お寺や神社の「御朱印」は誰が書いているの? 神田明神に聞いてみた

2017/8/3 11:31 ネタりかコンテンツ部

お寺や神社で授かる「御朱印」。最近は御朱印集めがカジュアル化し、すっかり身近なものになった。かくいう筆者も“マイ御朱印帳”を持っているが、御朱印を授かる度に思うのは、どの神社のものも見事に達筆であるということ。「下手な御朱印」には、あまりお目にかかることがない。御朱印を書く人は書道の有段者でなければならない、などの決まりがあったりするのだろうか? 

 

 

御朱印は誰が書いているのか? そんな疑問をはじめ、そういえばあまり知らない御朱印のアレコレについて取材した。

 

 

訪れたのは東京都千代田区にある「神田明神」(正式名称・神田神社)。約1300年の歴史を誇る古社で、江戸三大祭のひとつ「神田祭」や、近年ではアニメ『ラブライブ!』とのコラボでも知られている。

 

御朱印の書き手は、神社の方針によって異なる

お話を伺ったのは神職で広報の岸川さん。まずは「御朱印」とはそもそも何なのか? 教えていただいた。

 

岸川さん(以下、敬称略)「御朱印を授与しているのはお寺と神社。参拝した証として授与するもので、最近は半ばスタンプラリー化している向きもありますが、神社の御朱印は本来『神様から授かる』という神聖なものです。ただ、全ての神社仏閣に必ずなくてはならないものではなく、『うちは御朱印はありません』と張り紙をしてあるところもあります」

 

―― 御朱印を授かる際の料金は300円~500円のところが多いですが、それはルールで決められているんでしょうか?

 

岸川「神社の組合である程度の申し合わせはしますが、それは非常にゆるやかな決め事です。神社はそれぞれが独立した経営ですので、各神社の考え方によります。ですから『御朱印を誰が書くか』というのも神社の方針によって異なるわけです」

 

―― 御朱印を書く専門の役割の方がいらっしゃるわけではないんですか?

 

岸川「宮司や神職が書くところもあれば、巫女が書くところもありますし、あるいは筆耕さんというプロの方を雇っているケースもあります。本当にバラバラですね。宮司が書にこだわる方であれば、それこそ専門の人を立てているでしょうし、神田明神のように文字も手書きではなく判子というところも少なくありません」

 

―― えっ? 判子なんですか?

 

岸川「以前は手書きでしたが、数年前から判子に変わりました。御朱印ブームによって平日は300名、土日で1000名、神田祭の際は3000名の方が御朱印を受けに来ますので、さすがに対応が難しくなってしまったんです。稀に『手書きでお願いします』と言われることもありますが、お一人に対応するときりがなくなってしまうため、お断りしています」

 

▲こちらが現在の神田明神の御朱印。文字の部分も判子になっている

 

―― 「手書きじゃないんだ……」とガッカリされる人もいるのでは?

 

岸川「いらっしゃいますね。ただ、御朱印には『こうでなければならない』という決まったルールはなく、それぞれの神社のやり方がありますので、ご理解いただければと思います」

 

かっこいい御朱印を書くポイントは「縦の線」と「バランス」

 

―― 現在の神田明神の御朱印は「参拝」「江戸総鎮守 神田明神」「神田神社」の文字と日付、さらには神輿のキャラクターのスタンプが押された賑やかな印象ですが、この文字やデザインは昔から変わっていないんでしょうか?

 

岸川「いえ、変わっていますね。“御朱印の様式”のようなものは特にないんですよ。ここに江戸時代と明治時代に書かれた神田明神の御朱印がありますが、それぞれ違いますよね」

 

▲江戸時代の御朱印。現在の「神田神社」ではなく「神田大明神」と書かれている

 

▲こちらは明治時代のもの。右側に「東京府社」と書かれている。当時は「府社」「郷社」「村社」「無各社」など、神社のランク付け(社格)があり、神田神社は民社では最も上の「府社」格に位置づけられていた

 

―― ぜんぜん違いますね

 

岸川「これも、それぞれの神社の考え方次第ですね。もちろん、ずっと同じ様式を守っているところもあるでしょうし。ちなみに、滋賀県に多賀大社という有名な神社がありますが、こちらは明治時代の時点で文字も判子になっています。和歌山県の熊野神社もそうですね。やはり、昔から参拝客の多い神社の場合、手書きでは対応しきれなかったのではないかと思います」

 

▲明治時代のものと思われる多賀大社の御朱印。確かに判子だ

 

▲熊野神社。こちらも判子

 

▲江戸時代(右)と明治時代(左)の御朱印帳のようなもの

 

―― ちなみに、数年前までは神田明神も手書きの御朱印だったということですが、その時はどなたが書かれていたんでしょうか?

