「人工流れ星はエンターテインメント」ALEの宇宙事業はサイエンスとビジネスの両立を目指す 連載:大人の学び 第7回

2017/9/5 18:01 ネタりかコンテンツ部

私たちは、日々何かを企画しながら生きています。

新しいイベント、月末の旅行のプラン、今日の晩御飯のメニューetc……。仕事はもちろん、日常生活の中でも「企画」をする機会は訪れます。だからこそ、企画を特別なものとして距離をおくのではなく、自分の人生をちょっと良い方向に変える手段として捉えてみる。そうすることで、少しずつ変化は起きていくのかもしれません。

 

「自分はこれから何をして生きていきたいか」、「自分はこれからどんな世の中をつくりたいか」。これらをテーマに、コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する講座が「企画でメシを食っていく」(通称・企画メシ)です。

 

各業界の現場の第一線で活躍される方たちをお招きして「企画」の捉え方・考え方について伺っていく企画メシ。こちらの連載では、「大人の学び」をテーマに、自分の人生を企画していくためのヒントをお届けしていきます。

 

今回のテーマ:「宇宙」

 

話し手(写真左):岡島礼奈

在学中に、サイエンスとエンターテインメントの会社を代表取締役として設立。ゲーム、産学連携のサービスなどを立ち上げる。JAXA宇宙オープンラボ採択。卒業後、ゴールドマン・サックス証券戦略投資部にて、債券投資事業、PE業務等に従事。2009年より、新興国ビジネスコンサルティング会社を設立、取締役。2011年9月に株式会社ALE設立。現在、株式会社ALE代表取締役社長。

 

聞き手(写真右):阿部広太郎

1986年生まれ。2008年、電通入社。人事局を経て、コピーライターに。「世の中に一体感をつくる」という信念のもと、言葉を企画し、コピーを書き、人に会い、つなぎ、仕事をつくる。東京コピーライターズクラブ会員。宣伝会議コピーライター養成講座「先輩コース」講師。

世の中に企画する人を増やすべく、2015年より、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」を立ち上げる。初の著書『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』(弘文堂)を出版。

 

※本連載は、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」(通称・企画メシ)における講義内容を、対談形式に再編集したうえで一部内容をネタりかにて補足したものとなります。

企画メシ:http://kikakumeshi.jp/

大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDO:http://bukatsu-do.jp/

 

人工の流れ星をエンターテインメントとして楽しんでほしい

 

阿部:岡島さんがCEOを務める宇宙ベンチャーの株式会社ALE(以下、ALE)では「人工的に流れ星を作る」という取り組みをされているんですよね。2019年には狙った場所と時間に流れ星を流せるというサービスが開始予定で、2020年の東京五輪での式典採用を目指しているとか。

何と言うか、企画のスケールの大きさで言えば、このシリーズの中で間違いなく一番です。

 

岡島:アハハ。まぁ宇宙ですからね。流れ星を人工的に作ろうというアイデア自体は別に珍しいものではないのですが、それをビジネスにしようとしている企業は今のところ他にないと思います。

人工流れ星をエンターテイメントとして楽しんでもらうというビジネスモデルで、空全体をキャンバスに見立て、人工の流れ星で演出をする「Sky Canvas」というプロジェクトを立ち上げています。そこではいろんな企業やクリエーターとコラボできたらな、と。

空を見上げられる場所であれば誰でも参加することができるので、これまでにない全く新しい体験を皆さんに提供できるんじゃないでしょうか。

 

▲2019年予定の人工流れ星のプロジェクト概要:http://shootingstarchallenge.com/

 

阿部:うーん、すごいですね。聞いてるだけでワクワクするような企画です。そんな岡島さんは、やはり小さい頃から星に興味を?

 

岡島:生まれも育ちも鳥取なので、自然と星には興味を持ちました。

だって鳥取って、今年から「星取県」として売り出してるぐらい星が綺麗な県というか、それしかない県というか(笑)。鳥取市も「天の川」が見られるような県庁所在地ですし。

 

▲岡島さんも有識者会議などに参加する「CATCH the STAR 星取県」:https://www.hoshitori.com/

 

阿部:では、小さい頃から星空を見上げて、いろいろ物思いに耽ってみたり?

