「ブラックリベンジ」最終話。25年越しの復讐劇はスクープ報道の構造と合致している

2017/12/8 10:22 エキレビ!

読売テレビ・日本テレビ系 木曜ドラマF「ブラックリベンジ」オリジナル・サウンドトラック/Anchor Records 読売テレビ・日本テレビ系 木曜ドラマF「ブラックリベンジ」オリジナル・サウンドトラック/Anchor Records

昨晩(12月7日)の放送でついに最終回を迎えた(日本テレビ系)。先週放送の第9話で、カウンセラーの糸賀朱里(鈴木砂羽)が主人公の今宮沙織(木村多江)へ25年越しの恨みを抱えていることが判明した。

沙織による復讐ロードの最中、多くの人が“社会的な死”に追いやられ、はたまた実際に絶命してしまった。残るは、沙織と朱里だけ。最終回は、ほぼこの2人のやり取りのみで進んでいった。

誰にも言えない仲を周囲に晒し、炎上の種を撒いていた沙織


朱里が残したメモには「私のこと思い出した?」、「思い出せなかったら悠斗君を殺します 25年前、あなたがそうしたように」と書いてあった。

25年前といえば、沙織は中学生である。当時のことを思い出そうとする沙織。頭に流れるのは、松任谷由実の楽曲「真夏の夜の夢」だ。その歌詞は、実は当時の朱里の感情が図らずも色濃く言い表されている。ちなみに、同曲は1993年放送のテレビドラマ『誰にも言えない』(TBS系)の主題歌である。

沙織は、同級生・北里玲奈が飛び降り自殺したことを思い出す。そして、玲奈と入山灯里が仲が良かったことも。だが、「糸賀朱里」と改名した朱里が灯里と同一人物であることは知る由もない。
当時の記憶を頼りに教材準備室へたどり着くと、そこには朱里がいた。

沙織 あの時、この教室にいたのは……朱里さんだったの?
朱里 正解。

しかし、朱里が残したメモ書きについて沙織には身に覚えがない。

朱里 あなたが大切な人を奪ったからよ。玲奈は、あなたが殺した。
沙織 私が? 何言ってるんですか。北里玲奈は自分で屋上から飛び降りて……
朱里 (遮って)あなたが殺した!

25年前、朱里と玲奈がこの教室でキスをしている場面を沙織は目撃していた。そして、そのことをクラスメートにバラしてしまっていたのだ。

沙織 待って。私はただ友だちに話しただけで……
朱里 (遮って)そう! その一言が噂を広め、よってたかって私たちを孤立させた。私たちを笑い者にした! クラスじゅうの人間が薄ら笑いを浮かべながら、好奇に満ちた眼差しで私たちを見てきた。どんな暴力よりも耐え難い、無言の暴力。

これって、週刊誌報道でプライバシーを世間に晒され、それを機に苦しむ事になる著名人の苦しみと一緒だ。朱里からすると、沙織に記者まがいの行いをされたことになる。
そして、耐えられなくなった玲奈は飛び降り自殺した。

しかし、沙織にとっては納得がいかない。「そんな理由で!?」と朱里を問い詰めにいく。SNS上でも「朱里が恨みに思う理由が弱い」なる声が散見されたが、そんな事はない。“やった側”にとっては些細な記憶かもしれないが、“やられた側”からすると耐え難きトラウマ。よくある話だけに、筆者にも朱里の気持ちはよく理解できる。

「(玲奈は)それだけの存在だった。私の全てだった。あなたが結婚したことを知って誰よりも喜んだのは私だった。ようやく、復讐する時が来たんだから!」(朱里)
沙織に“最愛の人”が現れた時、「私たちと同じ苦しみ与え、地獄に叩き落す!」と朱里は誓った。

25年越しの復讐劇はスクープ報道の構造を表している


沙織の妹・石山綾子(中村映里子)の紹介で朱里のカウンセリングを受けるようになった寺田圭吾(高橋光臣)。彼は朱里の仕組んだ計画で苦しみ、そこから逃れるために朱里に苦しみを打ち明けていた。

そして、遂に死を決心する圭吾。そんな彼に朱里は語りかけた。
「死は終わりなんかじゃない。新しい再生よ。2人はきっと再会できる。その時には、全てのわだかまりは消えている」
朱里から死を囃し立てられた圭吾は、遂に飛び降り自殺をしてしまう。こうして、沙織は中学時代の朱里と同様の目に遭った。“最愛の人”が好奇の目に晒され、それを苦にいなくなってしまったのだ。

沙織にとっては、身に覚えのないような復讐劇。しかし、炎上の種は当人の知らないところで撒かれている。それが後に大ごととなって襲いかかる。暗にスクープ報道の怖さを、この構造は表している。

プライバシーを拡散した沙織に「週刊星流」への参加を促した朱里


復讐に囚われた者は、決して幸せになれない。第9話で「週刊星流」元編集長・福島勲(佐藤二朗)がビルから飛び降りた後、沙織は自分の手が血塗れになる幻覚を見ている。
それは、朱里も同様。圭吾が自殺した後、彼女は自分の手と顔が血まみれになる幻覚を見てしまった。

