【映画レビュー】アカデミー賞作品賞も納得!笑って泣けて考えさせる名作『グリーンブック』

2019/2/27 18:30 海外ドラマNAVI

第91回アカデミー賞で作品賞・助演男優賞・脚本賞の3冠に輝いた、実話を元にした映画『グリーンブック』が3月1日(金)より公開となる。有力候補だった『ROMA/ローマ』を押さえての作品賞受賞を意外に見る向きもあるようだが、間違いなく作品賞にふさわしい作品である。

舞台は1962年のアメリカ。ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒を務めるイタリア系アメリカ人のトニー・リップは、ホワイトハウスでも演奏したことのある天才ピアニスト、ドン・シャーリー(ドク)に雇われる。仕事は、アフリカ系アメリカ人のドクが南部で行う演奏ツアーに運転手として同行すること。生まれも性格もまったく異なる二人が約2ヵ月間のロードトリップを通して互いを知り、違いを受け入れていくというストーリーだ。

1962年というと、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの有名な演説「I Have a Dream」が行われたワシントン大行進(1963年)の1年前。アフリカ系アメリカ人の公民権運動が徐々に広まっていた時期で、南部は特に人種差別が色濃かった。そんな状況を変えるべくツアーを慣行したドクだが、演奏を南部の白人から称賛されてもトイレは家のでなく屋外にある黒人用を使うように言われたり、車に乗っているだけで職務質問されたりと、様々な差別を体験する。

黒人に対して偏見を持つ家族に囲まれて育ったトニー自身、もともとは黒人蔑視の傾向にあったが、ドクの演奏を聴き、その人となりを知るうちに打ち解けていく。ガサツで無学なトニーはドクから愛妻への手紙の書き方や世界を変えるための勇気を教わり、多少世間ズレしているドクはトニーを通じてフライドチキンの美味しさや裏社会での生き抜き方を学んでいく。

なおタイトルの「グリーンブック」とは、1930年代から1960年代にかけてヴィクター・ヒューゴ・グリーンにより出版されていた黒人用の旅行ガイドブックのこと。差別が色濃かった時代に黒人が利用できる宿やレストランを紹介した本だ。当初はこのガイドブックを参照していたトニーだが、最終的には従うことを止める。

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トニーを演じるのは、『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役で知られるヴィゴ・モーテンセン。ドクに扮するのは、『4400 未知からの生還者』や『ハウス・オブ・カード 野望の階段』でドラマファンにはおなじみであり、『ムーンライト』に続いて2度目のアカデミー賞助演男優賞を手にしたマハーシャラ・アリだ。この作品は、まず何よりも彼ら二人の演技が素晴らしい。本編の大部分は彼らのシーンで構成されているが、例えばフライドチキンをそろって食べる(本作の名シーンの一つ!)場面も、本来なら他愛もないやり取りだが、二人の演技のおかげで非常に生き生きした笑えるシーンとなっている。ヴィゴ自身、「脚本に書かれていた時よりさらに面白いものになった。マハーシャラとの化学反応のおかげだろうね。彼と一緒に演技をしてある種のリズムが生まれ、互いの演技に刺激されたんだ」と話している。このツアーをきっかけに生まれたトニーとドクとの友情は、彼らが立て続けに亡くなる2013年までの約50年間続いた。そんな実在の二人に扮したヴィゴとマハーシャラは、互いに敬意を抱いた、人間味あふれる温かいキャラクターを作り上げている。

監督・製作・共同脚本はピーター・ファレリー(いつも組んでいる弟のボビーは、今回は家庭の事情で不参加)。全世界での興行成績が3億ドルを超える映画『メリーに首ったけ』をはじめとしたコメディ作品で知られる彼にとって、本作は初のドラマジャンルとなる。ファレリー作品と聞くとマット・デイモンとグレッグ・キニアがシャム双生児を演じるなど際どいギャグの印象が強いかもしれないが、作品の根底にあるもの、人と人との繋がりを笑いと温かさをもって描くところは同じだ。

本作が愛にあふれた作品となった理由は、共同脚本家としてトニーの実の息子、ニック・バレロンガがいることも一因だろう。彼は長年この話を映画化したいと考えており、父とともにドクの家に遊びに行った時の記憶や、彼ら二人から聞いた話、父親がツアー中に母親へ送った60通以上の手紙などを参考にしたという。そのほかにも、バレロンガ家を取り巻く人々の多くが本物の親戚やトニーの友人によって演じられたりと、リアリズムあふれる趣向が凝らされている。

様々な面で異なる者同士が相手について知ることで互いの違いを受け入れていく、という普遍的であるとともに今の世界だからこそいっそう大事なテーマについて考えさせながらも、ファレリー作品らしく堅苦しくなく楽しめる『グリーンブック』。ドクが奏でる音楽、そして笑いと人の絆という"世界の共通言語"で綴られた本作は、ヴィゴが言うように「観終わった後、きっともう一度観たくなる作品」だ。

『グリーンブック』は3月1日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー。(海外ドラマNAVI)

Photo:『グリーンブック』
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