 

岡島:そうですね。星空を見ながら「何で宇宙ってできたんだろう」とかいろいろ考えてました。10代の頃は特にホーキング博士とアインシュタインが好きでしたね。ブラックホールやワームホールとか、宇宙ができて138億年とか、地球って数ある星の1つで、太陽も実は何億とあって、しかも銀河も何万とあってとか……。

その果てしなさを思いながら「人間って小っちゃいな」とか、「宇宙人も絶対いるんだろうな」とか、そんなこと考えながら星を見るのが大好きな子でしたね。

 

阿部:ということは、星座などもすごく詳しいんですか?

 

岡島:それがわたし、星座って全くわかんなくて。宇宙が好きな人って、星座から入るか理論から入るかのどっちかなんですが、わたしはビッグバンとかそういうのから興味を持って入ったタイプなんです。

 

阿部:いずれにしても知性的というか理系的というか。そういう知識は、やはり天文部などの部活動で身に付けられたのですか?

 

岡島:いや、高校の時は帰宅部で、友達とよく麻雀をやってました。で、麻雀って4人以上でやると待ち時間がけっこうできちゃうんですね。だから、麻雀の待ち時間に宇宙の本とかを読んで得た知識と言えますね。

 

阿部:な、なるほど。

 

岡島:地元は娯楽が少なかったので……。

 

研究者としては無理でも、事業としてなら。紆余曲折のキャリアを経て目指した「宇宙」

阿部:その後、宇宙の勉強がしたくて東京大学へ進学を?

 

岡島:そうですね、宇宙関連では有名な教授が東大にいらっしゃったので。入学後は成績悪くて、専攻では天文学科とか例年だったら絶対入れなかったはずなんですけど、東大史上でも珍しい「天文学科の定員割れ」が起きた年だったみたいで何とか運良く……。

 

阿部:何事も運の要素は大事ですよね。

 

 

岡島:とはいえ周囲はやっぱり頭の良い人ばっかりで、数学オリンピックでメダル獲ったような人がワラワラいるような環境。演習もレベルが高過ぎて何やってるかわからないのに、そういう人たちは笑いながら問題を解いてる。

「これはもう住む世界が違い過ぎる」と人知れず授業中涙を流すこともありましたが、切り替えも早いので、まぁ別の分野で頑張ろうと思いました。

結局わたしは彼らと違って「宇宙が膨張し続けた結果どうなるのか」みたいな話を、データ解析的なことをしながら論じてただけだったので、頭を全然使ってなかったんですよ。だから物理学者や天文学者に憧れは持ちつつも、研究者には向いてないなと悟り、起業とかもやったりしました。

 

阿部:研究者志望から学生起業家へ、というのは面白い転身ですね。何かきっかけはあったんですか?

 

岡島:なろうと思って学生起業家になったわけじゃないんですよ(笑)。普通に家庭教師のアルバイトでもやろうかと思い、友達に仕事の紹介をお願いしたら、「理系ならプログラミングできる?」と聞かれたのが最初のきっかけです。わたしはできないけど、できる友達なら知ってるからその子に仕事を振って……みたいなことを繰り返してるうちに、いつの間にかIT系の団体みたいになって、そこの窓口的存在に。

ちょうどその頃(2000年)っていわゆるITバブルが起きてたので、学生にも仕事がバンバン回ってきた時代だったんですね。ただ、手続き上の問題等で学生の任意団体には仕事を振れないという企業が多く、「仕事頼みたいから法人化してほしい」という要望が強かったんです。それに応じる形で設立された会社だったので、「やるぞ!」という感じで始めたわけでは全くありませんでした。宇宙も全然関係ないですしね。

 

 

阿部:では、宇宙について「事業」として興味を持ったきっかけは?

 

岡島:2001年に「しし座流星群」を見たことですね。皆うわっとなるし、感動するし、「なんて壮大なエンターテイメントなんだ! すげぇ!」と。同時に「これを自分たちで研究し、意図的に作り出せるようにならないかな?」とも思ったんです。そして、そのための資金ってどうやったら集まるんだろう、と。

 

阿部:その段階から既に資金面のことも考慮を?

