がんからインフルエンザまで、トンデモ医療で商売する医師たち

2019/5/21 08:30 日刊SPA!

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 ネット上から健康情報番組まで、世にあふれる「トンデモ医療」情報。それらを正すべく、ネット等で情報発信する医師たちが登場している。

 病理医で薬剤師でもある峰宗太郎先生も、SNSやブログで正しい医療情報を発信している。峰先生は今、ウイルス学と病理学の研究のために米国国立衛生研究所(NIH) に勤務し、世界の医療のスタンダードにも詳しい。峰先生に、トンデモ医療について話を聞いた。

◆トンデモ医療を商売にするトンデモ医師たち

――峰先生が気になっている「トンデモ医療」にはどんなものがありますか?

峰宗太郎先生(以下、峰)「最も多いのは、がん治療に関するものです。どんなものがあるかというと、明治大学の科学コミュニケーション研究所が運営している Gijika.comという、エセ科学・エセ医学を評価しているサイトに詳しいです。

 ここの代替療法の項目には、デトックス、O-リングテスト、がんもどき(がん放置療法)、ホメオパシーなどが出ています。こういった治療法はほとんどが「トンデモ医療」ですね。その他に、メタトロンという意味のわからない機械や、純金の棒で患者をなでる「ごしんじょう療法」、がんに大量ビタミンCを投与する療法などもあります。

 今あげたこれらのトンデモ医療の特徴は、いずれも医師がやっている場合が多いことです。つまりトンデモ医療をトンデモクリニックで行ってビジネスをしているのですね。こういった治療をしても病気は悪化しますので、最終的には患者さんが死んでしまうか、まともな病院に紹介することになります。最終的には患者さんは亡くなることが多いので、こういったトンデモ医療を訴える人が少ないのです。かなり悪質なものと言えます。

 それ以外には、インフルエンザを紅茶や緑茶で予防できると言い切る、二酸化塩素で空間除菌ができると言い切る、水素水で健康になれるなどの、科学的に考えると不当な健康関係情報も多数みられます。

 これらの情報は、信頼できる確かな研究が行われていなかったり、研究で効果のほどが不明です」

◆病名の報道だけでコメントする危険

――最近ですと、2月に水泳の池江璃花子選手、4月に歌手の岡村孝子さんが、白血病だと公表しました。有名人ががんを公表すると、メディアに様々な“医学っぽい解説”が出ますよね。

峰「白血病には、実際にはたくさんの種類があります。実際にどのタイプの白血病であるかわからないとその後の経過や治療の難しさなどはわからないのです。
 白血病を早く見つけたからといって治療が良いわけでもなければ、発見が遅かったから即治療が良く効かないということでもありません。詳細な情報がないと白血病としてコメントはできないのですね。なので、これについては真っ当な情報発信は本来難しいことになります。

 一般論として骨髄移植が必要となることは多く、現在の日本ではドナーが不足しています。そういった意味では骨髄バンクのドナーを募ることはよいと思います。ただし、ドナーになることについてもリスクはありますので注意は必要です。またドナーになると様々な負担がありますが、これをサポートする制度が日本には貧弱です。そういったところの改善も必要かもしれませんね」

◆病気を診断する「病理医」とは何か?

――峰先生の専門「病理」とは、どういうことをするのでしょうか。

峰「病理医は、採取された患者さんの体の一部(病気のあるところ)などを主に顕微鏡を使って観察し、そこに病気があるかどうか、病気であればそれは何であるかを診断することを主な仕事としている医師です。その病理医が所属している部門が病理部になります。

 例えば、実際に「がん」と診断される場合、必ず病理医が診断しています。
 というのは、例えば胃カメラをした場合に、病気がカメラで見えても、そこでは癌であるとは断定できません。消化器内科の医師がこの病気と思われる部分を鉗子で少しちぎってきて、それを標本にします。その標本を顕微鏡で見て、診断するのが病理医です。

 病院で病気を治療する場合には、診断がまず必要です。なんの病気であるかを決めないと治療法が決まりませんね。病理医は主にがんを診断していますが、他の感染症や炎症による病気などももちろん診断します。病理医が診断をした結果が臨床医に行き、臨床医が治療方針を患者さんとともに決めて治療にあたることになるんですね。

 また、病理医には特殊な仕事として病理解剖があります。これは、力及ばず病気で亡くなってしまった患者さんを解剖して、病気の進行具合や死因を究明することを目的にしています。これらも伝統的に行われてきていますが、最近ではCTなどの画像診断が広く行われるようになったこともあり解剖数は減少しています」

◆素人と医師の違いは…

――エセ科学信奉者の中には、医師と対等にやり合おうとする人がいますが、そんなことは可能なのか。そもそも医師免許を取るのにどんな勉強が必要なのでしょうか?

峰「医師免許を取るためには、医学部を卒業したのちに医師国家試験に受からなくてはなりません。現在の日本の医学部の多くは、世界医学教育連盟(WFME)の国際基準に従ったカリキュラムをとっています。これは米国医師国家試験受験資格審査NGO団体(ECFMG)というアメリカの医師免許の受験資格を得るために必要なカリキュラムの基準にもなっています。

 このカリキュラムはみっちりさだめられています。『基礎医学』という医大の低学年で始まる科目は解剖学、生化学、生物物理学、細胞生物学、遺伝学、免疫学、微生物学(細菌学、寄生虫学、ウイルス学を含む)、分子生物学、病理学、薬理学、生理学などからなり、さらに低学年のうちから行動科学、社会医学(法医学を含む)、医療倫理学、医療法学なども学びます。

 それらの基礎をもとに、臨床医学を学ぶことになりますが、これには麻酔科学、皮膚科学、放射線診断学、救急医学、総合診療/家庭医学、老年医学、産科婦人科学、内科学(各専門領域を含む)、臨床検査医学、医用工学、神経内科学、脳神経外科学、腫瘍学ならびに放射線治療学、眼科学、整形外科学、耳鼻咽喉科学、小児科学、緩和医療学、理学療法学、リハビリテーション医学、精神医学、外科学(各専門領域を含む)、泌尿器科学、形成外科学および性病学(性感染症)などが含まれています。

 さらに、実技の項目として臨床技能といえるものがあり、病歴聴取、身体診察、コミュニケーション技法、手技・検査、救急診療、薬物処方および治療の実践などがあります。
 そして臨床分野でのローテーション実習(ポリクリやクリクラなどといいます)を70週間程度受けないといけません。
 これらすべてを受けて合格して、ようやく卒業できるのですね。そしてその後、医師国家試験に受からなければいけません」

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 やたらと医師に反論しようとする「エセ科学推進者」たちは、これだけの知識を習得した上で反論しているのだろうか。

 もちろん、商売に目がくらんでエセ科学に走る医師もいるので、一般人の私たちも、人を見る目を養わなければいけない。しかし数冊本を読んだ程度の知識では、到底医師の知識には追いつかないことが、よくわかるのではないだろうか。次回は、峰先生に「トンデモ医療にまどわされない方法」を聞く。

<取材・文/和久井香菜子>

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