東京オリンピックは問題山積み。なぜ中止にならないの?

2019/3/16 08:30 日刊SPA!

(日刊SPA!) (日刊SPA!)

― 連載「佐藤優のインテリジェンス人生相談」―

“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

◆2020年の東京オリンピックは中止すべきだ!

★相談者★ロビキア(ペンネーム) 会社員 男性 45歳

 このままでは大惨事になるのは火を見るより明らかです。なぜ中止にならないのでしょう? なぜ意地でも実行しようとしてるのでしょう? 東京オリンピック2020です。日本政府の借金は軽く1000兆円を超えています。皆それをわかっていながら……なぜ? そりゃあイベント開催中は大いに盛り上がる(?)でしょう。

 しかし、その後は……。今の状態でオリンピックをやって、その後どうなるのか皆予想がつかないのでしょうか? さらに’18年の夏は記録的なゲリラ豪雨、殺人猛暑、台風、地震などが次々と日本に襲いかかってきました。猛暑1つとっても、選手への負担は計り知れません。

 おまけに、竹田恒和JOC会長の贈賄疑惑。東京五輪のイメージは地に落ちました。中止がどうしてもダメなら、せめて選手のことを考えて5月か10月に開催変更ができないんでしょうか? これからの日本がどうなるのか佐藤さんの意見はどうですか?

◆佐藤優の回答

 物事には「これ以上進むと元には戻れなくなる」という臨界点があります。2020年の東京五輪・パラリンピックは、臨界点を超えてしまったので、実施するしかありません。期間を変更することも、もう無理です。

 そもそも私はスポーツ・ナショナリズムが好きではありません。ですから、オリンピックに関しても、興味がまったくありません。テレビも見ません。これは趣味の問題なので、オリンピックが大好きという人の前で私は自分の意見を言わないようにしています。

◆東京オリンピックが行われる2つの理由

 2020年に東京でオリンピック・パラリンピックを行うようになった最大の理由は、2つあります。

 第1の理由は、大義名分がつく公共事業ができるからです。競技場造り、道路拡張、選手村(タワーマンション)などの経済効果は、極めて大きいです。2021年夏くらいまでは、施設の解体やリフォームなどで、オリンピック景気の影響が続くでしょうが、その後は大きな反動がきます。

 第2の理由は、国威発揚です。国家統合の道具としてオリンピックを最大限に活用したのが、ナチス・ドイツのヒトラーでした。1936年のベルリン・オリンピックは「民族の祭典」と呼ばれました。その背景について山本秀行氏はこう記しています。

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 ナチスは、人びとを、政治へ、街頭へ、パレードや大衆式典へ動員することに努力をかたむけた。しかし、こうしたやりかたに、国民はすぐ飽きてしまった。人びとは、政治やナチズムから逃れて、気のおけない私的空間や、非政治的な領域への逃げ込みをはかった。ナチスのほうも、国民を引きつけておくために、もっとソフトな、非政治的な宣伝をこころがけるようになった。

 歓喜力行団が国民の人気を集めたのも、他のナチ組織と違って、その活動への参加が、原則として自由意志にもとづくものであったからである。ナチズムに批判的な人びとでも、自由意志と非政治性につられ、歓喜力行団を受け入れてしまっている。逆説的ではあるが、非政治性と政治から自由な空間は、ナチ体制への合意を形成する一つの回路の役割をはたしていたことになる。

(『世界史リブレット49 ナチズムの時代』58頁)。

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 現在の日本でも、権力を握っている人々が考えることは1930年代半ばのドイツ人とそれほど変わりません。オリンピック・パラリンピックは、非政治的な行事と見なされています。しかし、実際には、スポーツという衣にナショナリズムという政治を包んでいます。オリンピックを行ったときの政権は、どれも求心力を強めます。権力者が、非政治的に振る舞えば振る舞うほど、結果的に権力者の基盤が強化されることになります。

 日本国民の多くは、オリンピックに熱中していません。これは日本のナショナリズムの成熟を示す好ましい現象と私は考えます。

★今週の教訓……五輪を行った政権は求心力を強めます

【佐藤優】

’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

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