今年のアカデミー賞を(こっそり)にぎわせた名作はコレだ!

2019/3/6 10:00 Suits-woman.jp

2019年、第91回アカデミー賞授賞式が終わってしまいました――この時期は毎年、そんな虚脱感に襲われます。「きゃ~このドレス素敵、どこの?」「〇×の奥さんって地味だね!」などと言い合ったり、授賞の喜びが伝わるスピーチに心を打たれたり。賞の行方を予想しながら画面に見入って「この映画面白かったな~」と改めて思ったり、スターの素顔を垣間見て感じいったりと、映画に心惹かれる人なら興味は尽きません。そんなアカデミー賞から、ちょっと掘り出しもの的作品とそのおすすめポイントを紹介します!

コンパクトでシンプルになったアカデミー賞受賞式

もう少しアカデミー賞授賞式の話を。司会者不在でスピーチへのツッコミもなし、全体にぐっとコンパクトになってショーアップされた場面が減り、「ちょっと地味かも……」等と思った今回。でも終わってみると、なんだかんだいって存分に堪能しました。

観ました!?『アリー/スター誕生』の「Shallow」をブラッドリー・クーパーとレディー・ガガがデュエットするシーンを!名前を呼ばれてステージに促されたガガは、熱い眼差しをさっそくブラッドリーに向けました。二人はステージに上り、ピアノを挟んで歌い出すも、やがてブラッドリーがガガの隣に来て連弾に。カメラは彼らの表情にぐぐっと寄り、二人だけの世界をつくり出します。目を閉じながら歌声までハンサムなブラッドリーは、カメラマンの意図を完璧に知り尽すかのようにその美しい横顔をピタリと固定。そんな彼へのトキメキがどうにも隠しきれず、同じように目を閉じながらも瞼がぴくぴくと動いてしまうガガ。そういえば最近ガガって婚約破棄したっけ、その理由って……これ!?等といらぬ邪推が頭をもたげるほど、二人のケミストリーは一瞬でそこを映画の1シーンのようなホットな空間にしました。

紫でキメたファッションも超個性的だったスパイク・リー監督が『ブラック・クランズマン』で脚色賞をとり、プレゼンターで長身のサミュエル・L・ジャクソンにジャンプして抱きついたこと。その後のスピーチで来年のアメリカ大統領選挙に触れ、自身の監督作を絡めて「レッツ、『ドゥ・ザ・ライト・シング』!」と雄叫びを上げたこと。監督賞他を受賞した『ROMA/ローマ』のアルフォンソ・キュアロンは、おめめがくりくりのお人形みたいだったこと。作品賞を『グリーンブック』が受賞したときにピーター・ファレリー監督が手放しで喜ぶさま、作品の関係者が大勢ステージに上がったとき、主演なのに控えめに端っこにいて密かに喜ぶヴィゴ・モーテンセンに萌えたこと。ああやっぱりアカデミー賞受賞式って楽しい。もはや来年が待ち遠しい……、そんな気になります。

洗練のモノクロ映像に酔う――『COLD WAR あの歌、2つの心』

本題に戻って、監督賞・撮影賞・外国語映画賞にノミネートされながらいずれも受賞は逃してしまったポーランド映画『COLD WAR あの歌、2つの心』について。始まりは1949年、ポーランドの田舎町。民族合唱舞踏団「マズレク舞踏団」の養成所で出会った音楽家のヴィクトルと歌の才能に恵まれたズーラの、長くてどうにもならない愛の物語です。

この映画は、ものすごく美しい。まずはギリギリまで洗練されたモノクロの映像。ピタリと計算された構図ときっぱりした白と黒の濃淡が描き出す映像にほれぼれし、そこに浮かぶ俳優たちの細かな表情の揺らめきに見入ります。ドキュメンタリー出身のパヴェウ・パヴリコフスキ 監督は説明を排し、ズーラの歌う『Two Hearts』を気怠いジャズ、マンボ、ロックンロールとアレンジして繰り返し登場させて画面のムードを決定づけるのです。

冷戦下、ポーランド、鉄のカーテンに隔てられたベルリン、ユーゴスラビア、パリと舞台を移し、時を経てくっついたり離れたりするヴィクトルとズーラ。監督は自身の両親をモデルに、美術品のように美しいラブストーリーを仕上げました。ズーラを演じたヨアンナ・クーリグの、女優としての底力も衝撃的。

