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ライター・カツセマサヒコに聞く「言葉で何かを伝えること、生きる意味を見つけること」連載:大人の学び 第5回

2017/7/31 10:04 ネタりかコンテンツ部

私たちは、日々何かを企画しながら生きています。

新しいイベント、月末の旅行のプラン、今日の晩御飯のメニューetc……。仕事はもちろん、日常生活の中でも「企画」をする機会は訪れます。だからこそ、企画を特別なものとして距離をおくのではなく、自分の人生をちょっと良い方向に変える手段として捉えてみる。そうすることで、少しずつ変化は起きていくのかもしれません。

 

「自分はこれから何をして生きていきたいか」、「自分はこれからどんな世の中をつくりたいか」。これらをテーマに、コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する講座が「企画でメシを食っていく」(通称・企画メシ)です。

 

各業界の現場の第一線で活躍される方たちをお招きして「企画」の捉え方・考え方について伺っていく企画メシ。こちらの連載では、「大人の学び」をテーマに、自分の人生を企画していくためのヒントをお届けしていきます。

 

今回のテーマ:「書く仕事」

 

話し手(写真左):カツセマサヒコ

1986年生まれ。明治大学を卒業後、大手印刷会社の総務部に勤務。5年後、趣味で書いていたブログがきっかけで株式会社プレスラボに転職し、ライター/編集者としての道を歩み始める。Twitter上での「妄想ツイート」が話題を呼び、「タイムラインの王子様」として若い世代を中心に絶大な人気を獲得。

2017年4月に独立し、現在はフリーランスとして幅広いメディアで活躍中。Twitter:@katsuse_m

 

聞き手(写真右):阿部広太郎

1986年生まれ。2008年、電通入社。人事局を経て、コピーライターに。「世の中に一体感をつくる」という信念のもと、言葉を企画し、コピーを書き、人に会い、つなぎ、仕事をつくる。東京コピーライターズクラブ会員。宣伝会議コピーライター養成講座「先輩コース」講師。

世の中に企画する人を増やすべく、2015年より、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」を立ち上げる。初の著書『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』(弘文堂)を出版。

 

※本連載は、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」(通称・企画メシ)における講義内容を、対談形式に再編集したうえで一部内容をネタりかにて補足したものとなります。

企画メシ:http://kikakumeshi.jp/

大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDO:http://bukatsu-do.jp/

 

今の自分は、心を失くして働いていた5年間の反動で形成された存在なのかもしれない

 

阿部:本日はよろしくお願いします。最初にお聞きしたいのは、カツセさんは5年ほど大手企業の総務部門でお仕事をされた後、ライターに転職されたんですよね。珍しいキャリアの積み方だと思うのですが、なぜ転職の際に「書く仕事」を志望されたんですか。

 

カツセ:もう単純に、書くことしかできなかったから、ですね。新入社員の頃から長く総務部門や人事部門にいると、身に付くのって人事スキルとかそういうのばかりになっちゃうんですよ。そうなると、何か別の仕事をやろうと思ったとき、経験値の無い、武器ゼロの状態からの転職活動スタートになってしまいます。

でも、書くことなら誰でもできる。そして、書くことが好きなのか、書くことが得意なのか、書くものに価値があるのか。いずれか1つでいいのでグレードが飛び抜ければ、ライターになれるんじゃないかと思ったんですよ。僕の場合、書くことは好きだったし、ほんのちょっとだけ「得意だな」って思えていたので。

 

阿部:得意だと思えたきっかけは、何だったんですか。

 

カツセ:本当に些細なきっかけなんですけど、、mixiの日記が同級生の中で「面白い」と評価されたことですかね。ごく内輪の話ではあるのですが、それでも第三者が評価してくれてたという事実が、自分の中では強い成功体験になってて。「こんなにウケるんなら、書くことを得意と思ってもいいかも……?」みたいな。何というか、ライターの先輩方をバカにしたようなスタート地点で申し訳ないんですけど……。

 

阿部:そんなことないですよ。「仕事」として挑みたくなったから、というのは立派な動機だと思います。一方で、本職の総務の仕事はどうだったんでしょうか?