 

岡島:実は自然科学のような「基礎科学」の研究って公的資金以外に全然お金が流れてこないんですよ。「応用科学」の方は実用的な開発となるのでちゃんと予算が付いて研究できるんですけど、基礎科学はそういうわけにもいかない。でも、イノベーションを起こす時に必要なのは基礎科学の方。半導体もGPSも基礎科学があればこそなんです。

つまり人間の生活にジャンプをもたらしてくれるのが基礎科学であり、その見過ごせないものに対し、公的資金以外でお金が流れるようなモデルを自分で作れないかな、と。最初に言ったように、人工的に流れ星を作ること自体はそこまで珍しいアイデアではありませんでしたし。

 

阿部:研究者と事業家という、両者の目を持つ岡島さんならではの着眼点だったのかもしれません。

 

岡島:ただ、お金がすごくかかるので、わたしもそこから何か具体的に取り組んだわけではありませんでした。大学院を卒業した2008年にはゴールドマン・サックスに就職しましたし。

 

阿部:大手の外資金融に入られたんですね。ただ、これまでの専攻から金融機関の道に進むのは、随分離れたもののようにも感じます。

 

 

岡島:たしかに今わたしが活動している分野でゴールドマン・サックス出身という人は珍しいと思いますが、数字を扱う理系出身者と金融機関って実は相性がいいんですよ。わたしも「お金の流れ」にはとても興味がありましたし。

あと現実的な問題として、博士号まで取得した院卒人材って当時の日本企業からは就活で門前払いを食らっていたので、外資しか入れなかったんです。日本だと博士号は研究職以外では不要な資格扱いですが、海外ではちゃんと評価してくれるので、その辺は有り難かったですね。

 

阿部:なかなか厳しい現実ですよね。ゴールドマン・サックスではどんなお仕事を?

 

岡島:「自己資本投資」というハイリスク・ハイリターンな投資を行う部署で働いていました。不良債権に投資して大きくなった部署で、映画『ハゲタカ』のモデルにもなったそうです。「この会社を潰したらプラスいくら、潰さなかったらマイナスいくら」という数字判断をどれだけ冷静にできるかという、皆がイメージする外資らしい外資の仕事をやっていましたね。

性質的にわたしには不向きだったんですが、仕事自体は楽しくやれてました。ただ、ちょうどリーマンショックが起きた年だったこともあり、部署縮小に伴い約1年での退職となりました。外資は部署毎の採用なので、別の部署に異動とかがないんですよねぇ。

 

阿部:リーマンショックで退職……。かなり波乱万丈なキャリアですね。

 

岡島:それでまぁ1ヶ月ぐらいはゴロゴロしたりゲームしたりしてたんですが、ずっとそれやってても仕方ないから転職しようと思ったんですね。でも当時の転職マーケットは完全に冷え込んでて、書類すら受け取ってもらえないような状態。しかもわたしの場合、1浪で院卒だったので30歳近くで社会人経験が1年しかないというヤバい経歴の持ち主だったんですよ。

だからもう友達と一緒に、新興国のビジネスコンサルみたいなことをやる会社を2009年に起こしました。就職できなかったんで。そして、その頃から会社とは別に、個人で細々と人工の流れ星の開発に向けて動き出したんです。

 

説明、検証、バイト。ALEが加速するまでの長い道のり

 

阿部:ALEは2011年に会社設立となっていますが、それまでの2年間はどんな活動をされていたのですか?

 

岡島:最初はもう本当に細々と。大学の先生に「どうやったら流れ星って作れますかね? いくらかかりますかね?」とか聞いたり資料見せたりするような活動です。それで「実はそれ自分もやろうと思ってた」という人がいたら、一緒にまた別の人のとことか興味を持ってくれそうな企業に行ったりとかしてましたね。

あと2011年設立といっても、最初は週に1日をALEのための日と設定して、それ以外の時間は全部バイトしてるような状況でした。製薬会社の広報とか、NPOで最先端科学を一般の人にわかりやすく伝える仕事とか……まぁいろいろです。ALEに専念できるようになったのは2015年からなので、ほんと最近なんですよ。

 

阿部:それにしても、先ほど教えていただいたように「流れ星を流したい!」というのは宇宙に関わる仕事をする人なら誰でも一度は考えることでありながら、実際に動いていたのは岡島さんだけなんですよね? そこが少し不思議に思えました。

 

岡島:タイミング的なものが大きいと思いますよ。アイデア自体はずっと昔からあっても、その都度費用とかの問題にぶつかっていたはずなので。

2009年頃には、アクセルスペースさんみたいに超小型の人工衛星を作っているベンチャー企業などが世に出てきたこともあり、昔と比べればかなり費用は抑えられるようになっていました。軽く小さくなればなるほど安く飛ばせるので。それに、宇宙事業全体に民営化の流れがどんどん来ていましたし。

 

