晋平太に聞く【後編】「とにかく自分を好きになってほしい。それがヒップホップなんだ」連載:大人の学び 第2回

2017/6/24 11:31 ネタりかコンテンツ部

私たちは、日々何かを企画しながら生きています。

新しいイベント、月末の旅行のプラン、今日の晩御飯のメニューetc……。仕事はもちろん、日常生活の中でも「企画」をする機会は訪れます。だからこそ、企画を特別なものとして距離をおくのではなく、自分の人生をちょっと良い方向に変える手段として捉えてみる。そうすることで、少しずつ変化は起きていくのかもしれません。

 

「自分はこれから何をして生きていきたいか」、「自分はこれからどんな世の中をつくりたいか」。これらをテーマに、コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する講座が「企画でメシを食っていく」(通称・企画メシ)です。

 

各業界の現場の第一線で活躍される方たちをお招きして「企画」の捉え方・考え方について伺っていく企画メシ。こちらの連載では、「大人の学び」をテーマに、自分の人生を企画していくためのヒントをお届けしていきます。

 

今回のテーマ:「ラップ」(後編)

※前編はこちら

 

 

話し手(写真左):晋平太

1983年生まれ、東京都出身のヒップホップ・アーティスト。2004年デビュー。ドリーミュージック所属。MCバトルの大会に数多く出場し、2005年にB-BOY PARK MC BATTLEで優勝。2010年と2011年には、ULTIMATE MC BATTLE(UMB)の全国大会で史上初の2連覇を成し遂げる。

また、『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)審査員他、テレビ番組にも出演。全国各地でラップのワークショップを開き、日本語ラップの普及活動を行っている。2016年12月、フリースタイルのスキルのすべてを詰め込んだ入門書『フリースタイル・ラップの教科書 MCバトルはじめの一歩』(イースト・プレス)を発売。

 

聞き手(写真右):阿部広太郎

1986年生まれ。2008年、電通入社。人事局を経て、コピーライターに。「世の中に一体感をつくる」という信念のもと、言葉を企画し、コピーを書き、人に会い、つなぎ、仕事をつくる。東京コピーライターズクラブ会員。宣伝会議コピーライター養成講座「先輩コース」講師。

世の中に企画する人を増やすべく、2015年、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」を立ち上げる。初の著書『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』(弘文堂)を出版。

 

※本連載は、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」(通称・企画メシ)における講義内容を、対談形式に再編集したうえで一部内容をネタりかにて補足したものとなります。

企画メシ:http://kikakumeshi.jp/

大人のための街のシェアスペース・BUKATSUDO:http://bukatsu-do.jp/

 

ラップに関わる仕事なら何でもやりたいからこそ、「自分が納得できるかどうか」を一番大事にしたい

 

阿部:晋平太さんが仕事をしていくうえで、大切にしている自分なりのルールはありますか?

 

晋平太:そうですね。ラッパーにも当然いろんな仕事があります。曲つくる、ライブやる、フリースタイルに出る、本を書く、イベント出る、その他もろもろある中で、僕は「ラップに関わる仕事で、自分が納得できることなら何でもやる」と言っています。

 

阿部:それは逆に、納得できないことはやらない、ということでしょうか。

 

晋平太:適当なことやっても仕方ないですしね。どんな仕事をやるときでも、自分の中でベストというか、とにかく「自分の中では気に入ってるぜ」ってものをつくりたいじゃないですか。

もちろん自分はカッコいいヒップホップが好きでラップをはじめたわけですが、おもしろおかしいwebCMでも居酒屋とかで使われるようなラップでも、「これってちょっといい経験だな、笑えるな」と自分で思えれば、それは仕事としてアリです。

かけた時間や情熱には比例しないかもしれないですが、自分の中で納得できるものができるかどうか、ですね。

僕はやりたくないことは「やれない」って人間だということを、郵便局員時代に学べた(※支局でぶっちぎりの「誤配のエース」だった)ので。

 

阿部:でも仕事って、「やりたいこと」「やりたくないこと」の中間が多いと思うんですが、そういうときはどう判断してるんですか?