 

カツセ:気持ち的には全然ダメでしたね。当時は今の4倍ぐらい死んだ目をしてました。

何というか、総務とか人事とかの仕事って、やれて当たり前の「減点方式」じゃないですか。だって皆さんが研修に参加したとして、座席表とかは正しくて当たり前で、間違ってて初めて注目されるものですよね。そういう減点方式で5年という状況に、僕はちょっと精神的にヤラれてました。

 

阿部:今、いきいきと活躍されているイメージのカツセさんの過去としては、ちょっと意外なエピソードでした。

ただ、僕も昔人事の仕事をやっていたので、気持ちとしてはよくわかります。「余計なことはするな、しっかり目の前の仕事をやれ」というのが基本スタンスで、性質上、個人の色はあまり必要としてない、という志向がどうしても強い仕事だったように思います。

 

カツセ:多分僕、それに対する反発の気持ちが強すぎて、今こんな風になっちゃってる気がします。5年間の抑圧がはじけちゃったんでしょうね。

ホント今だから笑って話せるんですけど、当時は1週間のうち「このまま、この大きな会社で歯車となって死んでいくんだな」という意識に支配されてる日が週4日ぐらいあって、あと1日は「何か奇跡起きないかな」と思ってるだけの日。そういう5年間でした。

言い方は悪いですが、僕にとっては牢獄みたいな場所だったんですね。そこで心を失くして働きながら、いつか、いつか、と思っていただけの日々だったので、今こうやってライターとして活動できていることは、本当に幸せとしか言いようがないんです。

 

良いところを見つけたら、すぐにパクる。それが僕なりの文章上達方法

 

阿部:転職のきっかけとなったご自身のブログについて教えてください。趣味で始めたのではなく、最初から「ライターとして声を掛けてもらうために立ち上げたブログ」だったとか?

 

カツセ:はい。ブログ自体は過去に何度かやっていたんですが、そのときのブログは「SNSで流行らせるために書く」という明確なコンセプトを持って取り組んだものでした。

今から4年ぐらい前、僕の周りではいわゆるポエム的な、ひたすら自分の内面を書き綴っていくという形式のブログがほとんどだったんですね。「明日会社嫌だ」とか「眠い」とかで終わるものが多いというか、いわゆる日記というか。

だから、きちんと第三者に届けようという意識で記事を書くことに、そのブログで初めてチャレンジしたんです。それで結果が出れば、きっとライターとして声も掛けてもらえるだろうと思って。

 

阿部:自分の不満の発散のためにではなく、読む人が面白いと思ったり、友達に知らせたいと思ったりすることを目的に。つまり、読み手を意識しての記事を書き始めたというわけですね。その頃は、どういうテーマで書かれていたんですか。

 

カツセ:えっと、もうホントに毎回毎回違うテーマで書いてて。どれがハマるんだろうというのを探りながらだったので、真面目なエッセイみたいな回もあれば、完全にネタに振り切った回もありました。文体も「です・ます」もあれば「だ・である」もあって。

とにかくいろいろ書いていって、何が流行るかなというのをずっと1人で試してたんですよ。俗にいう「PDCAを回す」感じです。

 

▲カツセさんが転職後に開始し、現在も継続して投稿している個人ブログ:「人の職業を笑うな」(外部リンク)

 

カツセ:あと、そこで書いてた記事は、基本何かのパクリでしたね。

 

阿部:え!? それは、どなたかのテイストをなぞる、というようなことですか。

 

カツセ:そうです。流行ってるサイトの記事のテイストを持ってきて、ネタの部分だけは自分で考える、みたいなことを1年半ぐらいずっとやってました。

 

阿部:パクるという言い方にちょっとドキッとしましたけど(笑)、文章を書く上で「真似をしてみる」っていうのはとても大切ですよね。

 

カツセ:僕は本当にそこが一番大事だと思ってやっています。もともと影響を受けやすいタイプで、好きな人とかモノとかができると、考え方とか趣味、服装すら変わっちゃうほうだったんですね。

昔は自分のそういうところが嫌だなぁと思ってたんですが、最近はもうそれをポジティブに捉えてて。「良いところを見つけて盗める力」なんだと思ってやってます。

 

阿部:具体的にどのようなことをすれば、上手く真似というか他者のテイストを取り入れられるようになるのでしょうか。

 

カツセ:そうですね……。いや、そこはホント書くのみというか、基本は物量勝負ですね。まずは自分の好きなテイストというか、書き手をどんどん見つける。そして、その人のことが好きだと思ったら、とにかく作品を読み、書き写しをする。「ここでリズム変えて、ここで終わりなのね」というのがわかったら、もう、すぐパクる。

 

阿部:(笑)

 

