みなとヨコハマに巨大な氷の崖が出現! 日本初開催「アイスクロス・ダウンヒル世界大会」の裏側

2018/12/7 17:40 日刊SPA!

みなとヨコハマに巨大なコースが出現 みなとヨコハマに巨大なコースが出現

 まるで映画のセットのような景観だ。全長350m、高低差22mの壮大な氷のレーストラック。白い蛇のようにうねる巨大コースを見渡すと、普段あるビーチ沿いの臨海パークも、このための舞台だったかと思わされるほど。

 眼の前に広がる海には、横浜のぷかり桟橋の近くをマリンルージュ号が優雅に進み、ベイブリッジが瞬く。アイスクロス・ダウンヒル世界大会の「ATSXレッドブル・クラッシュドアイス・ワールドチャンピオンシップ」は、初開催の日本でも“いつもの”異空間をつくりだした。

 昨季は、アメリカでも最大規模を誇るセントポール大聖堂や、フランスはマルセイユの歴史地区とも融合。2010年から同大会に出場を続ける第一人者の山本純子は、初出場の時、タクシーの窓にいきなり現れた「街に浮かぶ巨大コース」に興奮を隠しきれなかったという。

◆「過去最高のコース」「楽しい!」、世界トップ選手も太鼓判

 スタートのドロップは氷壁の迫力。およそビル6階分もの高さから、飛び込むように選手たちが滑り出したかと思うと、アップダウンに氷のしぶきをあげながらジャンプしたり、急カーブでターンを決めたり。4人同時に滑るレースでは、選手たちが激しくぶつかり合い、転倒するごとにフェンスに痛々しい衝突音が響く。巨大コースは頑丈でなければならない。

 この特設コースを設営するのは、レッドブルの専門チーム。責任者のマーク・ヴァン・デル・スラウスさんをはじめチームの専門家が集結し、世界各国で歴史的建造物と氷のレーストラックを“融合”させてきた。その国ごとにレギュレーションが異なるため、土台となる足場づくりなど、基礎工事は現地の施工業者が担うなど、各国の専門家やスタッフとのコラボレーションも不可欠だ。

 英語、ドイツ語、オランダ語に堪能なスラウスさんは、各国のチームと連携を取りながら「最も大切なことは安全性」と昼夜問わず、トラックの状態を24時間体制で整えていく。

 土台が出来上がると、約1週間をかけて氷を張っていく。特殊冷却装置を敷いて少しずつ表面を凍らせ、最終的に10~12センチの厚さに仕上げるのだ。日本では現地日本人スタッフの勤勉さも手伝って、驚くほど作業は順調に進んだという。

◆12月に気温25度、そして雨、コース整備は大変!

 ところが、横浜大会の3日前、いきなり12月にして記録的夏日を記録。日中の気温が25度に達し、さらには雨が降り注いだ。

 急ピッチで修復作業が行われた。さらに大会での不測の事態に備え、滑走順を決めるタイムトライアルも予選前夜に繰り上げに。総勢150人近くの男子、女子、ジュニアの代表選手が次々と試走し、タイムトライアルに挑んだ。最高時速80km/hにも及ぶ猛スピードで選手たちが滑っていく夜は、日付が変わった後も続いたが、その合間にも専門スタッフによるメンテナンスが続いた。

 2013年大会覇者で経験豊かなデレク・ウェッジ(スイス)は、「今回は天候の問題があったから、氷の状態が柔らかくなってるんじゃないかと心配だったけれど、しっかりと硬度があって、滑りやすかった。それに、このコースも、これまででベストのうちの一つだ」と感触を語る。

◆「仕事がていねいで堅実」。日本人の仕事ぶりにレッドブル脱帽

 昨季のマルセイユ大会は、大会史上初の温暖な地域での開催だった。さらには、選手からの声を受け、大会直前にコースの傾斜を急きょ変更するなどの対応に追われた。その時は特殊なプラスチック板グライスを当てて、傾斜のトランジションを改善している。

「あのマルセイユでも気温は10度台だったのが、横浜で25度になって、雨にも見舞われるとはね。でも、今までの経験が生きた。100パーセントすべて氷のトラックだし、いい状態と思う」とスラウスさんは手応えを語る。

 他にも関係者から話を聞くと、あちこちから評判が聞かれたのが、日本チームの仕事の堅実ぶりについて。「これまでも安全を考慮してつくられているが、比べ物にならない“安心”を感じさせる」「ひとつひとつの作業がきめ細やか」とレッドブルの関係者が感嘆するのだ。

 巨大トラックには、両サイドに足場がつくられているが、確かにどこを歩いても安心感を覚える。筆者は昨季、全4大会を取材しているが、実際に同じようにつくられた足場は、少なからず“不安”を覚えた。海外のそれは風での揺れが大きく、足場の木も半日でボロボロになっていたり、斜めについていたり、階段が足りなかったり…。最も高所を移動したのは、カナダのエドモントン大会だったが、そこはかとない命の危険を感じ、「もう二度と通るまい」と決意しながら渡りきったことは記憶に新しい。

 ここ日本大会での現地日本スタッフには、語学の堪能な日本人女性も活躍している。「デザインが斬新で、経験のないスケールの施工でしたが、一つ一つの作業はこれまでの技術でできることでしたので、楽しく新しいことに挑むことができました」と、イーストクルーの今井さんは明かす。

 崖のような高所から一気に滑り降りるライダーたち。アップダウンも激しく、急カーブも次々と現れる。数えきれないほど上下左右に激しい衝撃を受ける真っ白な氷のコースは、裏方の献身が支える。近い将来、冬季オリンピック種目を目指す同競技のレベルはさらに高まっているうえ、ホスト国として、今回は日本人選手の参加も過去最多だ。非日常のような空間と超人的な選手のパフォーマンスをぜひとも目撃してほしい!

取材・文・撮影/松山ようこ

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