品を提供なさっていますが、今回の大英博物館の展示ではどんな部分が違っていましたか?

「これまで美術館で展示されたときは、日本では賞を取った受賞展でしたし、海外ではマンガではなくエロティック・アートという文脈でした。今回は日本のマンガという視点でキュレーションされた展覧会なので、テーマごとに並べて展示したり、歴史をたどる展示であったり、もしくはマンガの読み方から始めるような展示なんかもあって、それは全く違いましたね」

――海外では個展を開催されたりもなさってますよね?

「そうですね。国としてはフランスが多くて、2年に一度のペースで定期的に行っています。他にもベルリンやニューヨーク、ロサンゼルスでも個展を開催しました」

世界中に多くのファンを持つ田亀先生

――日本のファンの方と海外のファンの方で反応に違いはあったりしますか?

「日本の方はシャイなので、あまりグイグイ来ないですが、海外の方はものすごく積極的ですね。自分も絵を描いているといって見せに来る方も多いですし、今回も自分で作った同人誌やスケッチなんかをプレゼントしてくださった方もいました。

 あとは私の絵のタトゥーを入れてる方が見せに来ることがあるんですが、いままでたくさん見ているので、すごく出来の良いものもあれば、『これはちょっと…』というものもあったりします(笑)。ただ、どの絵をピックアップしたかという部分は、いつも面白いですね」

「偏見で拒否するのではなく、知って相互理解をしよう」

――さて、作品についてもお伺いしたいんですが、今回原稿が展示された『弟の夫』が世界で読まれていることに関しては、どのような思いでいらっしゃいますか?

数々の賞を受賞し、ドラマ化もされた『弟の夫』

(『弟の夫』とは:小学生の娘と父子2人で暮らす主人公と、彼の双子の弟の結婚相手であったカナダ人男性・マイクとの交流を描いた作品。第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門 優秀賞、第47回日本漫画家協会賞 優秀賞、第30回アイズナー賞 最優秀アジア作品賞などを受賞)

「広く読んでいただきたいと思っていたので、世界で読んでいただいているのはありがたいことですね。

 この作品は当初、すごくドメスティックな作品だと思っていました。日本の保守的な環境に、異物として同性愛者が入って来ることで価値観が変わっていく、という構図なので、作品を始めるときに海外のファンから『今度の作品は私たちも楽しめそうですか?』と聞かれ、『うーん、どうなんだろう……』って思っていたんです。

 ところがいざフランス語版や英語版が出て反応を見てみると、“実はどの国にも同じような状況がある”とういうことが分かったんです。

 例えばすでに同性婚が合法化されている国だとしても、同性愛に対するスティグマ(ネガティブなレッテル)が全部なくなっているかといえば決してそういうことではなくて、やはり偏見や誤解がある。欧米はもっとフラットになっているのかと思っていたんですが、想像以上にまだバイアスがかかっているということが分かりました。

 もしかすると、『弟の夫』で描いていた“偏見で拒否するのではなく、知って相互理解をしよう”というテーマは、同性愛に限らず人種や宗教で対立することの多い欧米だからこそ響く部分があったのかもしれません」

――住居や食事、温泉など、日本的な文化が多く登場するマンガでもありますが、そういった部分についての反応はどうだったんでしょうか?

「確かにエキゾチックな部分で楽しまれた方もいらっしゃったかもしれませんね。あるアメリカのインタビュアーは『温泉に行く回は非常に“マジカル”だった』とおっしゃっていました。ただあの回は、内容的にも“登場人物たちが家族として結ばれていく”というものだったので、単にエキゾチックな描写にだけではなく、ストーリーに関しても万国共通で響いてくれたんだなって思います」

「描いてみたいのはゲイ同士の話で完結するのではなく、個人のゲイと社会が関わる間で産まれてくるドラマ」

【以下のムービーは、田亀先生が招かれたロンドンでのトークショーの様子。先生自ら『僕らの色彩』について語っています】

https://youtu.be/6lO58419fgQ

現在、月刊アクションにて連載中の『僕らの色彩』

――さて、今度は新作の『僕らの色彩』についてお聞きしたいんですが、今作に込められたメッセージとはどんなものなのでしょうか?

