日本とは全然違う!? 「風水」や「日陰」を重視するベトナム建築

2017/8/24 19:01 ネタりかコンテンツ部

 

ベトナム在住ライターのネルソン水嶋です!

 

今は日本に帰国中で、友人の新居へ遊びに来ています。

 

いや~、それにしてもいい家だね!

 

 

私「フローリングもキレイだし!」

友人「ありがとう」

 

 

私「コンロも3口だし!」

友人「そりゃどうも」

 

 

私「収納もたくさんあるし!」

友人「さっきから褒めるねぇ」

 

 

私「でも……」

友人「え?」

 

 

 

私「ベトナムでもいい家だと思うなよーー!!」

友人「急に何言い出すの!?」

 

 

ベトナムの「いい家」の条件とは?

 

改めましてこんにちは! ネルソン水嶋です。冒頭から暴言をお許しください。

 

日本人にとっての「いい家」の条件って、何を思い浮かべますか?

 

静かな周辺環境、朝日の入る東向きの窓、適切なコンセントの位置……個人差こそありますが、内容はおおよそ共通していると思います。しかし、所変われば品変わることが世の中の常! それが、外国においても同じであるとは言い切れません

 

そこで今回は、「ベトナムのいい家の条件」が日本とどのように違うのか調べてみました。正確には、ベトナムの気候も地域差があるので、ホーチミン市を含む南部のお話になります!

 

 

お話を聞かせていただく相手はこちらの方、ベトナム在住6年目の建築家・西島氏。

 

ベトナム人向けの住居を設計してきた経験から、語っていただきましょう。

 

 

ときには機能性よりも「風水」を優先する慣習

私「ズバリ、ベトナム独自のいい家の条件って何ですか?」

 

西島氏「独自となるとやはり……風水的に良いかどうか、ですね」

 

私「風水!? 玄関はこっちの方角がいいとか、そういう話ですか?」

 

西島氏「はい。設計の打ち合わせに風水師を呼ぶことを希望するクライアントもいます

 

私「まさか、建築家の口から風水という言葉が出てくるとは……」

 

西島氏「私も最初は驚きましたね」

 

 

ベトナムの建物の多くがレンガを積み上げたものに、

 

 

モルタル(セメントと砂と水を混ぜたもの)を塗ることが多い。

 

ベトナムの建築を語る上で風水を切り離すことはできず、クライアントからのヒアリングにおいて、あとになって風水の観点で設計変更が起こらないように気をつけることが重要なのだとか。それでもやはり、あとあと風水師の一言で変わってしまうこともあるらしい。

 

 

私「大変じゃないですか? 風水師並みに勉強しない限り、把握できないでしょうし」

 

西島氏「それはそうですが、建築士なら押さえておくべき基本の風水もあります」

 

私「基本の風水!?……たとえば?」

 

西島氏「住居内の階段の段数は4で割った余りが1か2でないといけないとか」

 

私「め、面倒くさい……!」

 

西島氏「1から4までの数字に意味があるんです。1が生、2が長寿、3が病気、4が死。5以上の数字は、4で割った余りが1か2なら歓迎されて、逆に3と4は忌避される」

 

私「へー、4が『死』っていうのは、なんだか日本に通じるものがありますね」

 

西島氏「クライアント本人は気にしなくても、あとからクライアントの親が設計図を見て『このままじゃダメ』と言われることもあります。日本と比べて住宅の核家族化が進んでいないベトナムでは、本人ではなく親の言動とも折り合いをつけなくてはならないのです」

 

私「ベトナムの建築業、日本とは方向性の違ったスキルが必要そう……」

 

段数をあとから直されることは「ベトナム建築あるある」で、風水は段数のみならずドアの幅の単位などにまで及ぶ。実際に西島氏の同僚が「すべてのドアの幅を風水的に良い数字で作り直してほしい」と言われて、作り直したことがあるのだとか。

 

西島氏「こちらとしては住人にとって居心地の良い設計をしているわけだから、そこが犠牲になってしまうような内容であれば相談はさせてもらいます。ただ風水もその重要な要素の一つなので、ベトナムの建築である以上はなるべくリクエストに応えようとしていますね」

 

私「建築は計算とデザインの世界だと思ってたけど、そこまでくると民俗学ですね」

 

西島氏「そうなんです。あらゆる建築は文化的存在なので、そこには民俗学も歴史も社会学も重要な要素として絡んできます。異国での建築の魅力もここにあると考えています」

 

 

ベトナムのトイレ。慣例により、寝室の真上(上階の同じ位置)に作ってはいけない。

 

 

日当たりではなく「日陰」が大事

私「日本だと太陽が上る東向きや、日当たりのいい南向きが好まれる風潮があるけど、ベトナムではどうですか?」

 

西島氏「強いて言えば南ですが、そもそもベトナムは多くの地域で日射量が多いので、日当たり以上に住居の中に日陰があるかどうかの方が重要ですね」

 

私「おぉ、日当たりではなく日陰……ある意味で真逆だ」

 

西島氏「日陰と風通しこそが熱帯地域における建築設計の鍵と言っても過言ではありません。一方で日本は、機能性もありますが、日光をありがたがる、太陽信仰的な文化の影響もあると思います」

 