▲株式会社アクセルスペースのホームページ:https://www.axelspace.com/

 

阿部:たしかに、ある時期から「宇宙ブーム」のようなものが到来していますよね。そういう流れの中で、具体的にALEとしては、どのようなところから事業に取り掛かっていったのでしょうか。

 

岡島:まずは検証からですね。「そもそも人工流れ星って本当にできるの?」「明るく光るの?」というような検証を、大学の先生にお願いし、学生さんの卒業研究テーマとして扱ってもらうところからのスタートです。

やってるうちに協力してくれる先生も増えてきて、実験もできるようになり、2014年にようやくJAXAの設備で「明るく光る」ということが証明されるに至りました。実際の宇宙空間で本当に光るかどうかは最後までわからないんですが、シミュレーション上はできる、というところまでは何とか。

 

阿部:光ることがわかるまでの数年間は、きっと不安でしたよね。ただ、そこで手応えがあったからこそ、翌年にはALEに専念できるようになったのでしょうか。

 

岡島:そうですね。明るく光りそうだということがわかり、研究だけでなくビジネスのメンバーも集まり、資金調達もできたので。その時点でまぁ専念するしかないよな、と。

 

▲ALEのホームページ:http://star-ale.com/

 

阿部:ちなみにALEという社名には、どんな意味やこだわりが込められているんでしょうか?

 

岡島:あぁ、それはですね、全然意味とかこだわりとかなくてですね。単にわたしがエールビールが好きだからというのが理由で……。流れ星見ながら飲めたらいいなぁとか、宇宙事業以外でも例えばオーロラ見ながら飲めたらいいなぁとか……。

ただ、そんな理由だとマーケティングとか宣伝とかしづらいってプランナーの人から怒られてるので、何か近々しれっとそれっぽい理由に変更しようかと……。

 

阿部:な、なるほど。

 

前例がないことを、どれだけ楽しめるか。宇宙相手だからこそ、地球や人間の枠なんかに囚われない発想を

 

阿部:ところで「宇宙」というロマン溢れるテーマに興味を持ってくれる人は多いと思うのですが、実際にビジネスでやろうとしてることがわかった途端に離れてしまうような人も多かったのでしょうか。

 

岡島:そうですね……。今でこそ宇宙事業は各メディアで取り上げられるなど好意的な反応をいただいてるのですが、昔は「面白いね」と言われればマシな方で、完全に「頭のおかしい子」という扱いだったんですよね。だから「この先事業を進めるうえで何が必要になるか」を一緒に考えてくれる人を見つける必要がありました。

ただ、もともと「何とかなるでしょ」という性格の持ち主だったので、何となく知り合いが集まる会などに顔出してるうちに、なんかすごい人と出会え、仲間になってもらってましたね。

 

阿部:そうやって徐々にALEの仲間となってくれる人が増えていく中で、重視している要素というか共通項のようなものはあるのでしょうか?

 

岡島:大切なのは、新しいことに興味を持てるかどうかですね。安定を求めてALEと何かやろうという人はいませんが、まだ見ぬ何かに対し「恐怖を感じる」人と「好奇心を持つ」人とには、やっぱり分かれてしまいます。

ALEがやろうとすることは、基本どこに行っても「前例がない」と言われるんですが、それでも中には「じゃあどうやろうか」と一緒に考えてくれる人はいます。そこを面白がれるかどうかですね。

「何をやろうとしているか」というのをちゃんと説明して、例えばVC(ベンチャーキャピタル)さんならどこと契約していて今どういう数字が出ているか、というのを示してあげると安心はされます。ただ残念なことに、前例がないから、で思考停止してしまう人はけっこういるんですよね。

 

 

阿部:今岡島さんご自身は、ALEではどのような役割を担っているのでしょうか。

 

岡島:ALEという会社は、仕事だけでなく関わる人材も多岐にわたっています。宇宙ベンチャーって普通はテックがメインになるんですが、うちはテックとマーケが半々。あと、霞が関方面と仲良くならないといけない。(笑)

だから、許認可とか手続き関連のお堅いお役所文化と、マーケチームの広告代理店的なノリと、テックチームの専門家的な会話とがすごくダイバーシティー的な感じで混ざり合う中、どうにか皆がいい感じになるようにと動き回っているのが日々のわたしです。

そう思うと、わたしの役割というのは、結局「皆がどうすればより良い環境で仕事をできるか」を考えることになるのかもしれません。できてるかどうかは全然わかんないですけどね。

