超話題「THE GUILTY/ギルティ」映画の形のほぼ拉致監禁、ヒリつくミニマルサスペンス

2019/2/26 09:45 エキレビ!

エキレビ! エキレビ!

ここまで少ない要素だけで、こんなにヒリヒリするような緊迫した映画が撮れるのか……と、いたく感心した。『THE GUILTY/ギルティ』は「警察の通報オペレーターが電話口だけで事件に立ち向かう」という、珍しいタイプのサスペンス映画である。

90分間、おっさんの電話を見守るだけ! でもそれが面白い……


非常にストイック、かつミニマルな映画だ。主人公はデンマーク警察緊急通報指令室のオペレーターを務める警察官で、画面に映る主要登場人物は事実上彼だけ。言ってしまえば、「おっさんが一人で電話してるだけ」な画面を90分近く見せられるという、ちょっとそれ本当に大丈夫かという作品である。が、これがすこぶる面白い。

アスガー・ホルムは、訳あって緊急通報指令室のオペレーターに甘んじている警官である。緊急事態に陥った市民から電話がかかってくるので、それに応じて現場に警官や緊急車両を送り込む手配をするのが仕事だ。だが、実際には酔っ払いのいたずら電話レベルの通報が来たり、ちょっと怪我をしたから救急車を手配しろという迷惑な電話がかかってきたりと、仕事の内容は退屈極まるものだった。いわゆる閑職である。

そんなアスガーが、ある日一本の通報を受ける。電話の主はイーベンと名乗る女性。声の後ろからは自動車の走行音が聞こえる。子供に電話するふりをして通報してきたイーベンは、自らが男に刃物を突きつけられて誘拐され、車に乗せられて高速道路を移動中であることを告げる。なんとか車種と車の色を聞き出したアスガーは管区の警察に情報を報告。さらに通報してきた携帯の番号とイーベンという名前から、彼女の自宅にも連絡をかけ、なんとか事件の輪郭を辿ろうとし始める。

電話の音声をキーにした、会話劇メインの映画……ということになると、ハル・ベリーが出演していた『ザ・コール』や、トム・ハーディの『オン・ザ・ハイウェイ』などが思い浮かぶ。が、『ギルティ』はさらにストイックで神経質な作品である。なんせ本当にアスガーが指令室から一歩も出ない。マジで出ない。最初から最後までずっと電話してるだけ。

なんせアスガーは現場に出られない。彼の仕事はあくまでオペレーターだし、通報の電話はオペレーター個人と紐づけられているので、いつイーベンから電話がかかってくるかわからない状況で指令室を出ることはできない。なのでアスガーの取れる手段は電話だけである。彼は各管区の警察の指揮所やイーベンの自宅、さらにかつての同僚のコネも使い倒して、なんとか状況を知り解決の糸口を探ろうとする。

当然観客もアスガーと同じ境遇に置かれる。カメラが指令室から出ないということは、観客も出られないということだ。深刻な事件が起こっているのに、おれたちはずっと電話をしているおっさんを見ていることしかできない……。これはもう映画の形をした拉致監禁である。ということで、観客は90分の間、狭い指令室に閉じ込められたまま誘拐事件の行く末を見守ることを要求される。電話口の会話劇を見ているだけなのに凄まじい緊迫感が漂っているのは、見ているこっちも監禁されているからである。

暗闇へ追い込まれるオペレーターのおっさん、迫真の演技!


再三書いているようにアスガーも観客も指令室から出られない『ギルティ』だが、それでもアスガーは部屋の中を移動する。最初は同僚の隣の普通の机で電話をし、事態がのっぴきならないものになってからは使っていないオペレータールームへ電気もつけずに一人引きこもり、さらにはブラインドまで閉めてどんどん事件そのものに閉じこもっていく。

『ギルティ』では、事件の推移とアスガーの心の動きに合わせて、部屋の中の明るさや照明の状態が激しく変化する。だいたい、アスガーはただのオペレーターではないことは「記者から私用の携帯にかかってくる電話」「さりげなく映る左手薬指の指輪」「パトカーを手配した際のかつての上司との会話」などで、最初の方にさらっと示されている。その前フリがあった上で、この映画は部屋の電気は消すはブラインドは降ろすわと、あの手この手でアスガーは暗闇に追い込まれていく。

ほぼ一人芝居、それもほとんど会話と顔芸のみという状態で90分間画面を保たせたヤコブ・セーダーグレンの演技も素晴らしい。ただのオペレーターのおっさんから、時間を追ってどんどん重層的な人物像へと見え方が変化していく……というのは、相当に神経を使わなくては表現できない過程だったと思う。

もうひとつ言うと、『ギルティ』というタイトルにも「なるほどな……」という納得感があった。そもそも原題の『den skyldige』が「有罪」や「罪の意識を抱えた人」というような意味合いだそうで、英題も『The Guilty』ということでそのまんま。でも「警察の電話オペレーターしか出てこない会話劇でなぜそのタイトル……?」と、見る前はおれも思っていた。ご安心ください、そのへんは割ときっちり「なるほど……」と思わされるので……。

というわけで、ネタバレを避けつつさっさと映画館に行ってほしい一本なので、この原稿はここまでとする。「こんなにミニマムな要素でこんなに緊迫した映画が撮れるのか……」という驚きを味わっていただきたい一心である。
(しげる)

【作品データ】
「THE GUILTY/ギルティ」公式サイト
監督 グスタフ・モーラー
出演 ヤコブ・セーダーグレン イェシカ・ディナウエ ヨハン・オルセン オマール・シャガウィー ほか
2月22日より公開

STORY
デンマーク警察の緊急通報指令室オペレーター、アスガー・ホルムは、「誘拐され、車で高速道路を移動させられている」という女性からの通報を受ける。管区の警察署に捜査の連絡を入れたアスガーだったが、通信の履歴を元に電話のみで自ら事件の調査を始める

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