カツセ:僕、今でもそれをやってるんですよ。というより、それ以外の工夫っていうのをあまりやってないんです。

だからたまに「この書き方は●●さんに似てる」って指摘受けるんですが、それはホント狙った通りなので。何ていうか、僕の中では「似てる」とか「パクリ」って言われることは、けっこうポジティブに捉えているところがあるんですよ。そこを突破して、初めて自分の文章になる、みたいな感覚でずっと書いてます。

逆に、何も参考にせずに書き続けるというのは、井の中の蛙的な文章になってしまう気がするので、それだけは絶対避けたいなと思っています。

 

阿部:実は僕もその辺は全く同じ考え方なんですよ。その年の良い広告がまとめられた『コピーライター年鑑』という、それこそ図鑑みたいな本を買って、良いと思ったコピーをひたすらクロッキー帳に書き写して……というのがコピーライターとしてのスタートでした。

今でも「この人の書く文章好きだな」と思ったら、ひたすら読んで、書き写す。コピーライターに限らず、詩歌やエッセイ書いてる人とか、とにかく誰かが「この人の言葉、良い」と言ってるのを聞いたら、ためらわず買ってチェックするようにしています。

 

カツセ:その辺は、阿部さんのほうがストイックっぽいですね。(笑)

あと、僕は流行りものとかベストセラーはとりあえず全般読むようにしてます。もちろん大衆受けが全てというわけではないですけど、売れてることにはやっぱり理由があるわけで。売れてるものをちゃんと見る意識というか、消費者感覚を常に持つようにすることをすごく大切にしています。

 

文章で世界は救えなくても、誰かの背中を押してあげることはできるはず

 

阿部:特に影響を受けた書き手の方を1人挙げるとしたら、どなたでしょうか?

 

カツセ:僕の場合、圧倒的に小説家の伊坂幸太郎さんですね。話し言葉とか、表現の仕方とか、温度感とか、だいたいそこから取り入れてるというか。あと、「カメラワーク」の部分でめちゃくちゃ影響受けてます。

 

阿部:文章でカメラワークですか……?

 

カツセ:カメラワークって、映像だけじゃなく文章にも絶対存在してるんです。スピードが速くなる場面では全体をすごく引きで撮るとか、伊坂さんのカメラワークは僕にとってそれがどハマりするやつで、ずっとそのカメラを追ってたくなるような感覚になるんです。

だから、自分が文章書くときもそれをすごく意識しているというか、憑依させるような気持ちで書いています。

 

阿部:すごく面白い考え方ですね。どういうカメラで捉えるか、そのカメラをちゃんと意識できているかどうかで、文章の完成度はそれこそ飛躍的に変わりそうです。

 

カツセ:読書習慣として普段からそういう点を意識できていれば、掛かる時間や負担は大きくなるとはいえ、身に付くものもその分だけ増えていくように思います。

「1つでもいいから、何かを吸収してやろう」と思って読み始めるかどうかで、積み上げられる経験値が全然違ったものになるので。

 

阿部:ホントその通りですよね。僕は街で配られているフリーペーパーとかに対しても、何か1つは自分が「良い」と思ってツイートできるかどうか、という視点で読もうとしています。

 

カツセ:僕はもうツイッター大好きなので、よく「ツイネタ」探しのつもりであらゆるものを見てるんですが、それはやっぱり本当に効果がありますね。

本でも何でもいいのですが、最初から「アウトプットすること」を目的に読もうとか経験しようとか意識していると、すごく発見が多いと思います。

 

阿部:それにしても、転職前からそういう意識で文章に取り組んでいたのであれば、通常の業務をこなしながら記事を書く時間を捻出するのが大変だったのではないでしょうか。転職活動の時間も必要だったでしょうし。

 

 

カツセ:僕のブログ、書いてた本数自体は多くなくて、月に2、3本ぐらいのペースだったんですよ。毎週土日のどちらかに家にこもって書いて、1本あたりにかかる時間はだいたい6~8時間ぐらい、という一定のサイクルがあって。

実は今もそのときと同じ感覚でやってるというか、「仕事でやってもたぶん同じサイクルでやれるな」という感覚が掴めたからこそ、転職にも踏み切れたんです。

 

阿部:そうか、そういう部分も含めてのPDCAだったんですね。

 

カツセ:はい。あと、転職に関しては完全にブログ経由で声を掛けてもらうのを待っていたので、ブログを書くことがイコールで転職活動だったんです。

もちろん転職サイトで検索すれば求人はいくらでも出てくるんですが、ライターで「未経験歓迎・アットホームな職場」っていう募集要件の胡散臭さってハンパなくないですか?(笑)