 

晋平太:ギャラで決めます。(笑)

 

阿部:なるほど。(笑)

 

晋平太:いや、結局カネが全てだよ、とかそういう話ではないですよ。いくら積まれてもやりたくないことはやらないんですけど、悩むような仕事についてはやっぱり「ギャラいいのか?」っていうのは大事になります。

ベストをつくして何とか着地を上手く決められるように頑張れるかどうか、という判断材料として大きいですからね。

 

一番の楽しみは誰かのラップ童貞を奪うこと。それがラップ全体の盛り上がりにもつながる

 

阿部:晋平太さんが一番楽しく感じるのって、どういうお仕事なんですか。

 

晋平太:もちろんライブやってるときとか、集中して曲つくってるときとかは楽しいです。

ただ僕、誰かの「生まれてはじめてやったラップ」を聞くのがすごく好きなんですよ。僕がラップ童貞を奪ってやりたいというか(笑)。だからいろんなところでラップを教える活動してるんです。

 

阿部:どの辺に魅力を感じているのでしょうか。

 

晋平太:なんていうか、決して皆さん上手ではないんです。でも、中途半端にプロ目指してる人のものとか聞くより、いろいろな言葉が詰まってて。お世辞とかじゃなく、聞いてて全部がいいんですよ。一生懸命やってると、思いもしない何かが生まれたりとかもするわけで。

 

阿部:その体験をきっかけにラップを続けてほしい、という狙いが?

 

晋平太:いや、その人がまたラップをやるかどうかは別にいいんです。でもラップを通して、人が変わる瞬間があるんです。一瞬だけでも何かが弾けたとか、爆発したとか、そういう感情を引き出せたらけっこう素敵じゃないですか。

単純に「今日ラップやってみて楽しかったー!」っていう気持ちで帰ってもらえれば、最高にラップに興味持ってもらえてる状態なわけで。

 

だから、実際にラップやってもらって、その気持ちよさや面白さを肌で感じてもらうことが、僕は一番嬉しいですね。結局ラップというジャンル自体もそれで盛り上がっていくと思うので。

 

阿部:まさにラップの伝道師、という考え方ですね。

現在の事務所に移籍された際も「一億総ラッパー化計画」を自身の夢として語られていましたが、そこまでのビジョンを持ってやってらっしゃる方って、晋平太さんぐらいしかいないんじゃないですか?

参照:「フリースタイルラッパー 晋平太  ドリーミュージックアーティストマネージメント所属のお知らせ」 http://dreamusic.co.jp/news/26033.html

 

晋平太:他の人がどう考えているかはわからないですが、ラップはいろんな人がやったほうが絶対面白いんですよ。別に不良じゃなくても、主婦とか研究者の人とか警察官とか、誰でもいいんです。

例えばこの前、イベントで70歳ぐらいのおばあちゃんにいきなりラップやってもらうっていう無茶振りをしたんですが、「これまで3回離婚したけど、来月4回目の結婚する」みたいなストーリー展開になって、会場中がマジですげぇなって沸いて。(笑)

ラップなら、そういうミラクルだって生まれるんです。上手かどうかよりずっと大事なことってあるじゃないですか。だから、一人でも多くの人にラップやってもらいたいし、やってもらっただけ僕も面白いラップが聞けるんです。

 

ラップは韻よりもストーリー。まずは自分の想いを素直に伝えることだけを考えればいい

 

阿部:では、晋平太さんの考える“いいラップをつくるうえでのコツ”みたいなものを教えていただけないでしょうか。どうやって韻を踏めばいいとか、はじめてではいろいろ難しいところも多いと思うのですが。

 

晋平太:まぁ韻について言えば、簡単なのはとにかくリリック(歌詞)の母音を合わせることです。でもこれ落とし穴があって、ぜんぜん響きとしてライム(韻を踏む)ができてないのに母音だけは合ってる、なんてことも起きちゃう。だからまずは響きを重視することですね。

でも、何文字踏んでるとか踏んでないとか、そんなの本当は全然関係なくて、一番重要なのはそれがストーリーになってるかどうかです。

 

阿部:ラップは韻よりもストーリー、ですか。

 

晋平太:結局は、その人自身にとっても聞いてる人にとっても、ストーリーが伝わるかどうかなんですよ。

 

僕が一番好きなライムは大先輩 K DUB SHINEさんの

ホントいつもしてた親不孝
そのうち連れて行くよオアフ島

ってやつなんですが、これ誰が聞いてもめちゃくちゃ意味わかるじゃないですか。

 

