ネット売買が当たり前の今、なぜか生き残り続ける東京最古の質屋

2019/5/23 15:50 日刊SPA!

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 メルカリなどのフリマアプリの普及によって、誰もが自分のものを売ったり中古品を買ったりできる世の中になった。その大きな波によって、質屋業はいま最大の岐路に立たされており、毎年倒産する店が相次いでいる。

 そんな中にあって、今も営業を続ける都内最古の質屋「フクシマ質店」。最古のものばかり巡り「サイコメグラー」を自称する筆者が、同店の10代目社長に取材し、その歴史と現代に質屋が存在する意義についてお伝えする。

◆歴史を見つめてきたフクシマ質店

「創業元禄二年」の文字。生類憐れみの令(しょうるいあわれみのれい)でも有名な、徳川五代将軍綱吉の時代から320年以上つづく歴史を持っている。質屋といえば貴金属やブランド品などを買い取るイメージを持つ人もいると思うが、江戸から昭和の初め頃まではほとんどが着物だった。個人が持っている「財産」といえば、それぐらいしかなかったという時代の背景が伺える。

 質草(質屋に持って行ってお金と替えてもらうもの)に変化が現れたのが昭和30年代。高度経済成長を迎え、白物家電が大量に質入れされるようになった。着物でいっぱいだった蔵に、洗濯機や冷蔵庫がどんどん増えたという。そして昭和の終わりになってようやく、私たちがイメージする貴金属やブランド品がが質草となって登場したというので、私たちの持つイメージはかなり最近にできたものだとわかる。バブルの波は江戸時代から続く、質屋の蔵の中身まで一変させたのだ。

◆存在感抜群!質屋の顔

 長い歴史を持つ質屋の顔といえば「蔵」。ここフクシマ質店にも大変立派な蔵が二棟も建っていて、その容貌は威厳に満ちている。元々あった蔵は大正時代に関東大震災で崩れてしまい、現在のものは昭和一桁にできたもの。

 東京大空襲の災禍で、この辺り一体すべての建物が焼き尽くされたが、この蔵だけ被弾を免れた奇跡的な存在だ。質屋は「保管業」であるがゆえに、預かっているものが焼けてしまう火事をもっとも恐れているため、蔵には蟻一匹入る隙間もないという。

◆この街ならではの質草

 フクシマ質店があるのは、相撲の街としてお馴染みの両国。この場所にあるからこそ、入ってくる質草もあった。例えば引退した力士が、現役時代にタニマチ(後援してくれる客)から貰った化粧回しをこっそり持ってきたり、若い力士が「兄弟子がタニマチから似たようなプレゼントをいくつか貰ったので、1つを質に入れて、それで飯に連れて行ってくれるからおつかいに来た」とやってきたり。苦労する力士の懐も支えていたのだ。

◆質屋は貧乏人の味方だった

 力士の他にも、質屋は落語家も救っている。ある時、貧乏な落語家が質屋の前の道端に座って小噺をいくつか演った。この落語家には金がないんだと知った店主は、その噺を質草として買い取るといって、落語家にお金を渡してやったのだという。かの名人古今亭志ん生も、大成する前は質屋にいつも出入りしていた。地方の興行先でお金が尽きると、大切な幟(のぼり)を質に入れて宿代にしたという話まで残っている。質屋という救済システムは、日本の文化まで支えているのだ。

◆顔の見えない売り買いより信頼を

 フリマアプリやネットオークションの登場で、誰でも自分のものを売ったり、欲しいものを安く手に入れられるようになった。しかし顔が見えないやりとりは、単純に損得だけが往来する冷たくドライなやりとりになってしまう。一方で質屋は、対面でなければ買い取らない。「家族が病気になって、急にお金が必要で…」と人生相談が始まることもあるのだそうだ。

 そこから会話が生まれ、信頼関係が築かれる。顔が見えて信頼できる相手とのやりとり。さらに質屋は、着物から家電製品、貴金属やブランド品、最近では目まぐるしく進化するIT製品まで、時代と共にその目利きの技術を広げている。

 どこの誰かわからない人が売っている、真贋のわからないものより、会話ができてあらゆる目利きの技術がある質屋。今こそもう一度見直すべき時ではないかと感じた。

<取材・文・撮影//Mr.tsubaking>
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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