 

阿部:何が待ち受けてるかわからないっていう怖さはありますよね。

 

カツセ:「年俸300万」って書いてあっても、実質の手取りでいくらになるかわからないじゃないですか。家族もいるのに手取りが結局80万とかにしかならなかったらどうしよう、みたいなのは当然あって。

だから、ちゃんと向こうから責任を持って声を掛けてくれるような人が現れるまでは、とにかく待とうと決めてたんです。逆に、自分に声を掛けてくれるところがあったら、ほぼほぼ100%飛び込もうと腹を括ってもいました。

 

阿部:それだけの覚悟を持って取り組んでいたブログが認められ、2014年に編集プロダクションの株式会社プレスラボに転職されたわけですね。

では、そこから「書くことで対価をもらう仕事」をスタートさせたカツセさんが、プロとしての手応えを感じたのはどういう仕事になるのでしょうか。

 

カツセ:やっぱり自分が本当にいいと思っているものだったり、伝えたいと思っているものだったり、そこにお金が関わっていなくても自分が広げたいと思っているものを書いた記事が、結局仕事としてもいいものになっていることが多い気がしますね。

阿部さんもお仕事で関わられている「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というイベントの体験記事も、いまだにあれを読んで「行きます」と言ってくれる人がいて。嬉しいですよね。だって、あれ正直チケット代高いじゃないですか。(笑)

 

▲参照記事(外部リンク):【暗闇で解放される心と五感】「助けて」と言えないあなたに「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を勧めたい

 

カツセ:それでも、わざわざ記事を見て、“お金を払って行動に移す”という高いハードルをクリアしてくれる人の数がとても多い。それはやっぱり、自分の誠実な想いが記事として多くの人の心に届いたからこそであり、そういう記事には作品的な意味での手応えを感じますね。

 

阿部:コピーライターの書く1行のコピーと、ライターの方が書く1つの記事の違いがそこにあるかもしれません。

そのイベントが持つ魅力を、何とか1行に凝縮して伝えようという強い想いがあったとして、コピーライターが作ることができるのは「入口」だと思うんです。最後の最後の筋道や行動という「出口」までは、作りきれない場合もあります。

本当にアクションを起こそうかどうかと迷っているときほど、実際に身をもって体験し、それを良いと思ったライターの方が書いてくれた記事のほうが「じゃあちょっと行ってみよう」という気持ちになりやすいと思います。

カツセさんの書く記事は、まさしく「最後の後押しをしてくれる記事」になっているんだと感じました。

 

カツセ:僕、スピーチライター以外は、文章で世界を救うことなんかできないと思ってるんです。でも一方で、半歩とか一歩を押すことはできるんじゃないか、とも思っていて。だから「記事で背中を押してあげる」という感覚を、書くときは常に意識するようにしていますね。

 

「つまりこういうことだ」という発見を説明するための文章、「つまり一言でいうと何か」を突き詰めて考えた言葉

 

カツセ:僕はコピーライターの方が書くコピーの仕事ですごいのは、「0→1での気付き」を与えるところだと思っています。だって、いわゆるコピーがあることで、初めて気付けるようなことってたくさんありますよね。

でも、何かを短い文章で伝えるのって超難しいじゃないですか。

僕たちライターの仕事で言えば、読んでもらえるかどうかを左右するという意味で「記事タイトル」がそれになるかと思うんですけど、それが気付きの提供かというとまた全然違うものですし。

 

阿部:そうですね……。僕は自分で記事を書くこともあるんですが、記事の内容を伝えることを目的としたタイトル付けと、企業のメッセージを伝えることを目的としたタグラインを作るときとでは、やはり頭の働かせ方は全然違う気がします。

記事タイトルは、たくさんある情報の中で、その記事の内容を踏まえながらも、いかに読んでもらうかを優先して考えないといけないですよね。

それに対し、コピーライターが1行のコピーを書くには、物事の本質を「つまり一言でいうと何か」を突き詰めて考えていくことが求められると個人的には思ってて。

 

カツセ:両者では考え方というか、手順が逆なのかもしれませんね。

 

阿部:発想法的なところで言えば、コピーを作るときは「たとえば」という接続詞と「つまり」という接続詞を頭の中でとにかく考え続けます。

 

 

