「レイドバッカーズ」橋本裕之監督「最近考えすぎていて、アニメを作る側も観る側も疲れてしまっている」

2019/4/11 09:45 エキレビ!

2週間限定公開中の『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』。劇場入場者特典として、キャラクター原案・鈴木次郎 描き下ろしイラストデザインコースターをランダムで配布(特典は無くなり次第終了) 2週間限定公開中の『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』。劇場入場者特典として、キャラクター原案・鈴木次郎 描き下ろしイラストデザインコースターをランダムで配布(特典は無くなり次第終了)

凶悪な魔王ヴァルヴァランを倒すために戦い続けてきた姫騎士アーネリアと、狂戦士のハラミ、武闘家の舞、魔術師のK。
激しい闘いの末、追い詰められた魔王は、最後の力を振り絞って異世界への魔王転生の術を強行。アーネリアたちも魔王を追い、異世界……21世紀の京都へと転生した。
しかし、転生の失敗により魔王は膨大な魔力を失い、小学生の少女に。カリスマに満ちた姫騎士は犬になってしまった。
その後、アーネリアたちは、美大生の本天沼久美が一人で暮らす駄菓子屋の居候となり、元魔王のらんは、小学校教師の鷺ノ宮優子によって保護されている。
そして、紆余曲折の末、宿敵同士だったアーネリアたちとらんは、この世界に散らばった「魔王の欠片」を一緒に集めることになったが、ハラミ、舞、Kの3人は平和な京都での生活に染まっていき……。

4月5日(金)から2週間限定公開中の劇場アニメ『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』(以下、『レイドバッカーズ』)。
『ご注文はうさぎですか?』『魔法少女育成計画』の橋本裕之監督と、『結城友奈は勇者である』『暗殺教室』などで知られる脚本家の上江洲誠らによるオリジナルアニメで、約60分の中に、魅力的で気になるキャラクターばかりが登場する密度の濃い作品となっている。

そこで、エキレビ!では、本作で初のオリジナル作品作りに挑んだ橋本監督にインタビュー。ネタバレも気にせず、作品の制作経緯から、キャラクターのより深い部分まで、大いに語ってもらった。

プロデューサーに「バイトしない?」と声をかけられた


──まずは、橋本監督がこの作品の制作に関わることになった経緯を教えてください。

橋本 他の取材でもよく話すので、もう持ちネタみたいになってるんですけれど(笑)。最初は『魔法少女育成計画』を作っている時、一緒にやっていたフライングドッグのプロデューサーに「今度ちょっとバイトしない?」と声をかけられたんですよ。それから何も教えてもらえないまま、1週間くらい経った後、急にタクシーに乗せられて密室に連れ込まれ。「上江洲さんがオリジナルをやりたいと言ってるから、監督やってくれない?」って。そこで初めて、フライングドッグとStudio五組と上江洲さんでオリジナルアニメの企画が進んでいるということを聞いたんです。その時点ですでに上江洲さんが原作的なものを書いていて。監督を誰にしようかというときに、上江洲さんが自分の名前を挙げてくれたそうなんです。


──その時点で、『レイドバッカーズ』という作品の設定や物語などは、どの程度、固まっていたのでしょうか?

橋本 (完成した)今の形と80%くらいは一緒だったと思います。絵はまだでしたが設定や名前はほぼ決まっていて。作品の中でやりたいことも、今と変わらない感じでした。

──作品の中でやりたいこと、とは?

橋本 最近の業界全体の傾向として、アニメを作る時に考えすぎていて、作る側も観る側も疲れてしまっている。もうちょっと難しいことを考えずに、肩の力を抜いて観られる楽しいアニメを作りたいという話だったんです。例えば、普通は「このストーリーはこういうことを言いたいんだ」とか、「こういうお話にして、こういう風にお客さんを驚かせたいんだ」みたいなことが(プロットや脚本で)描かれているんです。でも、この作品では、それがあまり無くて。上江洲さんも「魅力的なキャラクターが、ただずっと楽しく遊んでいるのを見ていたい」という感じだったんですよ。

──そういった方向性については、どのような印象を持ちましたか?

橋本 最初にお話を聞いた時から、そういう作品作りができるなら、自分もやってみたいと思いました。作品の魅力として、もちろんストーリーの楽しさも大切ですが、まずはキャラクター自体に魅力があって。その魅力的なキャラクターが話したり行動したりすることによって、ストーリーにも魅力が加わっていくものだと思うんです。

──では、物語はほとんど決まってなかったのですか?

