散歩の達人に「街歩きの楽しみ方」を教えてもらいつつ、東京近郊のおすすめコースを一緒に歩いてみた

2017/12/5 11:31 ネタりかコンテンツ部

歩き慣れた道でも、少し視点を変えてみればさまざまな発見がある。道端に咲く花は季節によって変わるし、味わい深い形をした建物やおかしな看板、ヘンなオブジェに注目してみるのもいいだろう。そうした別視点を持つことで、日常の散歩もより楽しく、味わい深いものになるのではないか。

というわけで今回は、街歩きに独自のこだわりを持つ「散歩の達人」とともに、東京近郊でおすすめの散歩道を歩いてみた。

 

 

ヤスノリさんと行く「雑色駅・六郷水門」妄想さんぽ

 

 

最初にご登場いただく達人は、ジモトぶらぶらマガジン「サンポー」を運営するヤスノリさん。日頃から街歩きをライフワークとし、週2回は知らない街を散歩しているそう。

 

そんなヤスノリさんならではの観察眼、散歩術などを伝授していただきつつ、おすすめのコースを歩いてみることにしよう。

 

 

スタートは、京急電鉄の雑色駅。ここから多摩川を目指して歩くという。

「僕が紹介したいのは、レトロな商店街と多摩川の自然、そして、ラストにめちゃくちゃカッコいい水門を愛でるコースです」とヤスノリさん。これは期待大である。

 

 

まずは大田区一の店舗数を誇る「雑色アーケード」をはじめ、いくつかの商店街を歩く。なるほど、散歩といえば食べ歩き。おすすめのコロッケでもあるのかと思いきや、ヤスノリさんの関心は全く別のところにあった。

 

 

急に立ち止まり、何やら写真に収めているヤスノリさん。レンズの先には……

 

 

大小さまざまな室外機と四角い石。ヤスノリさんはこれに「室外機になりそこねた石」というタイトルを付けていた。なるほど、そういわれると確かに、同期が室外機として独り立ちするなか「何者にもなれなかった石」の悲しみが伝わってくる、ような気がしないでもない。室外機になることが、それほど「誉れなこと」であるかどうかは置いといて。

 

このように、何気ない風景に対して想像力を働かせ、おもしろを見出すのが、ヤスノリ流の散歩術だ。

 

 

たとえば、こういう「短過ぎるガードレール」などは、おもしろハンティングの格好の餌食となる。

 

 

こちらは「スニカー」の文字。表記のクセがすごい。おそらく店主はネイティブの発音にうるさい帰国子女か、もしくは「チューインガム」を「チウインガム」と書く世代のおじいちゃんだろう。全て勝手な妄想に過ぎないが、こういうことを考えるのが楽しい。

 

 

そして、スタートから歩くこと10分、自然豊かな多摩川河川敷に到着。ここいらは南六郷緑地といって、特に自然が豊かなエリア。空気がキレイで気持ちいい。

 

 

こちらが本日のメイン、めちゃくちゃカッコいい水門こと「六郷水門」。確かにカッコいい……。まさに「近代土木遺産」といった堂々たるたたずまいで、ヤスノリさんが「これのプラモデルが欲しい」というのもうなずける。

なお、こちらは昭和6年(1931)に竣工され、下水道が普及するまでの間、生活用水の排水処理や多摩川の逆流を防止してきたのだとか。

 

 

逆光だと要塞っぽくてカッコいい。ツノもかわいい。

 

 

ちなみに、すぐ近くにある「南六郷公園」には、六郷水門をモチーフにしたトイレもあった。建物の下に水路を巡らせるなど再現度は高く、門の部分のツノもしっかり模倣。水門へのリスペクトが感じられる作品だ。

 

六郷水門は特に文化財に指定されているわけではなく、案内の看板などはない。でも、だからこそ、いろいろな背景を好き勝手に想像して楽しむ余地がある。水門として本来の役目を終えてもなお、そのままの形で残されているのは何故なのか? 秘密結社のアジトでもあるのか? 確かに、有事の際にはでかいロボに変形して街を守ってくれそうな頼もしさがある。

 

……ヤスノリさんとの散歩は、想像力がたくましくなる。

 

 

下関マグロさんと行く「新宿・四ツ谷」レトロさんぽ

 

 

続いて散歩コースを紹介してくれるのは、街歩きをライフワークとするライターの下関マグロさん(以下、マグロさん)。『歩考力』などの著書があり、生活情報サイト「All About」では散歩ガイドも務める、まさに散歩の達人である。

 

 

待ち合わせ場所に指定されたのは、東京の超巨大ターミナル・新宿駅。今回は新宿~四ツ谷界隈の、マグロさんとっておきの散歩コースを教えてくださるそう。

東京の中心、大都会に潜むレトロな風景や名所、穴場のスポットを巡るとのことで、これは期待大だ。

 

 

まずは、新宿駅東南口から甲州街道を四ツ谷方面に向かって歩くこと5分。

 

 