あるテーマに対し、すごく大きな円を「たとえば」で描き、「つまり」でその真ん中を見つけていくというイメージですね。

だから、「たとえば●●」という●●が多く出せれば出せる人ほど、いろんな切り口を見つけられるんだと思っています。本を読んだり、誰かの話を見聞きしたり、旅行に行って体験したり。「つまり」は「たとえば」の中から見つけるものなので、そういう言葉が多いほうがコピーライターとしてはいいんだろうな、と。

 

カツセ:コピーライターの方って「お題をもらったら死ぬほど書く」「今回100個書きました、どうですか!」って感じの仕事の進め方かと勝手にイメージしてたのですが、今のお話だと「たとえば」と「つまり」を出せたら、そこから実際にコピーとして仕上げる本数は意外に少ないんですかね。

 

阿部:もちろん人やお題にもよるのですが、恐らくそこまでは多くないと思います。

僕もコピーライターになったばかりの頃は、とにかく闇雲にコピーたくさん書いてました。「どう考えていいか」というのがわからないまま、とにかく枚数を増やすことに一生懸命になっていたんですね。だから「書くには書いてるけど全然ダメ、もう1回」みたいなことによくなっていました。

ただ、そういうのを繰り返していく中で「あ、こういうことか」という頭の働かせ方みたいなのがだんだんわかっていくんです。「コピーライターといえばコピー1000本ノック」みたいな逸話をよく聞きますが、みんな上達すればするほど頭の中で「あ、これ全然違うな」というのがわかってくるので、実際にコピーとして書く本数というのは次第に少なくなっていくのではないでしょうか。

 

カツセ:なるほど。ライターとコピーライターって、同じ「言葉」を扱う仕事でありながら、両方を同じレベルでやってる人っていないじゃないですか。だから、こういう手法論の違いを聞くのは新鮮な刺激があって面白いですね。

 

どう書きたいかではなく、どう書いたらより多くの人に届くのか。訴求したいものと読者の間に入って、自分ができることは何か

 

阿部:お互いの仕事の特性が何となくわかったところで、いわゆるクライアントワーク(広告案件)について教えてください。ライターの方の場合、クライアントからお題をもらってからの記事の構成などは、どうやって考えているんでしょうか?

コピーと違って文量もある程度自由に決められる分、あえてめちゃくちゃ長くする場合もあれば、スパッと短くする場合もあると思いますし、内容もいわゆる体験モノから解説的な記事、ネタ系と呼ばれるものまで多岐にわたります。その辺はどういう風に決めてるのかなぁと。

 

カツセ:そうですね……。本当にいろんなクライアントさんがいて、訴求したいものがそれぞれに存在します。だから、まずはそれと、それを伝えたい読者との間の「距離感」を強く意識します。

「訴求したいものと読者との間に、僕が入ることでできることって何だろう」という、変換器や翻訳者としてのポジションとして、いつも記事の内容や構成を考えていますね。

特にインターネットは、ただの通りすがりという人がたくさん行き来している場所。クライアントのファンではなく、通りすがりの人をいかに引き付けられるか、というのが重要になるんです。そこは自分が企画を提案する上で、最初にクライアントに理解してもらう部分でもあります。

 

阿部:いかに自分がつなぎ役や橋渡し役になれるか、という視点ですね。たしかに、僕も自分がどう書きたいかというより、どう書いたら届くか、というのを常に意識しています。

 

カツセ:特に僕の場合、フォロワーは女性の方、しかも10代後半から25歳ぐらいまでの方が圧倒的に多い。だからまずはその層を起爆剤にしないと閲覧数が伸びないという傾向が、事実として存在します。

そのため、訴求したい商品やサービスがあまりその層にマッチしないものだった場合、記事をどういう構成や内容にしたら受け容れてもらえるようになるか、という部分をめちゃくちゃ一生懸命考えますね。

自分が書きたいことを書くだけなら、単純にブログでやればいいわけですし。

 

阿部:仰る通りですね。自分がクライアント側だったら、届ける想いが強いライターの方に仕事をお願いしたいです。ところで、カツセさん自身はクライアントと信頼関係を築いていく上で、特に意識しているようなことはありますか?

