「映画の予告編ってどうやって作っているの?」 映画 #ママダメ の監督に聞いてみた

2017/6/14 11:31 ネタりかコンテンツ部

こんにちは、映画が大好きなライターの砂流(スナガレって読みます)です。

突然ですが皆さんは、劇場で流れる「新作映画の予告編」を見るのは好きですか?

映画本編の魅力がキュっとまとめられた予告編があることで、「この映画、楽しそう」「見に行きたい」という気持ちが高まるわけですが、そもそもこういう映画の予告編ってどうやって作られているのでしょうか。

気になったので、知り合いの映画監督に話を聞いてみることにしました。

 

話を聞いた映画監督

今回お話を伺ったのは、映画監督の谷内田彰久さん。

 

 

谷内田彰久(やちだ あきひさ)

大阪芸術大学映像学科卒業後、深夜ドラマ制作に携わる。24歳の時にドラマ『苺リリック』を担当し、監督として独立。以降『天使のココロ』『僕の彼女にプレゼンします!』『ヒーローズ』『あいまいな殺人』『助っ人チェリー』など、TVを中心にドラマやCMなどを多数制作。2016年10月MBS/TBS放送『拝啓、民泊様。』の原作および監督を務める。

Twitter:@nafcopank
Facebook:https://www.facebook.com/nafco.yachi

最新作は5月27日より公開中の映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』(通称「ママダメ」)

 

映画の予告編は、予告編制作専門の会社が作るもの

 

―― 映画の予告編は、一般的にどうやって作られるものなのか教えてください。

まず作品が完成したあと、配給会社や宣伝会社の担当者たちと会議をおこない、プロモーションの方向性を決めるんですね。そこで作品の要素などを再整理しながら、キャッチコピーや劇場情報やキャスト名などのテロップ内容を決め、最後は予告編制作専門の会社に制作を依頼します。

 

―― 監督や映画制作スタッフの人が作るわけじゃないんですね。

予算がなければ自分たちで作ることもありますが、基本的には専門会社に外注ですね。時間の問題などもありますが、監督や関係者は予告編の制作はしないほうがいいっていうのもあって。

 

―― どういうことでしょうか。

ほら、やっぱり作品に対する本人的な思い入れとかあるじゃないですか。セリフもシーンも最初から最後まで全部覚えているし、自分が好きなカットもたくさんある。

でも、予告編ってそもそも「この映画を見たことがない人」が見るものだから、こちらの「ここを見てくれ!」と見る人の「これは楽しそう!」というポイントの差は案外大きくて。自分たちで作ると、つまらなそうなものやシュールすぎるものができちゃう可能性が案外高いんです。

 

――なるほど。それにしても映像制作会社とは別に、予告編制作の専門会社があるとは知りませんでした。

まぁ普通は知らないですよね。日本の作品だけではなく、日本で公開される海外映画の予告編とかも作っていますよ。

 

―― 予告編制作の基本的な作業工程を教えてください。

そうですね。まずは最初にざっと映画を見ます。一回見れば重要なシーンなどはわかるので、次にそういう場面の絵をざくざく抜き出します。並行して文字などのエフェクトを作り、それらをつなげ、調整し、一旦何も音がない状態での予告編を完成させます。

続いて音楽スタジオで、「ダビング」をおこないます。音楽やナレーション、効果音などを入れ、台詞のノイズなんかを調整する作業ですね。それで完成です。

 

―― 予告編は何編ぐらい作るものなんでしょうか。

外注すると、まずはラフで4パターンくらい出してくれるので、どのパターンが良いかをこちらで選びます。そしてそのパターンをもとに、最低3編が作られますね。日本の映画館の場合、予告編の尺(秒数)が30秒、60秒、90秒の3つと決まっているので。

 

―― 予告編の制作費用ってどれぐらいなんですか。

うーん、プロモーション費用全体の中の一部みたいな位置付けになるんですが、外注金額としては安くて30〜40万円くらいですかね。パターン数によっては増えるし、ナレーション入れたりするともっと増えるけど、おおよそ100万円〜150万円ぐらいなんじゃないかな。

60秒版を半分にして30秒版を作るわけではなく、それぞれの尺にあわせて個別に作るので、結構時間がかかるんですよ。あと、編集スタジオと音楽スタジオを借りる費用とかもかかるので、すごく安くとかは無理なんですね。ちなみに今はUSBでデータ納品できるのでお互いラクなんですが、テープで納品してた頃はもっとお金がかかってましたね。

 

 

―― 海外の劇場で流されている予告編は、日本のものとはどう違うのでしょうか。

海外の劇場の場合、予告編の尺が2分30秒くらいあるんですよ。YouTubeなどで見たことある人も多いと思いますが、2分30秒あれば作品自体の内容をしっかり紹介できます。