「親不孝」と「オアフ島」で韻を踏んでるんですが、モノすごくストーリーになってる。昔すげぇ悪かったんでしょうね、この人。で、成功して親をオアフ島に連れてってあげたいな、と思ってるんでしょう。

これこそが、いいラップです。まずストーリーになってて、それで響きまで良ければ120点。

 

阿部:たしかに、聞いた人全員に伝わりますねこれは。

 

晋平太:ラップってはじめてつくると自己紹介的なものになると思うんですが、そういうラップって自分の弱いところを晒しがちになるんですよ。それって、実は自分自身がみんなに「わかってほしい」と思ってるポイントでもあるんです。

親不孝とか、孤独とか、本当は強がってるとか、そういう言葉がどんどん出てくると思います。ラップを通すことで、本当の自分みたいなものがすごくわかってくる。

だから、韻が揃ってなくても意味が通ってる、気持ちが込められてる、というのが本当のライムなんです。

 

阿部:自己紹介をラップでやるとか、みんなでやるとすごく盛り上がりそうですね。いいライムは、キャッチフレーズにもなりそうです。

 

晋平太:普通に自己紹介の文章考えるより、ずっとその人のパーソナリティーが見えてくると思いますよ。

ラップじゃなかったら絶対言わなかったようなことも言ってしまう。そういうラップならではの良さをもっと活かせるようにできるといいですね。

イベントやってるとわかるんですが、台にのせれば意外と誰でもラップならやるんですよ(笑)。それでラップが面白くなって、韻を上手く踏みたいってなったらまぁ練習するしかないんですが、まずは率直に自分の想いを伝えるようになれればいいんです。

 

いい言葉とは、その取捨選択の過程の中で発見され、磨かれていくものである

 

阿部:いいライムというか、強い言葉を生み出す秘訣みたいなものはあるのでしょうか。

 

晋平太:フリースタイルだと特にそうですが、ラップってやっぱり連想ゲーム的なところがあるんですよ。言葉が次の言葉を呼んで、どんどん思いもよらないところに到達する面白さですね。

だからこそ、ラップをつくるときはまず「テーマ」を決めるようにしましょう。ストーリーが一番大事ということは先ほど説明しましたが、全体で共通の“あるテーマ”に沿ったストーリーがあり、そのストーリーをつなぐために言葉がある。テーマがなければ、結局は言葉遊びにしかなりません。

 

阿部:企画書をつくるときも同じですね。テーマがブレると何も伝わりません。

 

晋平太:逆に、テーマからメインのストーリーさえできあがれば、そこからはどんどん言葉をつなげばいいんです。

似たような言葉もいっぱい浮かぶと思いますが、その中で組み合わせを見つけたり、より強い言葉を探したりすることで、どんどん磨かれるようになります。

 

阿部:先に韻などから考えるのではなく、ストーリーにとってベストな言葉を探すわけですね。

 

晋平太:そうしていく中ではじめて、一発でバコンとくる「パンチライン」ってやつが浮かんでくるんですよ。理屈じゃなく「キタ!」って言葉が突然くる。その瞬間のためにラップやってるといっても過言じゃないやつが。

 

そして言葉に「感情」を入れていくんです。たとえば「明日をつくる」なら、それはどんな明日なのかとかを、言葉で補足していく。

そうやってひと通り仕上げたあと、一回自分で歌ってみて、歌いづらいワードや響きを調整すれば完成です。

 

阿部:「明日」は「あした」なのか「あす」なのか、などの微調整でも全然印象は変わりそうですね。

 

晋平太:まぁ結局は、実際に思ってることが言葉としては一番強いんです。ただ、それにプラスして、出てきた言葉の中からどれを使おうかと自分で選んだ過程。これが人に何かを伝えるうえで、すごく大事になるんです。

同じ内容でも、伝え方で全然印象って変わるじゃないですか。記憶に残るかどうか、パンチラインになるかどうか。いろいろ言葉を取捨選択していく中で、はじめて発見できることもたくさんあるんです。

 

阿部:相手に何かを伝えようとする仕事の全てにおいて、共通することですね。

 

とにかく自分を好きになってほしい。それがラップ、それがヒップホップ

 

阿部:ところで晋平太さんにとって、ラップってどういう存在なんでしょうか。

 