 

カツセ:実は僕、一度信頼関係がダメになると、そこから回復させるのにだいぶ時間がかかってしまうタイプなんですよね。だから、まずは「ミスなくソツなく」というのを大前提として動くようにしています。

あとは初対面での印象の「ギャップ」を上手く活かすことですね。

僕の場合、ツイッターで僕を知ってもらっている方からお仕事のお声掛けをいただくことが多いんですが、初めての顔合わせ時に言われるのが大体「あ、思ったより声高いんですね」と「あ、思ったより真面目なんですね」という2つになるんです。

 

▲初対面の人ほどギャップを感じるというカツセさんのTwitter:@katsuse_m

 

カツセ:だからこの「思ったより真面目なんですね」という印象のギャップが強い初回の会議のうちに、「こういうフォロワーが多いです」とか「こういう戦略でやると自分の場合は成果が出やすいと思います」という情報を、全てクライアントに開示するようにしています。

不真面目そうと思っていた相手からいきなり真面目なこと言われると、“何かこいつ信頼できそう感”がすごく上がるじゃないですか。(笑)

 

阿部:ギャップがもたらす効果は大きいですよね。でもそれ以上に、手の内を共有してあげるというのは、お互いの信頼関係を築く上では非常に大切なことですよね。

 

カツセ:手の内を最初に全部見せてあげることは、相手に「あ、この人ここまでならできるんだ」という約束をしてあげることにもつながるんですね。

情報が開示されているからこそ、期待値のハードルが徐々にいい感じに調整されていき、乗り越えやすい現実的な目標を設定することができるんです。

期待値だけ上がりきってる状態で到底達成不可能な目標を設定することは、結局は相手の信頼を裏切る結果につながってしまいます。そういう意味で、信頼関係構築のためにすごく意識している手法と言えるかもしれません。

 

長文記事を読ませるために必要なのは「熱量」、そして「文章のつなぎ方」

 

阿部:カツセさんの書かれる記事や文章を読んでいると、読み心地の良さというのを感じつつも、根っこのほうに「気合が入ってるな」というのをすごく感じるんですね。

何というか「絶対届けるぞ」とか「絶対伝えてやるんだ」みたいな想いの強さを感じる記事がすごく多い気がして。それはどこから来ているものなんですかね。

 

カツセ:例えば自分の親友が、あるアーティストのことを凄く凄く凄く……その凄くの40倍ぐらい凄く好きだったとしますね。すると、その親友が延々と喋るそのアーティストの話っていうのは、何かちょっと気持ち良く聞こえると思うんですよ。

自分が大好きな親友が、こんなにも好きだっていうものは、きっとすごく近い存在に感じるというか。何というか熱が伝わるじゃないですか。

 

阿部:普通の話に比べ、伝わる熱量が違いますよね。

 

カツセ:そう。僕が書く文章というのは、まさにそれを目指しているところがあるんです。

広告記事ってまぁ行為としては押し売りになるんでしょうけど、自分が本当に好きだと思ったものは、押し売りの壁を超え、まるで隣で話されているかのように伝わってほしい。だからあえてラフな言葉を使うとか、そういう感覚をすごく大事にしているので、僕のその種の記事はどれも本文までがめちゃくちゃ長いんですよ。

導入で延々と「好き」を語り続け、ではようやく本文ですとなって、そこからさらに2万字……みたいな。(笑)

でも、そんなに長い記事を最後まで読んでもらえるのは、結局その導入での熱量があるからこそだと思うんです。だから「こいつがこんなに好きって言ってるんだから、さぞ良いものなのだろう」と思わせることで期待感を高めるっていうのは、単なる手法ではなく想いの問題なんだろうなと。

 

阿部:つまりカツセさんの記事の根底にあるのは、熱とか愛とかそういう「強さ」があるものを、ちゃんと言葉として届けていこうという想いなんですね。

 

カツセ:コピーのような一言勝負では難しいと思うんですが、webライターには幸い字数制限的な縛りがキツくない場合が多いんですね。だったらもう、何かこうメディアとかに囚われるのではなく、思う存分好きであることを個人的に伝えてしまうのが1つのやり方かな、と。

ちなみに人生で一番熱を込めた記事を書けとなったら、僕の場合はMr.Childrenのことを延々と書き続けますね。これはもう広辞苑ぐらいの量になります。

 

阿部:それは、ぜひ書いてほしいです(笑)。ただ、普通はいくら熱量があっても、読者に最後まで読んでもらえるような長文の記事を書くのはかなり難しいことだと思います。カツセさんが熱量以外のテクニック的な面で意識しているのはどんなことでしょうか。

 

カツセ:そうですね。webの記事の場合、いくつかの情報を優先順位を付けて書いているだけで、情報の絞り込みはしていない場合が実は多いんです。だから、ポイントになるのは「文章のつなぎ方」ではないかなと。

 