橋本 (お話は)決まってはいるけれど、完全には決まってない感じというか。あえて、全部は決めないままに作っていこうという方向でしたね。(物語の)終わりも分からない。始まりもちょっとぼやっとしてる。一応、上江洲さんの頭の中にはあるけれど、それもいつでも変えられる。そういう感じでした。例えば、今回、劇場版として作るにあたって、内容的には、テレビシリーズの第6話くらいでやるような話をいきなりやっているんです。でも、「この会話は、実は第4話に起きたことの話をしていて」みたいにしっかりと作り込んだ上で第6話の話をやっているのではなくて。第1話から第5話まで、こんな話があったかもしれないし、無かったかもしれない、みたいな。そのくらいぼやっとした感じのまま作っていきました。あと、本当は戦ったりしないで、もっとだらだらした話にするはずだったんです。でもなぜか「劇場だし、やっぱり何かと戦わないとおかしいんじゃない?」「劇場だから、何か大きなものと戦わないといけないよね」という話になって。「舞台が京都だから、大文字の送り火と戦えば良いんじゃないですか?」と言ったら、まさかのOKで(笑)。大文字の送り火をどんなビジュアルの敵にしようか悩みました。

上江洲さん原作のオリジナルアニメを作るという感覚


──舞台が京都なのも、最初から決まっていた設定だったのですか?

橋本 自分が入った段階では、まだ舞台は決まってなかったです。自分が京都出身ということもあって「京都はどう?」と提案したら、異世界につながりそうなイメージもあるしいいね、ということになったんですよ。あとは、ハラミたちの居候している家が駄菓子屋なのも、自分が提案したことだったと思います。自分が子供の頃の駄菓子屋って、よく分からないけれど、とりあえず人が集まる場所で。そこに行けば誰かがいる、みたいなイメージがあったんです。元々は、和菓子屋ということだったのですが、それだとちょっと格がありすぎて、いろいろな人が集まりにくい印象があったんですよね。


──その他に、橋本監督の方から提案して変化したことはありますか?

橋本 元魔王のらんの転生後の姿が疲れたOLだったのを、小学生の女の子にしたほうが良いんじゃないかと提案しました。全体的にキャラクターの年齢層が高めだったので、もうちょっと可愛げのある女の子がいないと、緩い雰囲気の作品というよりも、ただ大人がだらけている感じの作品になってしまいそうかなと思ったんです。それに、可愛い子は、お話などを知らない人にとっても作品への入口になってくれるので。そうしたら、なぜか上江洲さんやプロデューサーから「天才」と言われました(笑)。

──橋本監督の中で、「こういう作品にしたい」とか「こういう作品にはしたくない」といったイメージなどはありましたか?

橋本 自分が例として名前を挙げたのは『じゃりン子チエ』と『めぞん一刻』だったんです。上江洲さんもほぼ同年代なので、両方の作品を知っていて、すぐに理解してくれました。『じゃりン子チエ』の良いところは、口悪くケンカしているように見えるけど、実はみんな仲が良いし、ガラは悪いけどそんな悪人ばかりじゃないんですよね。あと、『めぞん一刻』もちょっと似てるんですけれど、登場人物がたくさんいるわりには、いらないキャラクターっていないんですよね。その印象もあって、キャラクターはもう少し増やしたいということで、駄菓子屋の両隣に住むロンとレナードというキャラクターが増えたりしました。

──60分という尺の中で描ける範囲で増やしたという形ですか?

橋本 そうですね。最初は一人だけ増やそうと思っていたのですが、上江洲さんが「駄菓子屋の両隣にして、中華屋(ロン)とインド料理屋(レナード)にしよう」と言ったんです。京都の町並の中に、駄菓子屋と中華屋とインド料理屋が並んでるのはどうなんだ、と思ったりしたのですが、とりあえず仮に入れてみたら、なんかハマって。もう外せなくなっちゃいました(笑)。

──オリジナル作品の監督は、本作が初めての経験だったと思うのですが、原作ありの作品との違いなどは感じましたか?

橋本 今回は、上江洲さん原作のオリジナルアニメを作るという感覚だったので、完全にオリジナルの作品を作るのとは、ちょっと意味合いが違うかなとは思っています。だから、オリジナルかどうかよりも、上江洲さんに満足してもらえるかどうかの方がすごくプレッシャーがありました。上江洲さんとお仕事をするのは初めてではないし、ずっと岸(誠二)さんとか、他のいろいろな監督さんと一緒にやられてきた方じゃないですか。それに、上江洲さんにとっても、初めてのご自分から発信するオリジナル作品だったので、「自分から頼んだけれど、今回は……」みたいなことになったら、どうしようかなという思いはずっとありました。上江洲さんは優しいから、周りの人の事をすごく褒めてくれるんですけれど、「本当はどうなのかな……」って(笑)。初号試写(関係者用の最初の試写)や、先日の完成披露試写会を終えた時、上江洲さんが周りの人と本当に嬉しそうに話しているのを見て、ようやく「あ、嘘じゃ無いんだな」って、ホッとできました(笑)。