 

阿部:たしかに、最初にお話いただいた「Sky Canvas」プロジェクトなどは、完全にテックとマーケの発想が融合していればこその企画ですよね。

 

岡島:そうなんですよ。人工流れ星のビジネス化も、最初は流れ星を1粒いくらでお金持ち相手に売ろうと考えていたのですが、「そもそも3000万人が見えるものを1人のお金持ちに売るってどうなの?」という意見がプランナーの人から出てきたんですね。

それで、「例えば落下地点の100キロ圏内で、いろんなイベントを乱立させてコラボ的にどう見えるかを演出していこう」という計画になったんです。流通系の企業と組んでグッズで盛り上げてもいいし、流れ星を見に行くための「流れ星メイク」なんかをメディアで提唱してもいい。とにかくスポンサーも巻き込んで当日の盛り上がりが最高潮になるような取り組みを検討しようと。

この辺の発想は理系のわたしでは絶対思いつかないですし、大学の先生でも無理。やっぱりプランナーってすごいなぁと。

 

▲人工流れ星イベントのイメージ(ALEホームページより引用)

 

阿部:宇宙が専門分野ではない人だからこその発想、とも言えますね。

 

岡島:ALEでは、ディズニーのアイデア発想法としても知られる“ブルースカイ・プロセス(Blue Sky Process)”と呼ばれる考え方を推奨していて。要は、枠とかに囚われず、思いついたことを何でも言い合うことを良しとしてる社風なんですね。実際、先入観のない人がチームに入って出してくれるアイデアや指摘は、いつも新しいものを生み出してくれていると感じます。

 

阿部:ただ、枠に押し込めない自由な発想は常に心掛けたいと思う一方、考えれば考えるほど結局は一定の枠に収まってしまうというジレンマもあると思います。発想を枠に収めないために、岡島さんが日頃から意識しているようなことは何かありますか?

 

岡島:わたし自身は特別に意識しているようなことはないですね。その辺は天文学や宇宙を勉強してきたというのが大きいかなと思います。だって、やっぱり地球って小さいんですよ。長さも宇宙の138億年に対し、人間レベルならたかだか数十年。別の宇宙も存在するかもしれないし。

そう思うと、小っちゃいことを知ること、が大事なんですかね。いかに自分たちの存在を意識しないで外を見るか。そうすれば、地球とか人間とかの枠はたぶん何も意識しなくなると思うので。

 

阿部:そういう考え方もあるんですね。

 

岡島:あと完全に余談ですけど、宇宙のことを考えると基本悩みがなくなるので、おすすめですよ。きっと「こんな小っちゃい生き物が、こんな小っちゃいことに悩んでいても仕方ない」という気持ちになれますから。

 

宇宙人はいる。お互い接触できないほど、宇宙が広いだけ

 

阿部:ところで岡島さんには、宇宙事業という未知の事業に対する不安などはないんですか?

 

岡島:一番不安なのは「できない」ことではなく、「先を越される」ことですね。先を越される不安を考えたら、もう「やるしかない」と思うしかなくなるんですよ。ビジネス的な面だけでいえば大した影響はないかもしれませんが、サイエンスの領域では先を越されると意味がないので……。

一応他の国で同じようなことをやっているという情報は今のところないですけど、原理的には可能な取り組みなので、既にどこかがやってる可能性はあるんです。アメリカやヨーロッパの企業ならVCとかの経由で情報も出てくるんですが、中国とかになると本当にわからないですからね。

ただ、ライバルや先を越されそうな企業が出ること自体は、悔しい反面この業界としてはウェルカムなことでもあるんです。広告宣伝に使う費用とかも、向こうもこちらもアピールするから、ある意味半分で済むようになりますし。

 

阿部:宇宙事業となると、当然ながら海外との絡みが多くなりますよね。

 

岡島:はい。ただ、やっぱり地球は宇宙から見たら1つの星に過ぎない、という発想が根底にあるからなのか、宇宙関連の皆さんって国を問わず基本大らかな人が多いんですよね。(笑)

 

 

岡島:特に宇宙飛行士は人格者ばかりです。この前も「宇宙行ってる時に喧嘩とかするんですか?」って聞いたら、「好きなおかずを最後まで残しておくタイプの人が、別の人に先に食べられちゃった時に喧嘩してたよ」って。

 