阿部:なるほど、それは納得です。僕個人は文章を書くことは、引き算と足し算を繰り返すことだと思っています。

というのも、最初にテーマを見つけるときは、とにかく「“これ”にしよう」といろいろ引いていくじゃないですか。でも、その後の肉付けの部分で「“ここ”と“ここ”と“ここ”をつなぐために、たぶん“あれ”から“これ”へ移るための流れやロジックが必要になるな」とか考え、いろいろ足していきますよね。

だからこそ、カツセさんの仰るように「文章のつなぎ方」に、技術や経験は反映されてくるんだろうなと。

 

カツセ:そうですね。僕なりの言葉で説明するなら、まずは記事の構成上のポイントを作ってあげる。そして「この記事は、こういう見出し●個で構成していきます」というのが固まったら、それぞれの橋渡しのための文章を書いていき、1つの記事を完成させる。それが僕らの仕事だ、という感覚ですね。

何というか、「読んでて自然に一本の流れがありつつも、実はちゃんといろんなものを網羅してる」というのが良い記事だと思うので、ライター志望というような人たちはそこを意識して書くといいかもしれないですね。

 

阿部:たしかに。自分が上手いなと思うライターさんの記事の見出し部分だけをくり抜いて、「あ、こういう流れになってるんだ」とか、そういうのを見ていくと手の内がわかってくるというか、真似ができるようになりそうですね。

 

一球一球フルスイングを。「仕事」と「生きること」の感覚を近づけていきたい

 

カツセ:ところで、コピーを書く仕事というか、阿部さんの場合は仕事をする上でどういう点を重視されているんですか?

 

阿部:そうですね。カツセさんと同じくですが、結局は自分がすごく熱量を持って取り組める仕事のほうが、きっと言葉にも想いが乗っかるなと思って取り組んでいます。

もちろん会社員なので、先輩から巻き込まれたり上司の方から振られるような仕事も多いんですけど、常に「自分が巻き込み返せるか」というのを大事に考えています。

 

カツセ:うわぁ、何かすごく体育会系の仕事の考え方ですね。(笑)

 

阿部:たとえば先ほど話に出た「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の仕事についても、先輩から誘っていただいたんです。そして自分も実際にイベントで体験したことで、「あ、これはとんでもないな」と強く感じて。

だから、コピーライターとしてこれを広げる仕事をぜひやらせてほしい、と自分から巻き込まれていったんです。

 

カツセ:コピーを書く上でも「体験」が原動力になるんですね。

 

阿部:コピーを書く仕事は、「ここにあるけど、まだ顕在化されてない言葉」をどうやったら言語化できるか、という思考を積み重ねる作業であって、自分自身のあらゆる時間を費やして書くものだと思っています。

だからこそ、自分の想いが乗っかる仕事をたくさんしていきたいんです。

もう30代ですし、「どんなお仕事も全部やります!」とかでなく、ちゃんと全身全霊で取り組める仕事を、数は少なくても1つでも多く増やしていけたら嬉しいなと。「これは俺じゃないよな」と思う仕事が来た場合は、やるにしろやらないにしろ「どう貢献できるのか」を、まずはしっかり考えるようにしています。

 

カツセ:そうですね。ちゃんと打率を上げるというか、一球一球に対してフルスイングできるようになりたいですよね。打席に立つなら「無難にヒットを」ではなく、「できるだけ多くホームラン打ちたい」という意識で取り組んでいかないと。

実績作り的な部分でもそうですけど、それ以上にメンタル的な部分で、絶対にそのほうが良いと思っています。だってそのほうが、「仕事」と「生きること」が、感覚としてつながっていくはずなので。

 

阿部:そこは本当に僕もそう考えてるんです。仕事と生きることの感覚っていうのは、近いほうが幸せに感じることが増えていくんじゃないかなって。

仕事相手に関してもそうで、ビジネスライクすぎると信用できないというか、やりとりしてても「本心はどうなの?」という人ってよくいますよね(笑)。仕事だけで考えればそういうほうがいいのかもしれないのですが、自分の場合はやっぱり「心同士で向き合える」人との仕事を、1つでも増やしていきたいなと思ってます。

 

言葉で仕事をすること、言葉で企画をすること

(▲対談後、阿部さんの著書『待っていても、はじまらない。-潔く前に進め』がカツセさんに献本される)

 

阿部:カツセさんは今後どんな「言葉の仕事」をしていきたいと思っているんですか? ライターはもちろん、言葉を使うという意味では脚本や作詞などいろんな領域の仕事がありますよね。