ハラミは作っている最中、一番難しいキャラクターだった


──メインキャラクターたちについて、劇中で描く際、特にどのような点を意識されたのかを教えてください。まずは、主人公の三乃ハラミからお願いします。


橋本 ハラミは、カッコ可愛いキャラクターですが、どちらかと言えばカッコ良いの方が少し多いし、ぶっきらぼう。それでも嫌われないようにしたいというのが、一番意識したところです。カッコ良い方向に振りすぎてしまうと、男の子になりかねないんですよね。あとは、戦っている姿はカッコ良いけれど、持ってる武器は不細工だったりして、あまりスマートなイメージにならないようにということも考えていました。主人公ということもあって、作っている最中は、一番難しいキャラクターでしたね。物語の中では敵を倒すことしかしてないのですが、やっぱり、そこに何らかの思いはないと(主人公として)難しい。でも、(元魔王の)らんに対する確執も全部アーネリアが背負っているので、ハラミ自身は、そういったドラマになるものを持ってないんですよね。

──らんにアイスをあげたりとか、普通に優しくしてますよね。

橋本 何もないからこそ、そういう描写を増やしました。ないならないで、元々、この人には何も無いんだ、と。相手が敵だから戦うだけで。敵じゃなければ戦う必要はない。そういう人であれば、アーネリアとは違う形で(らんとの関係も)理解できるんじゃないかなと思いました。あと、主人公が目立ち過ぎすぎて全部持っていってしまうと、脇の存在感がなくなってしまう。でも、周りにも存在感を出すために、主人公の魅力を下げてしまうのは、作品にとってあまり意味がないので。そのバランスも難しかったです。自分がやったことだけでなく、(キャラクター原案の鈴木)次郎さんの絵も、日高(里菜)さんの声も、全部が集まって、うまく主人公になれたのかなと思います。

──可愛い女の子役が多い日高さんを起用したのは、カッコ可愛いのバランスの良さを狙ったのでしょうか?

橋本 日高さんは、らんや舞のようなキャラクターを演じそうな印象があるとは思うのですが、僕は最初からハラミ役に日高さんを推していました。これまでに何回か一緒にお仕事をさせていただいていたので、カッコ良くなり過ぎず、でも、カッコ良くもあるというハラミもできるだろうと思っていたんです。

──次は、転生前は武闘家で、今はアイドル活動をしている舞坂舞について教えてください。

橋本 結局、今回の話は、舞のお話になったんですよね(笑)。


──地下アイドル活動を楽しんでいる舞が、アーネリアたちと一緒に戦うということを、改めて考え直すようなエピソードになっています。

橋本 それも、これが第6話のエピソードである証拠なんですよね。舞がこの世界に一番順応していて、一番楽しんでいる。ある意味、この作品を象徴しているキャラクターかもしれません。この話では、舞がみんなといる時間が一番少ないけど、その分、普段どんな生活をしているのかも、一番苦悩しているのもよく分かる。みんなとぶつかりながらも、またみんなの元に戻ってきた。でも、変わらずこの世界を謳歌してもいる。そういう型にハマってないところが、すごく良いなと思います。アイドルなのに腹黒かったり、1000円札を輪ゴムで束ねて渡したりするし(笑)。面白いキャラになりましたよね。そのあたりも、みんなでいろいろと話すうちに決まっていったのですが、可愛いだけでないところは、きっと上江洲さんの好きな感じなのかなと思います。ただ、ハラミと同じく、舞を立たせすぎると、他が立たなくなるみたいなパズルのような難しさはありました。
(丸本大輔)

後編に続く

【作品情報】

劇場アニメ『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』
4月5日(金)より2週間限定劇場公開

≪スタッフ≫
監督:橋本裕之
脚本:上江洲誠
キャラクター原案:鈴木次郎
チーフディレクター:佐藤清光
キャラクターデザイン・総作画監督:土屋圭
音楽:kz(livetune)
音響監督:山口貴之
アニメーション制作:Studio五組
配給:クロックワークス
製作:LAIDBACKERS製作委員会

≪キャスト≫
三乃ハラミ:日高里菜
舞坂舞:茜屋日海夏
草薙・K:大地葉
アーネリア:内山夕実
らん:長縄まりあ
本天沼久美:花守ゆみり
鷲宮優子:藤田咲
ロン:福山潤
レナード:小西克幸

(C)おばけ屋/LAIDBACKERS製作委員会

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