それに対し、日本の劇場で流れる予告編は尺が短いため、どれも似たような作りになってしまいがちです。ナレーションで説明が入って、テキストで説明が入って、主役の男女のキャストの名前がバーンって入って……みたいな。とにかく、文字ですごく説明が入ります。

 

―― 短い秒数だと、伝えられることが限られますもんね。

海外の予告編はお客さんに考えさせる内容になってるものが多いかもしれないですね。必要最低限のテーマがあり、そこにまつわる要素というかエッセンスを見せる的な。

 

―― 日本では、どうして長い尺の予告編ができないのでしょうか。

映画館の数に対して公開される映画の本数が増えていること、シネコンなどスクリーン数の多い映画館が増えていることが主な原因だと思います。

要は、たくさんの映画を宣伝しなくてはいけないので、1本あたりの予告編の時間を短くするしかないんですよ。本編が始まる前に10本以上の予告編が流れてくる、なんてことも珍しくないと思います。

しかも、時間が短い分、どうしても似たフォーマットの予告編ばかりになってしまいます。映画の予告編がイヤという人は、その辺で「飽き」がきてしまっているのかもしれませんね。

 

―― 日本の映画館で流れる予告編には、そんな問題があったんですね。

そうなんですよ。だから今公開している僕の監督作品『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』(以下、「 ママダメ」)では、ちょっと違う感じの予告編を作りたいなって思って。

劇場で流すやつはもう無理ですけど、新しくweb用にイチから作るので、その工程も紹介したいと思います。

 

いつものフォーマットではない予告編を、実際に作ってみよう

というわけで「ママダメ」の新しい予告編を作ることになりました。この記事用の「作ってみた」とかでなく、ガチでweb展開用の予告編として使うやつだとか。

しかも作り手として谷内田監督が呼んだのは、専門会社でも映画スタッフでもなく、モデルのヴィエンナさん。

 

 

ヴィエンナ

タイ×香港のハーフ。日本的美少女フェイスがたちまちTwitterで話題を呼び、モデル活動する以前から自身のTwitterのフォロワー数が50000人以上という驚異的な数字を叩きだす。2014年4月より、来日。ディズニープリンセスやハリー・ポッターなどのコスプレメイクが話題となり、SNSフォロワー数は約40万人。

引用:TWIN PLANET ENTERTAINMENT公式ページ

Twitter:@ViennaDoLL

 

ヴィエンナさんは、洋画・邦画問わず毎月何本も映画を見ている映画好きで、現在はデジタルハリウッド大学でデジタルコミュニケーション学部デジタルコンテンツ学科を専攻しているというクリエイティブ志向の強いモデルさんだとか。

とはいえ、専門家でも何でもなく“ただの映画好きの女の子”です。映画の予告編を作るのも、もちろんはじめて。(ちなみに作品にも出演していません)

 

そんなヴィエンナさんに監督が予告編を作らせようと思った理由は「今どきの映画好きの若い子が、自由に映画の予告編を作ったらどうなるか知りたいから」、そして「いま僕的にイチオシのモデルだから」とのこと。

果たしてどんな予告編ができあがるのでしょうか。

 

そもそも「ママダメ」ってどんな映画なの?

 

Facebookで生まれたノンフィクション・ ラブストーリー。ある日Facebookで偶然知り合った台湾人・リンちゃん(ジエン・マンシュー)と日本人・モギさん(中野裕太)。恋愛にはちょっと奥手の日本人男性と全力で好きな男性にぶつかっていく台湾人女性という2人が繰り広げる恋愛模様に、恋に臆病になってる人はきっと勇気づけられるはず。果たしてモギさんは、「リンちゃんのママ」という最大の障壁を乗り越え、無事リンちゃんとゴールインできるのか!?

 

公式サイトはこちら

 

現在公開されている実際の予告編がこちら

 

実際に作ってみよう

 

この予告編は何を意識して作ったか、についてヴィエンナさんに説明する谷内田監督。そして大まかなストーリーのラフを、その場で一緒に設計していきます。

 

 

できあがった制作ラフ。そしてここからは一人で編集作業をおこなってもらいました。制作にかかった時間は約3週間。これをガチでモデルの女の子(しかも出演してない)にやらせるあたり、凄い監督だなと思いました。

 

ヴィエンナさんが3週間かけてガチで作った予告編がこちら

 

実際の予告編と見比べてみて、皆さんはどんな印象をもたれましたか?

