セブン、ローソンが実質値引きで「食品ロス」減らしに動いたワケ/馬渕磨理子

2019/5/27 08:50 日刊SPA!

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「あの企業の意外なミライ」を株価と業績から読み解く。滋賀県出身、上京2年目、犬より猫派、好きな言葉は「論より証拠」のフィスコ企業リサーチレポーター・馬渕磨理子です。

 私はこれまで、上場銘柄のアナリストとしてさまざまな企業の業績予測、市況予測を行ってきました。また、自身で株式投資を5年以上に渡って行い、市場に向き合ってきました。

 本企画では、そんなリサーチャーである私馬渕の視点からみなさまに「あの企業の意外な情報」をお届けます。

◆大手コンビ二が「食品ロス」対策に力を入れるワケ

 今回取り上げるのは、「令和時代のコンビニ業界の未来」です。

 特にフォーカスを当てるのは食品ロスへの取り組みです。

 毎日、大量の食品が廃棄されているコンビニ。現在、1日当たり380~600トンの食品が全国のコンビニで廃棄されています。しかし、各報道機関の発表によると、2019年秋より各大手コンビニチェーンは食品ロスに本腰を入れるようです。

 賞味期限が迫ったおにぎりやお弁当を買った客に対して、セブン‐イレブンは今秋からnanacoポイントを数%上乗せし、ローソンも10%実質値下げすることを発表しました。
 なぜ食品ロス問題に重い腰を上げたのか。その深い理由を紐解いていきましょう。

◆令和コンビニ改革、キーワードは「iPhone化」

 最近のコンビニといえば、24時間営業や人材難の問題が出てきていることはニュースで知っていることと思います。新規出店数は頭打ちの状態となっていますし、本部と加盟店の利益分配を含めて、従来通りの売上が見込めなくなるのは間違いありません。

 そこで、この状況を打破したいコンビニ各社の決算発表で目立ったのは、加盟店舗のサポートを手厚くすること。

 たとえば、セブンアンドアイHDの決算発表では、『今まで総額投資の60%を新規出店に充てていたが、2019年度は既存店の強化に60%以上を充てる』と述べています。

 これはどういうことでしょうか。

 同社のレポートを読み解くと、具体的には下記のような施策が実行されるそうです。

【令和コンビニ改革の一例(これまでの店舗を大事にする戦略)】
・AI発注の実験
・セルフレジの導入
・既存店のレイアウト変更への投資
・商品の陳列がしやすいスライド式棚の導入
・派遣会社との連携(加盟店からの人材のSOSに対応するため)
・空気圧を変えるエアコン導入による掃除を楽にするなどの試み(店舗へゴミが入りにくくなります)

 簡単に言えば、「拡大路線」から「メンテナンス路線」、あるいは「アップデート路線」への切り替えと言えるのではないでしょうか。

 スマホで例えると、最新のiPhoneを購入するのではなく、今持っているiPhoneのアップデートを実行するイメージです。そして、その本丸とも言えるのが、今回話したい主題、フードロスの試みです。

◆マクドナルドも実行した「食品ロス対策」のスゴさ

 フードロスの最大のメリットは、見切り売りを行うことで、廃棄ロスを減らし加盟店オーナーの損失を減らすこと。すでにフードロスで業績を回復した世界的企業がありますがご存知でしょうか。

 それは、マクドナルドです。

 2014年に中国のサプライヤーが使用期限切れの鶏肉を使用していた疑いが発覚し、2015年には国内で商品に異物が混入する問題が発生したことから客離れが進み、業績が低迷していた同社。

 この危機的状況に対し、マクドナルドは新メニューの開発やキャンペーンなどの施策に加え、食品ロスを削減し、収支管理を徹底していきました。

 その結果、すごいことが起きます。

 経常利益の推移を見ると、

2015年:▲234億円
2016年:69億円
2017年:189億円

 ……とV字回復しています。

 あらかじめ作っておいた商品を提供する「作り置き方式」という常識を覆し、「メイド・フォー・ユー」というオーダーメード方式の提供方法を導入。基本的に食品ロスが発生しない状況を作りました。この「メイド・フォー・ユー」の導入後、マクドナルドの食品廃棄物は57.6%もの削減効果がもたらされたのです。

◆政府もアナウンス。季節商品の大改革が始まる

 農林水産省によると、「食品ロス」(※廃棄量のうちまだ食べられる部分)は2016年度に約643万トン発生しており、このうち食品関連事業者から出たものが過半数を占めています。

 特に目立つのが季節商品。

 恵方巻やクリスマスケーキなど、その時期にしか販売できない商品は、時期を過ぎると廃棄せざるを得ない状態が続いています。

 これが問題視されており、農水省は今年1月、恵方巻きを需要に見合った販売にするようコンビニやスーパーの業界団体に求めています。

 コンビニ業界は今までも、ESG(環境=Environment、社会=Social、ガバナンス=Governanceの略)の取り組みを多数、行ってきました。

・省エネ店舗数を増やす。
・レジ袋の厚さを薄くして、使用重量を減らす。
・高齢者など買い物困難者を抱える団地向けに出店。
・使用する米を無洗米に変更しCO2削減や節水を目指す。

 そして、今年からはここにフードロス施策が加わります。

 セブン&アイ・ホールディングスが5月8日に発表した環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」にも、食品の廃棄ロス問題への対応を強化することが示されていますし、ローソンの記者会見では、竹増貞信社長が食品ロスを「2030年までに半減させる」と語っています。

 今後のコンビニ業界の方向性は、もうおわかりでしょう。各コンビニがフードロスを実行するにあたって、関連銘柄の上昇が考えられます。

 販売終了商品や賞味期限が間近な商品など特別価格で提供する企業と業務提携を行っているエスプール<2471>、グループ会社が食品ロスの解決を目的としたクーポンアプリ「No Food Loss」をリリースしたエイチ・アイ・エス <9603>などはその代表例といえるでしょう。

 最後に、セブン&アイ・ホールディングス の株価について。

 3月初旬の4800円水準から、4月19日安値3662円をつけ、下落基調が続いています。

 ただ、75日移動平均線から約15%乖離していることから売られ過ぎのシグナルが出ています。また、PER15.8倍(5月20日時点)と、ユニー・ファミリーマート、ローソンのPER28倍と比べても投資妙味がありそうです。株価の下落基調からの立ち上がりのタイミングを見極めた上で、4800円水準への回復の可能性もあるのではないでしょうか。

 コンビニ業界をけん引している、セブンの今後の取り組みに期待が寄せられます。

【馬渕磨理子】
日本テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi

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