 

岸川「複数の神職が書いていました。私もその一人です。ただ、特に書の心得があったわけではありませんし、もちろん有段者でもありません」

 

―― では、当時はかなり練習されたんですか?

 

岸川「練習しましたね、独学で。もちろん、書道をやられている方から見れば、決して達筆とは言えないものだったと思いますが、きちっとした字を書こうとは心掛けていました」

 

―― どうすればかっこいい御朱印が書けるんでしょうか?

 

岸川「まずは文字の太さですね。特に、縦線を太く書くことが大事です。筆を使うと横の線は太く書けても、縦が難しいんですよ。ですから、怖がらずに縦線をびしっと太く決めると力強い印象になります。あとはバランス。プロの筆耕さんの字をよく見ると、一つの文字で完結せず全体のバランスを見て書いているのでかっこよく見えるんですよね」

 

▲確かに右は力強く、左はバランスがいい。このポイントをふまえて練習すれば、「御朱印っぽい」文字が書けるようになる、とか

 

なぜアニメとコラボするのか?

―― 御朱印についてはよく分かりました。有難うございます。話は変わりますが、神田明神といえばアニメとのコラボが有名ですよね。今年の神田祭では『ソードアート・オンライン』『ご注文はうさぎですか?』、前回は『ラブライブ!』とコラボしていました。伝統的な神社がアニメとコラボすることに対し、批判的な声が挙がることはないですか?

 

岸川「確かに、そうしたお声を頂戴することもあります。しかし、お祭りというのはあくまで現代に生きる人たちのもの。ならば、今の文化を取り入れるべき、という考えもあります。神田祭も150年前までは山車のお祭りでしたが、時代とともに神輿の賑やかなお祭りに変わっていきました。江戸時代のものをそのままやったって、誰もついてきません。時代によって作り替えていくからこそ、生き生きとした形で伝統が続いていくのだと思います」

 

 

―― 柔軟なお考えですね

 

岸川「神職というと、やはり堅いイメージを持たれる方が多いと思いますが、神田明神の場合は宮司をはじめ、新しいもの好きが多いのかもしれません。アニメのコラボにしても、じつは今にはじまったことではなく昔からやっているんですよね。『チョロQ』『リカちゃん』『犬夜叉』『ケロロ軍曹』……。それに、『銭形平次』だって神田明神下の長屋に住んでいたという設定ですから、言ってみればコラボなんです。あれも架空の人物ですから」

 

―― 確かに。古くからそういう文化を上手に取り入れてきた歴史があるんですね

 

岸川「明治時代には神田祭と歌舞伎役者がコラボした浮世絵もありました。逆説的ではありますが、そういう昔からの流れを僕らは知っているので、現代の流行を取り入れるのは自然なことなんです。ネガティブなイメージを持たれている方にも、こういうお話をするとご理解いただけることが多いですね。コラボについては神田神社側から仕掛けることはありませんが、お話をいただいた時には前向きに受け入れる、開かれた神社でありたいと思っています」

 

まとめ

というわけで、御朱印そのものに決まった様式やルールはなく、冒頭に述べたような「書道の有段者でなければならない」といった資格も特に必要ないようだ。

それだけに、授かる側が「御朱印とはこういうもの」というイメージで来られると、神社側も困惑してしまうという。それぞれの方針により、手書きの御朱印に対応できないところもあるし、そもそも文字がなく、朱印だけのケースもある。御朱印巡りの際は、そうした事情もふまえておくといいかもしれない。

 

取材・文:榎並紀行(やじろべえ)

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