 

カツセ:そうですね……。今は言葉に関する仕事は何でもやりたいというか、広げていきたい時期なので、言葉が主軸であれば一通りの仕事に触っていきたいと思っています。

脚本や作詞はもちろん、ラジオ出演やイベント登壇だって「言葉で何かを伝える」ということには変わりないので、その中で得意なことを見つけていけたらという気持ちが強いんです。

それぞれの仕事でレベルアップをすれば、それが相互に作用することでまたそれぞれにいい言葉が出てくるかなと思っているので。だから今は、その変化をゆっくり楽しんでいたいという時期かもしれません。

 

阿部:焦って何かこれをやるぞ、と力むのではなく、その時々の出会いを楽しみたいというわけですね。

 

カツセ:先日糸井重里さんとお話させていただく機会があったんですが、あの方はコピーライターという肩書きでお仕事をするときがありつつも、基本的にはほぼ「糸井重里」という名前でお仕事をされているじゃないですか。

それって実はすごく理想的な形で、きっとそこには媒体として「言葉」があって、彼の言葉だから動く、彼だから一緒に仕事がしたい、という人たちがいて……。だから将来は、そんな糸井さんのような68歳になれたらいいなぁと思っています。僕は今30歳だから、あと38年修業できるわけですし。(笑)

 

阿部:そうですね。30歳って中堅というか、何か一区切りのような感じがありますが、実際のところ先は長いですよね。68歳までに、もっといろんなこともできるでしょうし。

 

カツセ:逆に、そこまでクリエーターとして長生きしなきゃいけないし、市場価値も落としてはいけない。健康面もすごく大事しなきゃな、と最近よく思ってます。

 

阿部:わかるなぁ。僕にとっても糸井さんは大大大先輩にあたるわけですが、「お、そんなことも」「あ、それもできるんだ」って、コピーライターの仕事の領域を、まさに糸井さんのようにどんどん広げていけたらなと考えてて。

だってコピーというのは、決して広告領域に限定された狭い範囲の仕事を指すのではなく、本質はやっぱり「言葉を企画すること」だと思うんですよ。

 

カツセ:たしかに。

 

阿部:最初にカツセさんも仰っていましたが、言葉って関係の無い人が1人もいないものというか、誰もが使っているものじゃないですか。

だからこそ、広告という領域だけに縛られず、映画でも音楽でも何でもいいのですが、言葉が介在するところでどんどん自分なりに「言葉が役に立てたな」「言葉があってよかったな」とか、「自分がそこにいたからこうなったな」という仕事を1つでも増やしていきたいんですよね。

それらを全て踏まえた上で、最後にお伺いしたいのですが、カツセさんにとって「企画する」とはどういうことでしょうか。

 

カツセ:うーーーーーん……難しい質問ですね……。僕自身は、何かを企画する仕事に対し、すごく好きというか、憧れのようなものがあったんです。新卒で会社に入る頃から、企画開発職とか企画営業職とか、そういうのになりたいと思っていて。

その全ては、僕自身が何も無い人間で、今でも何者でもないというところが根っこにあるからこそなんです。

だから、自分が思いついた企画で誰かが行動したり、誰かが少しだけハッピーになったりとかを作ることができたら、それって何かこう、自分が生きる意味と感じられる瞬間じゃないかなと思っているので。

 

阿部:なるほど。

 

カツセ:で、今のが「たとえば」になるので……。

 

阿部:(笑)

 

カツセ:「つまり」、つまり僕にとっての企画とは……生きること。企画を通して、生きる意味を見つけること、ですかね。

 

まとめ

(▲実際に会って話すのは今回が初めてだったというカツセさんと阿部さん。「言葉」でメシを食っているお二人は、年齢だけでなく仕事や生き方に対する考え方も非常に近い部分があり、初対面とは思えないほど意気投合していました)

 

以上、カツセさんによる「書く仕事」のお話、いかがだったでしょうか。ポイントをまとめると以下のようになります。

 

 

今回のお話から、あなたはどんな学びや気づきが得られたでしょうか。あなた自身の日々の企画に活かし、人生を“ちょっと良い方向”へと変化させるヒントになったなら幸いです。

 

それでは、次回の企画の話もお楽しみに。

 

インタビュー:阿部広太郎 文:森川ヨシキ 撮影:衣斐誠 企画協力:企画でメシを食っていく(運営・BUKATSUDO)

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