晋平太:改めて定義すると……自分にとっては「思っていることをバンって出せる、伝えたいことを伝えられるもの」ですかね。

そんなの普通に口で言えよって思うかもしれませんが、ラップって自分の過去やこれからをすごく掘り下げる作業と、それを外に出す作業とが両方入るので、自分自身を見つめ直すためのすごくいい機会になるんですね。

だからこそ面白いし、みんなでやっても盛り上がるんだと思います。

 

阿部:では「晋平太さんがつくるラップ」とは、どういうものなんでしょうか。

 

晋平太:そうですね……。最近特に思うのは、人に必要とされるもの、人に作用するものでありたいなと。

全然心に入ってこない音楽もあれば、「これ自分に言ってる!」って感じる音楽もあるじゃないですか。それって作用する場所の違いもあるんですが、少なくとも僕は目の前の人に対して何か作用するようなラップをつくりたいなと。

これは誰かの役に立つのかとか、誰かの助けになるのかとか、そういうことを曲づくりのときはよく考えるようになりました。

 

阿部:なるほど。では、今後挑戦していきたいことは何でしょうか。

 

晋平太:それはもう、子供からお年寄りまでみんながラップを楽しむ世の中をつくることです。

高齢者ほど面白いでしょうし、遺書ラップとか絶対感動するはずなんで、もう終活の1つとして組み込んじゃえばいい。ラップってその人の人生を語るわけだから、過去とかも詳しく話すだろうし、それをみんなで楽しめる世の中になったほうが絶対いい。

 

阿部:ラップを考えると、たぶんそれまでの自身の過去も肯定できますよね。

 

晋平太:そうそうそう! そこがすごくいいんです! 僕がラップを通して人に言いたいことというか、なぜラップをやってそれを人に教えてるかというと「とにかく自分を好きになったほうが絶対にいい」ってことを伝えたいからなんです。

だってせっかく生まれてきたのに、自分で自分を好きになれなかったら、他人も好きになってくれるはずがない。そして、自分を好きになれないヤツは、結局他人を好きになることもできないと思うんですよ。

 

でも、自分を嫌いになる理由があるなら、好きになる理由だって見つけられるはずじゃないですか。

 

そりゃ生い立ちや環境とかいろいろ違いはあるでしょうけど、自分の気持ちひとつでそれに対する考え方は変えられるし。モノすごく辛い思いをしている人だっているでしょうけど、それでも自分を嫌いなまま、恨んだまま生きても意味は無いわけじゃないですか。

 

阿部:だから自分を好きになったほうがいい、と。

 

晋平太:僕は自分のことが好きだし、僕のラップを聞いてくれた人には自分自身のことを好きになってほしい。それが一番なんです。そのついでに僕のことも好きになってくれたら、なお嬉しい。

だって、誰もが自分自身の人生を生きてるわけじゃないですか。僕は誰かの人生を代わりに生きてあげることはできないし、晋平太という人生の代わりをやれる人もいないわけです。だから、誰もが自分自身が主人公として生きていける人になってほしいんです。

そのための武器が、僕の場合はラップだった。今でも自分に自信が無いときはラップで鼓舞してます。なんかこう言うと自己啓発みたいだなって思うかもしれないですけど、それでみんなの役に立つならそれでいいんです。

 

阿部:熱い思いを語っていただき、ありがとうございます! それでは最後に皆さんへのメッセージをお願いします。

 

晋平太:とにかく自分自身を好きになってほしい、そしてヒップホップは意外に楽しい、ということだけわかってもらえたらそれで十分です。

僕は生きてるうちに「一億総ラッパー化計画」というものを実現したいと思ってるし、最後までこの話を聞いてくれた人なんかは、もうラッパーの一人だと思っています。だから、この先も少しでもラップを好きな人を増やせるよう、どこかで機会があれば協力してください!

 

まとめ

 

以上、前・後編に渡ってお届けした晋平太さんによる「ラップ」のお話、ポイントをまとめると以下のようになります。

 

 

今回のお話から、あなたはどんな学びや気づきが得られたでしょうか。あなた自身の日々の企画に活かし、人生を“ちょっと良い方向”へと変化させるヒントになったなら幸いです。

 

それでは、次回の企画の話もお楽しみに。

 

<前編はこちら>

 

インタビュー:阿部広太郎 文:森川ヨシキ 撮影:八木伸司 企画協力:企画でメシを食っていく(運営・BUKATSUDO)

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