 

ヴィエンナさんがこだわった編集ポイント:

「変わったものを作りたいなと思ったのと、自分が映画を見て印象に残っているシーンを取り出しました。もっといろんなシーンを入れたかったんですけど、実際に入れると予告としては長く感じてしまったり、表情はいいけど台詞がつながらなかったりしたので、わかりやすいシーンを選ぶようにしました。一番大事にしたポイントは、『国や住んでいる場所が違っても、言語が違っても、SNSで出会える』というメッセージ性です」

 

ちなみにこちらの予告編は、PCの映像編集ソフトなどは一切使わず、全て「VivaVideo」というアプリを使ってスマホで作ったそうです。

 

 

ヴィエンナさんは、普段からインスタ用の動画もこちらのアプリで作っているそうですが、映画の予告編までスマホで制作できてしまうというのは凄い時代ですよね。

文字やナレーションなども全部自分で入れたそうです。さすがに粗いなという箇所も多少はありますが、本編に対しての興味を惹かれる予告編に仕上がっているのではないでしょうか。

 

 

ヴィエンナさん版の予告編を観た谷内田監督の感想:

「可愛いシーンをちゃんと切り取ってくれていますね。あとドラマパートからのシーンのつなぎを意識してくれてるのは嬉しいと思いました。ナレーションを入れてくれたのは完全予想外」

 

そして谷内田監督は、このヴィエンナさん版の予告編を実際のwebで展開できる作品にブラッシュアップするため「予告編を作るプロ」に最終的な仕上げをしてもらう手配をしたとのこと。

後日、監督とヴィエンナさんと一緒に、そのプロのもとを訪れることになりました。

 

日本アカデミー賞まで獲ってる予告編のプロが仕上げることになった

こちらが「予告編を作るプロ」の佐藤さん。

 

 

佐藤敦紀(さとうあつき)

株式会社TMA1 代表取締役。1961年生まれ、愛知県出身。IMAGICA特撮映像部を経て、VFXスーパーバイザー&映画予告編ディレクターに。『エヴァンゲリオン』の劇場版や、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』、『るろうに剣心』などの予告編を制作。『シン・ゴジラ』で、第40回日本アカデミー賞最優秀編集賞。

Twitter:@back_asato

 

そんな佐藤さんが制作した有名な予告編がこちら。

 

ナレーションや字幕などが少なく、ほかの予告編とは違ったオリジナリティがありますね。

 

 

このとおり日本アカデミー賞も受賞しているプロ中のプロ。軽い気持ちではじめた企画だったのに、想像以上の大物のところにきてしまいました。

 

 

というわけで、(最初から佐藤さんに頼めばよかったんじゃないだろうか、など個人的に思いつつ)まずはヴィエンナさん版のママダメ予告編を観てもらいました。

 

ヴィエンナさん版の予告編を観た佐藤さんの感想:

「谷内田さんと同じくナレーションにはちょっと驚きました。非常にオリジナリティがある。また、メッセージが届いた時の着信音が非常に良いなと思い、そこは最終版でも使わせてもらうことにしました」

 

 

ある程度すすめたところで、「このまま僕がやり切っちゃうと、僕の予告になっちゃうから……」ということで、以降の編集はアシスタントの梅脇さんにバトンタッチ。

梅脇さんは、ヴィエンナさんからの意見を聞き出しながら、つなぎ直しをしてくれました。

 

 

そして別日には音楽スタジオに入り、音楽やナレーションを入れるダビング作業もおこなわれました。

音楽スタジオは「ママダメ」本編のダビング作業をしたのと同じ場所。作業をしてくれたのは、作曲家でもあり、音楽関係のエンジニアでもあるマリモレコーズの江夏さん。

 

こうして完成した「web版ママダメ予告編」がこちら!

 

 

修正前と比べて、いかかでしょうか。台湾と日本の遠距離恋愛をしている状況や心理描写がわかりやすく、お母さんの存在も際立っています。これはたしかに興味を持って本編を見たくなりそうですね。

 

最後に、谷内田監督とヴィエンナさんに完成版の感想を聞いてみました。

 

 

谷内田監督「まかせてよかったなと思いました。僕ではもう違う見方をできなかったのでユーザー目線にたった予告にしてくれたんじゃないかと思う」

 

ヴィエンナさん「頭の中でイメージしてるものが、なかなか形にできなくて、本当に悩みました。素敵な作品の世界を壊さないように、作りながら、友達にも沢山アドバイスを聞いたりして、助けてもらいました。編集中は、映画を何回も見返してたんですが、とても素敵なシーンばかりで何度見てもニヤニヤしてしまいました(笑)。この気持ちがみんなに届くような仕上がりになってたらうれしいです!」

 

まとめ

 

「映画の予告編ってどうやって作るの?」という素朴な疑問から、一連の予告編制作過程を全て見せてもらえることになり、とても勉強になりました。

 

今回の題材となったママダメは取材前に僕も一人で見てきましたが、本当にFacebookで出会った2人だからこそのすれ違いやもどかしさのドラマがあり、ドギマギしつつもほっこりした気持ちになれる素敵な映画でした。

あと、ヒロイン役のジエン・マンシューさんがめちゃくちゃ可愛いうえに表情豊かなので、彼女を追いかけてるだけでも幸せな気持ちになれます。

 

気になった方は、ぜひ劇場に足を運んでみてください。それでは!

 

取材協力:『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』

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