圭吾を自殺させ、沙織に自分と同じ苦しみを味合わせたはずなのに、苦しみが増幅するばかりの朱里。そこで、彼女は沙織の様子を見に行くことにした。
「あなたはもう、地獄から抜け出していた! 許せなかった……」(朱里)
いや、この時の沙織はどう見ても地獄から抜け出していなそうな様子。髪は真っ白で、表情は虚ろ。一人で歩くこともできず、感情をどこかへ置いてきたような状態。しかし、そんなことさえもわからない朱里。彼女も完全に狂い始めていた。

そして、朱里は思いつく。
「私は今も、自分がさいなまれている“復讐する苦しみ”をあなたにも与えたいと思った」
沙織は朱里が誘導する通りに星流の編集部へ入り、復讐の道を突き進むこととなる。朱里と北里玲奈のプライバシーを拡散した沙織だからこそ、ゲス報道を身上とする「週刊星流」への参加を促したのだ。

「あなたに復讐させることが、私の復讐だったのよ!」(朱里)
恨みを根に持ちながら生きていく人間は不幸だ。復讐が復讐を生む“復讐の連鎖”にはまってしまうと、決して幸せは訪れない。それを知り尽くしているからこそ、朱里は沙織に復讐の道を歩かせた。

事の真相を知った沙織は、涙を流しながら朱里に質問する。
沙織 私に復讐する時、どんな気分だったの? 心を殺意に支配され、相手をなじりいたぶり、踏みにじるところを思い描いて生きる日々はどんなだった? 毎夜、悪夢にうなされたでしょう? 鏡に映る自分の歪んだ顔に戦慄したでしょう!? 達成したときには、得も知れぬ快感を感じたでしょう!? ねえ、あなたも同じ思いだったのよね?
朱里 同じよ。あなたも私も、同じ思い。他の誰より、あなたは私のことがわかるはず。だから、寺田圭吾の復讐を繰り返した。

同じ復讐の思いと苦しみを抱えた沙織と朱里。“復讐する側”と“復讐される側”の対峙にもかかわらず、お互いをわかり合う理解者同士になっていた。

復讐に囚われた者に、決して幸せは訪れない


“復讐の連鎖”を断ち切るため、2人で校舎の屋上から飛び降りることを提案した沙織。しかし、朱里は拒否する。
「死ねないよ。あなたは死ねない。死なせない! そのために妹を殺したんだから」(朱里)

この時、朱里は綾子の息子・悠斗の存在を沙織に思い出させる。悠斗は、沙織の夫と妹が不倫して生まれた子どもだ。
「きっと成長すればするほど2人の面影を色濃く反映させ、否が応でも2人の裏切りを何度も思い出すことになる。そして、自分の両親が死んだのはあなたのせいだと知る時も。夫と妹との“裏切りの結晶”と共に生きていかなければならない地獄。それが、私と玲奈を引き裂いたあなたに与える最後の罰!」(朱里)
そういえば第8話にて、沙織が「ここ(クリニック)に来るのも最後になるかもしれません」と口にした時、朱里は「全てが終わったらもう一度ここに来なさい。私があなたに新しい生きがいを与えてあげるから」と告げていた。この「新しい生きがい」とは、悠斗のことだったのか。

そして「ようやくこれで抜け出せる。玲奈の元に行ける」と、安堵の表情を見せる朱里。
圭吾が死を覚悟した際、「死は終わりなんかじゃない。新しい再生よ。2人はきっと再会できる」という言葉をかけていた朱里。これは、まぎれもなく彼女の本音だ。苦しみに終止符を打ち、北里玲奈と再会するために朱里は自殺しようとする。沙織に手を掴まれ一度は制止されたものの、それを振り切って飛び降りた朱里。それほど“復讐の連鎖”に苦しんでいたということか。

後日、星流の元編集部員たちが飲み会を開催。彼らは、それぞれの個性に合った雑誌へ再就職を果たしていた。同じ仕事をしていたはずが、復讐に囚われなかった者は明るい日常を歩くこととなった。沙織と対比すると、むごさを感じるほどだ。

「今も私は、復讐に生かされている」の真意とは?


獄中にいる圭吾の元秘書・高槻裕也(堀井新太)に手紙が届いた。差し出し人の名前は「寺田美幸」。沙織の本名である。「今宮沙織」を名乗らないということは、もう彼女は復讐の道にいないということ?

今、沙織は悠斗を育てる生活を送っている。その表情は、穏やか。彼女は悠斗の手を引きながら、心の中でつぶやいた。
「今も私は、復讐に生かされている」

この台詞、様々な解釈ができるはずだ。
●朱里が復讐を図った流れの中で生まれた悠斗を養うため、死ぬわけにはいかない。
●悠斗を育てるということは、朱里が沙織に与えた“最後の罰”。朱里が計画した復讐の中で沙織は生き続けている。
●成長すると「両親が死んだのは沙織のせいだ」と悠斗は知ることになるはず。自分に復讐してくるであろう子どもを育てている沙織は、いまだ“復讐の連鎖”の中にいる。

そういえば最後、ビルから飛び降りて絶命したと思っていた福島が沙織を隠し撮りしていた。しかし、彼女の穏やかな表情を確認するや、福島はその写真を消去している。
“復讐の連鎖”は、決して断ち切れないものではない。
(寺西ジャジューカ)

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