最初に訪れたのは「雷電稲荷神社」。こちらには一匹の白狐が源義家の前で頭を三回下げたところ、雷雨が止んだという言い伝えがあるそうなので、われわれも祠に向かって三度のおじぎ。散歩の無事と好天を祈願する。

 

 

なお、このあたり、住所でいうと新宿4丁目の界隈には激安のホテルや旅館が多い。マグロさんによれば、このあたりはかつて労働者たちの簡易宿泊所の街で、その名残でこうした安宿が残っているのだそう。東京でいうと「山谷」が有名だけど、そうか、新宿にもあったのか。

 

 

こちらはなんと、一泊1800円。やっす! これからは、飲み会で終電を逃したときはここに泊まろう。

 

 

続いてやってきたのは「新宿御苑」。って、うーん、御苑かあ……。

 

いや、確かに散歩にはもってこいだろうけど、随分と王道で攻めてきたなあ。今日は穴場を巡るんじゃなかったっけ? そんなことを思いつつ門に向かうと、「そっちじゃないですよ」とマグロさん。

 

 

マグロさん「御苑の敷地内ではなく、その脇にある側道を通りますよ。この通りは無料ですし、歩行者専用だから散歩にはもってこいなんです」

 

おお、これは通っぽい。さすがは達人、信じてましたよ。

 

 

この側道、正式名称は「玉川上水・内藤新宿分水散歩道」。9時から16時30分までのわずかな時間のみ開放されているというレアな道なのである。(月曜日・年末年始は通れません)

 

豊かな緑に包まれ、道端には四季折々の植物が配されている。これからの時期はツワブキやセンリョウなどが見どころなのだとか。

 

 

マグロさん「緑に囲まれているから夏は涼しいし、冬は空気が澄んでいて気持ちいいんです。もう少し寒くなると(撮影日は11月上旬)、この道いっぱいが黄色い絨毯のようになって幻想的な雰囲気に変わりますよ」

 

おお、それはロマンチックだろうなあ。

 

 

側道を抜けると、こちらの「玉川上水水番所跡」にたどり着いた。

 

マグロさん「水番所っていうのは江戸時代に水門を使って水量を調節したり、ごみの除去を行っていた場所のことです。この石碑が建つビルの中には現在『東京都水道局新宿営業所』が入っているんですよ。偶然なのか、狙ったのかは分かりませんが、なんだか運命的でおもしろいですよね」

 

 

マグロさん「また、その隣には『四谷大木戸跡碑』が残っています。大木戸は、江戸に出入りする通行人や荷物を取り締まる関所のこと。昔はこの場所を境に、江戸と郊外とを分けていたということですね」

 

こうした石碑や先ほどの安宿密集地域など、何かしら心にひっかかるものを見つけたら、その都度スマホで調べてみる。すると、街の成り立ちが分かったり、土地にまつわる意外な逸話みたいなものが出てきて楽しい。歩き慣れた道でも、いつもよりちょっと好奇心の感度を上げてみるだけで、散歩はどこまでもおもしろくなるとマグロさんは教えてくれる。

 

 

その後、マグロさんは甲州街道沿いを右に曲がり、閑静な住宅街へと入って行く。

周辺には須賀神社、四谷於岩稲荷田宮神社、永心寺、勝興寺など多くの寺社が残っていた。ちなみに、四谷於岩稲荷田宮神社は『四谷怪談』のお岩さんを祀っている。

 

 

そして、こちらは住宅街の中にあるたい焼き屋『わかば』さん。平日の午前中から行列ができる超人気店だ。どんな街にも、こうした名店が必ず一つはある。ネットの情報に頼らずとも、行列を見つけたらとりあえず並んでみると楽しいかもしれない。

 

 

こちら、なんでも「東京三大たい焼き」の一つに数えられているそう。たい焼き界にもあったんだな、「三大」って。ほかのふたつも気になる。

マグロさん「そう、そうやって興味を持つことが大事です。今度はほかのたい焼き屋にも行ってみようといった具合に、さまざまな好奇心が散歩する理由になって、自分の世界が広がっていきます」

 

 

そして、近くの公園でたい焼きをいただく。写真は、タイを食らうマグロ。……それはさておき、たい焼きは絶品だった。

 

 

そして、ゴールの四ツ谷駅に到着。正直、新宿・四ツ谷の界隈って都心のガヤガヤした雰囲気、ビルだらけの無機質な印象しかなかったが、マグロさんと歩くとじつに味わい深い街に見えた。

 

散歩を楽しむために必要なのは「想像力」と「好奇心」。さらに、一人ではなく誰かと一緒に歩いて別の視点や発想を取り入れるのもポイントかもしれない。そうすれば、たとえ見慣れた風景であっても、視界に入ってくるものや感じ方が、いつもとはまるで違ってくることになるはずだ。

東京にもまだまだ、僕らが気づけていない魅力が潜んでいるに違いない。

 

 

文・取材:小野洋平(やじろべえ)

編集:榎並紀行(やじろべえ)

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