阿部:なんだか微笑ましいですね(笑)。そういえば、岡島さん自身は宇宙飛行士になろうとは思わなかったのですか。民間での宇宙旅行への参加なども含め、ご自身による宇宙体験への興味というか。

 

岡島:宇宙飛行士は全然思わなかったです。運動神経悪いから無理だなーと。

宇宙旅行もあんまり興味ないんですよね。だって「今の人間が行ける宇宙」ってせいぜい月までじゃないですか。だから、ワープとか実装されないと行きたくないなーと。いや、月と火星には行きたいんですけどね。イーロン・マスクも2025年には火星に行けるって言ってますし。その時でいいかなぁ程度に。

ただ、いつか太陽系の外には出たいと思ってます。人はいずれ肉体に縛られず、意識だけが飛び交ってる状態になるかもしれないですしね。

 

阿部:意識だけが飛び交う未来……!? ところで宇宙事業に関わる皆さんって、いわゆるUFOや地球外生命体の存在についてはどう考えてるのでしょうか。

 

岡島:天文学をやっている人なら全員「宇宙人はいる」と思ってるはずです。ただ、物理的に接触するのが極めて難しい。時期や技術的な問題など、いろいろなことが重ならないと無理なんです。

NASAが「地球の音」を宇宙に向けて流しているのは、海に手紙を入れたボトルを流すのと一緒なんですよね。キャッチしてもらうこと自体の確率が極めて低いうえに、それに対する返事の受信となるとまぁ不可能じゃないですか。ただし、必ず存在はします。宇宙が広過ぎて、お互い接触ができないだけなんです。

 

自分の役割は社長でも企画者でもない。「これをやりたいんで、助けてください!」と大声で言う人

 

阿部:これまでお話を伺ってきた中で、岡島さんからは「常に自身で自身の道を切り開き続けてきた方」という印象を強く受けました。そんな岡島さんが宇宙事業を進めていく中で、特に影響を受けたという人物がいれば教えてください。

 

岡島:1人が大学の先生ですね。寄付金だけで天文台を作ったという先生がいて、「サイエンスの資金調達に、公的資金以外の道があるんだ」と気付かされました。あれが宇宙を事業にしようと発想できた直接のきっかけだと思います。

もう1人がゴールドマン・サックス時代の上司です。ALEをやるにあたって「小さな成功はいらないから」と言って出資までしてくれました。今も「大成功するか、さもなくば潔く散れ」というのを自分の中の指針とし、考えが小さくまとまってしまってないかどうかを常に意識するようにしています。

 

阿部:ものすごく背中を押されますし、目の前の企画に思い切り取り組もうという勇気が湧いてきますね。では最後に質問なのですが、岡島さんにとって「企画する」とはどういうことでしょうか。

 

岡島:そうですね。わたし自身は「企画する」という意識はなく、「わたしはこれがやりたいんだ」ということをやってるだけだと思っています。わたしがやりたいことというのは、つまりサイエンスとビジネスの両立なんですが、「それを皆がどう楽しむか」というのはまた別の皆がやってくれています。だから、自分が企画者だというつもりは全くありませんね。

役割で言えば、「『これをやりたいんで、助けてください!』と大声で言う人」でしょうか。わたし本当に自分では何もできなくて、一応社長なんですけど、社長って普通カリスマとかリーダーシップとかあると思うんですけど、そういうところが何もなくて。

研究者としても経営者としてもそうですが、1つのことを突き詰めることができないタイプなんでしょうね。じゃあ何やってるんだろうと考えてみたら、声あげてるだけだなぁと。まぁ宇宙から見れば小っちゃい話なので、別にそれでいいかとも思ってるんですけどね。

 

阿部:いや、やっぱりそういう性格や考え方は、とてもリーダー向きだと思います。だからこそ各分野の優秀な仲間が、岡島さんのところに集まってくるのではないでしょうか。

本日は本当にありがとうございました。2019年を楽しみにしています!

 

 

以上、岡島さんによる宇宙の企画術のお話、いかがだったでしょうか。ポイントをまとめると以下のようになります。

 

 

今回のお話から、あなたはどんな学びや気づきが得られたでしょうか。あなた自身の日々の企画に活かし、人生を“ちょっと良い方向”へと変化させるヒントになったなら幸いです。

 

それでは、次回の企画の話もお楽しみに。

 

インタビュー:阿部広太郎 文:森川ヨシキ 撮影:秋葉康至 企画協力:企画でメシを食っていく(運営・BUKATSUDO)

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