以前、カンボジアのアンコールワットで初日の出を見たときも、昼間だといろんな国の人を見かけるのに、早朝はほとんどの観光客が日本人で驚いたことがある。日本神話において、最高神の天照大神が太陽の象徴であることを考えると、我々にとっての「ベトナム人が風水を重視する不思議」は、ベトナム人(外国人)にとっての「日本人が日当たりの良さを重視する不思議」と似ているのかもしれない。

 

 

床はフローリングではなくタイルが好まれる

私「床は、フローリングではなくタイルが圧倒的多数ですよね」

 

西島氏「そうですね」

 

私「あれも日陰の理由に似て、ヒンヤリして冷たいから?」

 

西島氏「それもありますが、タイルは掃除しやすいからというのもあります」

 

私「確かに!」

 

西島氏「最近は少しずつテーブルとイスの洋式化が進んでいますが、一般的な民家では床に料理を並べて食事するスタイルが主流です。しかし、夜になると、盗難防止のためにその場所がそのままバイク置き場に変わる。つまり、同じ空間で休憩も食事も駐輪も行われるから、食べ物が落ちるわ、バイクからオイルは滴るわ、とにかく汚れる。そこでサッと拭けて掃除のしやすいタイル床が好まれているということですね」

 

私「なるほど……!」

 

西島氏「それだけではなく、木材が高いからという費用面などの理由もあります。日本のように計画的に植林をしていないので、実は材木として使える森林資源はすでに枯渇しつつあるのです」

 

一方で、日本の支援などにより、森林の減少問題を回復させる動きもあるとのこと。

 

 

床は白色のタイルが多い。右にある先祖や神様を祀る祭壇は、ベトナム人の家や店に置いてあることが多い。

 

 

1階に駐輪された大事なバイク。

 

西島氏が言うには、その多様な使い方は「(京都の古民家で見られるような)土間に発想が近い」とのこと。ベトナムがバイク社会ということはこちらの記事「ベトナムのバイクの群れはどこに向かっているの? 現地のライダーに聞いてみた」でも紹介した通り。バイクは一家に1台あって当たり前というもの。ベトナムの家の1階は実に多目的な空間だと言える。

 

 

コンセントの位置が高い理由は「子どものケガ防止と浸水対策」

私「日本はだいたい足元にコンセントがあるけど、ベトナムは高い位置にあることが多いですよね。あれは雨季の冠水(住居に浸水すること)を防ぐためですか?」

 

西島氏「それもあるけど、子どもが触ってケガするのを防ぐためだと思います」

 

私「あー確かに。ベトナムのコンセントはよく火花がバチッと散ってちょっと危ないですよね」

 

 

コンセントはこれくらいの位置のものをよく見かける。

 

 

ベトナムに来てすぐの頃、コンセントにプラグを挿そうとするとバチッと火花が飛び出して「いつか感電する」と恐れおののいたことがある。電圧が、日本の100Vに対してベトナムは220Vと高く、空気中にホコリが多いので、挿すときに巻き込んでしまっているのではないかとのこと。

 

また、コンセントの位置が低いほどホコリが積もり、漏電のリスクが高まるということもあるそうで、電圧の高いベトナムではその背景もあって高い位置にあるのかもしれません。

 

そう考えると日本のコンセントが低い位置にあるという傾向に不思議な印象を持つものの、ちゃぶ台やコタツなどの「床に座る生活形式(床座)」を考えると、伝統的に低い位置にあると考えてよさそうです。ベトナムも床座だけど、そこは雨季による冠水など、いくつかの要素の微妙なバランスがあるのでしょう。

 

 

西島氏「ただ、日本でも最近はユニバーサルデザインが重視される傾向にあって、お年寄りでも使いやすいという理由で、国内のコンセントの位置は高くなりつつありますよ」

 

私「理由は違えど、日本がベトナムに近づいていってるのか。おもしろいですね」

 

 

ベトナム建築こぼれ話

ほかにもおもしろい話が聞けたので、箇条書きでまとめます!

 

・ベトナム(ホーチミン市中心部)の民家は3~4階建てが主流、土地は狭め。

 

・1階は祖父母(老人)の部屋、2階は居間、3階は個人部屋、4階または屋上は先祖を祀る祭壇。これが近年の都市住宅のテンプレート。日本で言うところの仏壇が最上階にくる。

 

・騒音の概念があまりないので、周辺環境が静かということは重視されない。むしろ、全員ではないが、富裕層は大通りに面した場所に家を建てて見栄を張りたい傾向がある。

 

・エアコンが普及する前は風通しを良くするために必ず屋根や壁に通気口があり、雨季にはそこから雨漏りするのが当たり前だった。しかし、エアコンが普及し始めている今では、高い密封性を保っていかに雨漏りを防げるかということが重視されるようになってきている。

 

・治安の程度によっては、窓に鉄柵を付けたがるなどのセキュリティ意識が高い。

 

 

窓にはめ込まれた鉄格子。

 

いかがでしたでしょうか?

 

もちろん、ベトナムと言ってもすべての地域が常夏というわけではないので、今回聞いた話が当てはまらない家もあります。それでも多数派であると言ってよいでしょう。ベトナムのすべての家が雨漏りするわけではないし、いい国なので、ぜひ遊びに来てみてください!

 

ネルソン水嶋+有限会社ノオト

ベトナム在住のライター。現地のマニアックな魅力を伝えるウェブマガジン「べとまる」(外部サイト)で活動中。そのほか、ガイドブックやイベントなども企画。

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