新元号には安倍首相の「安」が入る? 噂の真相を専門家に聞いてみた

2019/3/22 08:30 日刊SPA!

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 いよいよ4月1日に発表される新元号。今回は生前退位ということで、SNSやアンケートで予想合戦が繰り広げられる異例の事態に発展している。

 特にここにきて囁かれているのが「安倍首相が権力を誇示するために『安』をねじ込んでくるのでは?」という噂。「そうなったらもう元号は使わない!」など、一部では想像を膨らませてエキサイトしているが、「元号の選定プロセスを考えれば、見当違いな話」だと社会学者の鈴木洋仁氏は指摘する。

「そもそもこうした話が出てくるのは、1979年に制定された元号法により『元号は、政令で定める』として内閣に決定権が委ねられたから。しかし、同時に『元号は、皇位の継承があった場合に限り改められる』と、一世一元であることも定められています(皇室典範の存在しなかった明治以前は、天皇が在位中に改元することがあり、一世一元ではなかった)。

 この一世一元により、元号は単なる暦としてだけでなく、天皇の諡号(しごう)、すなわち諡(おくりな)として、崩御後の天皇の名前として機能することになりました。先代の裕仁天皇が一般的には『昭和天皇』と呼ばれているように、元号は天皇のお名前でもあるのです」(鈴木氏・以下同)

◆「俗用」がもっとも厄介

 元号の選定要領については、「国民の理想としてふさわしいよい意味を持つこと」、「漢字2文字であること」、「書きやすいこと」、「読みやすいこと」、「過去に用いられた元号ではないこと」、「俗用されているものではないこと」、「1文字15画まで」といった事項が定められている。

 その他にも不文律として「頭文字が明治(M)、大正(T)、昭和(S)、平成(H)以外のアルファベットになること」など縛りがあるが、この中で、もっとも厄介なのが「俗用」であると鈴木氏は言う。

「天皇のお名前でもあるからこそ、人名や地名、商品名や企業名であってはなりません。それこそ中国やベトナムの中華料理屋の屋号で使われていないかまで調べる必要があります。平成の時は岐阜県にある地元の人だけが使っている地名(こあざ・小字)とかぶってしまいましたが、そのレベルまで慎重にケアしなくてはならない。そうなると、十分な準備期間が要求され、不測の事態まで想定すれば、即位後からすぐに候補がストックされていると考えるのが自然です」

 鈴木氏によれば、おそらく100近い候補が平成元年からストックされ続け、厳重なチェックを経て3つほどの本命候補に絞られているはずだという。

「現在、内閣で元号を担当しているのは内閣官房副長官補の古谷一之氏で、’13年から6年もの長きにわたり選定に携わっています。その過程においてはメールやPCを一切使わず、暗号化された手書きのメモを金庫に保管していると言います」

 こうしたプロセスがある以上、安倍首相の一存で「安」をねじ込むなど無理があると鈴木氏。

「ただし、『安』という漢字自体は何度も元号として使われてきており、今回も使用される可能性はあります。それは安倍首相の意向というよりも、先述したようなプロセスの結果として選ばれた形に過ぎない。ですから、過剰な反応は余計な混乱を招き、天皇のお名前に傷をつけることになるでしょう」

◆新元号予想が的中する可能性も?

 国内の地名や屋号、苗字や名前のみならず、中国、台湾、ベトナム、朝鮮半島といった漢字文化圏での俗用までチェックして絞られる元号候補。当然、最終候補として残る二文字は限られる。

「大正天皇が崩御した際、東京日日新聞(現在の毎日新聞)が『次の元号は光文』とスクープし、世紀の誤報となった『光文事件』がありました。しかし、後に関係者から『実は光文に決まっていたが、情報が漏えいしたので昭和に急遽変更した』という証言が出ており、公式には最初から昭和に決まっていたと記録されていますが、異説もありうると思います。

 というのも、『昭』という漢字が元号で使われるにはあまりにも馴染みがないこと。明治、大正、昭和、平成と並べてみても、『昭』だけが、ほとんどの人は『昭和』以外の熟語を思いつかないのではないでしょうか。実は、昭和はかなり特殊な元号なのです」

 この鈴木氏の推測が正しければ、今回の新元号も巷の予想とは一切かぶらない候補が選ばれることになる。

「ただし、今回は生前退位ということで、あまりにも多くの予想が出てしまっているので、最終候補がすべて網羅されている可能性があります。そうなると、今さら新たな候補を選んで俗用をチェックして……という作業は時間的に難しいので、誰かの予想が当たる可能性はありますね」

 ちなみに、鈴木氏はこれまで一度も使われたことのない「感」と今までもっとも多く使われた「永」を組み合わせた「感永(かんえい)」と予想。

 果たして、新元号をズバリ的中させる人は現れるのだろうか?

〈取材・文/日刊SPA!取材班〉

【鈴木洋仁氏】

東洋大学研究助手。京都大学卒業後、関西テレビ放送、ドワンゴ、国際交流基金、東京大学などを経て現職。著書に『「元号」と戦後日本』(青土社)など

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