(『僕らの色彩』とは:周りにゲイであることを秘密にしている男子高校生と、彼を取り巻く人々が織りなす青春ドラマを描いた作品)

「日本のマンガに見られるゲイ表現というのは、ボーイズラブに代表されるように、ほとんどがロマンスやセクシャルなファンタジーを描いたものです。私もそれはそれで読者として楽しく読んでいるんですが、ただ、そればっかりに偏ってるのが不満だったんですね。

 そこで『弟の夫』では、ロマンスではないカタチでゲイについて描き、ヘテロ(異性愛)読者向けに描いてみたいな、という思いがありました。

 そこで今回の『僕らの色彩』では、『弟の夫』ほど明確にヘテロ読者を意識することなく、ゲイの少年を主人公にして、読者に共感していただいたり、巻き込んでいけたら面白いな、という考えで執筆し始めました。

 根っこにある“恋愛や性行為で消費されるのではないゲイの物語”というテーマは2作とも共通しているので、私の中では姉妹作という位置づけです。

 内容としてはゲイの高校生男子の日常生活を描いています。最近ではそれほどゲイであることをうしろめたく思うことのない時代にはなってきていると思うんですが、ごく自然にオープンにできるかというと、まだそこまでの社会にはなっていないですよね。

 その“オープンにできない人間”を描くことで、同じように悩んでいる人たちにはリーチ(伝達し広げる)して欲しいし、また逆に身近にもオープンにできない人がいるんじゃないか、あなたの子供がそうなんじゃないか、というような想像力を、非当事者には持ってほしいと思っています。

 私が描いてみたいのはゲイ同士の話で完結するのではなく、個人のゲイと社会が関わる間で産まれてくるドラマなんです。今までフィクションではあまり読んだことがなく、私自身も読んでみたいと思っているので、自分で描いてみようと思いました」

――『僕らの色彩』はコミックス1巻が発売中ですが、最初から胸に迫る展開が続いて目が離せない作品となっています。最後にもう一つお伺いしたいんですが、先生が作家活動を始められてからの約30年間で、ゲイと社会の関係はどのように変わってきたとお考えでしょうか?

「30年のうちの20年はあまり変わっていなくて、ここ10年くらいの間にものすごいスピードで変わったという印象です。

 理由としては、ここ10年くらいで同性婚の合法化というのが世界中からニュースとして流れてくるようになったということと、並行して“LGBT”という言葉が一気に脚光を浴びるようになったということがあると思います。

 それはようやくセクシャルマイノリティの存在や権利というものが目に見えるようになってきたということで、それによって男性同士の恋愛を描いたドラマが人気を博したりしていると思います。

 でも、そういったフィクションやニュースの中ではなく、日常レベルでどれだけ顕在化しているかといえば、まだまだだなと思っています。

 例えば街行く人に『ゲイやレズビアンの友達はいますか?』と聞いたときに、数年前の調査では、日本は韓国と並んで6%という圧倒的に低い数字でした。これが欧米の先進国ではだいたい3割から5割を超えてくるんです。

 ただ一つ私が期待したいのは、“LGBT”という言葉の広がりや、テレビドラマで男性同士のラブシーンが流れることでもいいんですが、そういうことから社会の中でゲイの存在があたりまえのものになってくることによって、若い世代がそういうことに後ろめたさを感じなくなっていってくれることです。

 でも、そういう変化はいきなり進んでいくものではないので、焦ってはいけないと思っていて、私が『弟の夫』や『僕らの色彩』を描いているのも、これらの作品を読んだ人達が次のステップに踏み出してくれることを期待しているから、というところがあるんですよね」

 そしてここでもう1つスペシャルニュースが……

 双葉社オンラインストアにて、なんと田亀源五郎先生の複製原画の通信販売を開始!

 イラストはカラー・モノクロすべて、これまで展示会で販売したものとは異なる絵柄となっており、またモノクロ原稿については大英博物館で展示されているものと同じものを購入することができます。

 完全限定生産の複製原画を手に入れる貴重なチャンスをお見逃しなく!!

<ご注文方法>
■お申し込みは『双葉社オンラインストア』 (https://ec.futabasha.co.jp/item_List.php?@ps@=none&cat=15)にて承ります。

 さらに大英博物館での展示を記念し、Kindleでは『弟の夫』1巻を税込100円、『僕らの色彩』1巻を300円(半額・税抜き)と、6月9日までの限定割引実施!

 また、『弟の夫』1巻は今ならKindle Unlimitedで読むことが出来ます。このチャンスに是非ご一読下さい!

田亀源五郎(たがめ・げんごろう)

マンガ家/ゲイ・エロティック・アーティスト。1964年生まれ。
多摩美術大学卒業後、アート・ディレクターをしつつ、1986年よりゲイ雑誌にマンガ、イラストレーション、小説等を発表。1994年から専業作家となり、ゲイ雑誌『G-men』(ジープロジェクト)の企画・創刊にも協力(2006年に離脱)。同時に、日本の過去のゲイ・エロティック・アートの研究、およびその再評価活動を開始。また、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツなどのゲイ・メディアでも活動開始。アーティストとしてはパリ個展やニューヨーク個展を始め、フランス、アメリカ、スペイン、イタリア、オーストラリア、カナダなど企画展への招聘参加や、アメリカ、イギリス、ドイツなどのアートブックへの作品掲載も多数。
オフィシャル・サイト:http://www.tagame.org/

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