『COLD WAR あの歌、2つの心』
(配給:キノフィルムズ)●監督:パヴェウ・パヴリコフスキ ●出演:ヨアンナ・クーリグ、トマシュ・コット、アガタ・クレシャ、ボリス・シィツ、ジャンヌ・バリバール、セドリック・カーン ●6月28日~ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷他全国ロードショー

画面の質を底上げするヘアメイク&衣裳――『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』

『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』は16世紀の英国を舞台にした歴史劇。ヒロインはスコットランド女王のメアリー・スチュアートと、隣国イングランドの女王エリザベス1世です。恋愛も結婚も出産も経験した若く美しいメアリーと、そんな彼女に複雑な思いを抱く「処女王」と呼ばれたエリザベス。従姉妹同士でもある孤独な女王は宮廷内の陰謀ドロドロに巻き込まれ、それぞれの運命に翻弄されていきます。

衣裳デザイン賞、メイクアップ&スタイリング賞にノミネートされたことでもわかる通り、その衣裳やメイクは見ものです。歴史の教科書で観た肖像画そのもののようでありながら、その造形の面白さは作品と呼べそうなレベルなのです。

高潔でいてかわいらしく、生々しさがありながら内に激しさを秘める、そんなメアリー・スチュアートを『レディ・バード』のシアーシャ・ローナンが演じます。対するエリザベス1世を演じるのは『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』のマーゴット・ロビー。映画の後半、人形のような白塗りの顔でくりくりの赤毛を複雑に束ねた髪のエリザベスを演じるマーゴット、美しく映りたいとかじゃない!みたいな。この人の女優としての気合いは相変わらずMAXです。

『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(c)2018 FOCUS FEATURES LLC. All Rights Reserved.

『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』
(配給:ビターズ・エンド、パルコ)●監督:ジョージー・ルーク ●脚本:ボー・ウィリモン ●出演:シアーシャ・ローナン、マーゴット・ロビー、ジャック・ロウデン、ジョー・アルウィン ●3月15日~TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー

 

まさかのアニメ化――『スパイダーマン:スパイダーバース』

『スパイダーマン』がアニメーションになる? でもな~、散々かっちょいい実写映画を観てきたし……と腰が引き気味のアナタにこそ観て欲しい『スパイダーマン:スパイダーバース』。物語はスパイダーマンこと、ピーター・パーカーの死に始まります。それでこの映画の主人公は13歳のマイルス・モラレスは半分プエルトルコ人で半分アフリカ系アメリカ人の少年という、入り口からもうヒネリが効いています。さらに練り上げられた脚本、アメコミらしいポップな世界観をアニメーションならではの躍動感ある映像にし、街中の落書きに「バンクシーじゃね?」みたいにつぶやく小ネタを散りばめる。もちろん青春映画の要素もキチンと入っていて、「自分の力を信じて飛ぶんだ!」と背中を押されたマイルスの、初めての跳躍にじーん。

や、やるな……。『未来のミライ』を押しのけて堂々の長編アニメーション賞受賞。

『スパイダーマン:スパイダーバース』

『スパイダーマン:スパイダーバース』
(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)●監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン ●脚本:フィル・ロード、ロドニー・ロスマン ●3月8日~TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー

ノミネートに外れちゃったけど――アイスランド代表『たちあがる女』

外国語映画賞で、残念ながら5本のノミネートにはもれてしまったアイスランド代表作『たちあがる女』。雄大な自然の残るアイスランドの田舎町に暮らし、合唱団の講師を務めるごくフツーの中年女性に見えるハットラ。でも彼女にはもう一つの顔が。謎の環境活動家、コードネーム「山女」として自然を守るため、地元のアルミニウム工場に孤独な戦いを挑んていた……。

監督デビュー作である『馬々と人間たち』に続いて本当の意味で予測できない、それでいてアイスランドという自身の根っこに揺るぎなく立っていないと生まれない物語を、映画の定型を徹底して外した演出で描く、クスっと笑える映画。

たとえば劇伴の奏者が、あちこちでそのままハットラと画面上で共存している!このみょ~な味わいが癖になったのか、あのジョディ・フォスター監督&主演でハリウッドリメイクも決定。

『たちあがる女』(c)2018-Slot Machine-Gulldrengurinn-Solar Media Entertainment-Ukrainian State Film Agency-Köggull Filmworks-Vintage Pictures

『たちあがる女』
(配給:トランスフォーマー)●監督・脚本:ベネディクト・エルリングソン ●出演:ハルドラ・ゲイルハルズドッティル、ヨハン・シグルズアルソン ●3月9日~YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー

 

文・浅見祥子

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