「陳情」って誰でもできるの? 何を訴えてもいいの? 名前は聞くけどよく知らない制度なので聞いてみた

2017/6/12 19:01 ネタりかコンテンツ部

こんにちは、ライターの榎並と申します。

みなさんは「陳情」をしたことがあるだろうか? ちなみに僕はない。まあ、普通はないと思うが。

議員や居住地域の議会に対する「陳情」は、政治に不満を抱く人、モノ申したい人がおこなうイメージ。実際そのとおりなのだが、時には「地域の身近な問題」について公正な解決を求めるために、陳情という形がとられるケースもあるようなのだ。

僕もいつか、権力に頼らざるを得ない難しい問題に巻き込まれたり、区政に何かを訴えたい想いにかられたりすることがあるかもしれない。その日に向けて、「陳情のお作法」を取材してみることにした。

 

みんな、さまざまなことを「陳情」している

まずは、「ちよだ区議会だより」を熟読することにした筆者。

 

 

そこには筆者が住む千代田区の区政にまつわる、さまざまな世情や動向が詰まっていた。普段、政治に特別関心があるわけではないが、自分が暮らす街の課題や計画について知るのは、なかなか楽しい。

特に参考になったのが、「委員会に送付した陳情」のコーナーだ。そこには区民から区議会に寄せられ、委員会へと送付された「陳情」の一覧が掲載されていた。

 

引用:「ちよだ区議会だより」No.230

 

上記以外にも、条例の制定に反対するものや喫煙所の増設を求めるもの、さらには川をきれいにしてほしいといったものまで、じつにさまざまなことが陳情されている。なかには「えっ? そんなことまで?」と驚かされる陳情もあった。おもしろいといったら語弊があるが、政治がらみでない訴えや個人的な思い入れが発端になっていそうな訴えのほうがどこか生々しく、切実なものを感じるのだ。

以下、その一例を紹介していこう。なお、これらは区のウェブサイトでも公開されている。

 

まずは、何かしらの存続を訴える陳情から。

 

 

「軽井沢メレーズ(メレーズ軽井沢)」は、避暑地・軽井沢にある千代田区の保養所。千代田区在住、あるいは在勤・在学の人だけが利用できるようだ。

 

 

陳情の主は消滅の危機に瀕する「アイヌ語」を保全および継承すべく、学校図書館や市立図書館にアイヌ語関連の図書を設置することなどを求めている。

次に、自らの思想や社会への理想を、陳情という形で託すケース。

 

 

また、訴えている内容は同じなのだが、さまざまな角度から複数の陳情を出すケースも。

 

 

区内で計画されていた樹木の伐採中止と街路樹の保護育成を求める陳情なのだが、

 

 

「生命と歴史を尊ぶ」「千代田区内の象徴」など、印象的なフレーズを盛り込むパターンや

 

 

街路樹により千代田区に良好なイメージがもたらされていることを、分かりやすく集約したパターンも見られた。

なお、その熱意が通じたのか、これは訴えが認められ、千代田区の樹木は伐採の難を逃れたそうだ。

 

また、一風変わったタイプの陳情としてはこんなものが。

 

 

餅つき大会への補助金の着服という、町会規模で起こった事件についてのもの。さらに、

 

 

陳情の取り扱いの改正を陳情によって求めるという、なんだかややこしいものも。

 

他にも、「学校給食の献立を可能な限り無農薬無添加の食材を使った和食にするよう求める陳情」など、親の愛情が感じられるものもあり、本当に多種多様という感じだ。

ちなみに、これらの陳情はいずれも正式に受理されたものである。

 

陳情のお作法について学ぼう

さて、僕もいつか子どもを持つことになったら、給食を和食にしてほしいと訴えたくなるかもしれない。しかし、恥ずかしながらこれまでの人生において「陳情」について考えたことはほぼなく、そのやり方やルール、お作法について何も知らない。

そこで、千代田区議会事務局の職員の方に、陳情のイロハを聞いてみることにした。

 

 

応対してくれた職員さんは2名。陳情ビギナーの僕に、やさしく、詳しく教えてくれた。

 

ーー そもそも陳情って、どうやって出せばいいんでしょうか?

じつは「陳情」には決まったやり方というものが存在しません。ですので、自治体によってルールは異なります。

 

ーー 法律でやり方が決まっているわけではないんですね。

区民のみなさんがご意見やご要望などを区議会へ直接提案できる制度として法で定められた「請願」というものがありますが、こちらは議員の紹介を必要とするなど、一定の決まりがあります。ですが、陳情については市区町村によってバラバラ。郵送で受け付けるところもあれば、窓口での直接受け付けが原則となるところもあります。

 

ーー なるほど、ちなみに千代田区の場合は?

千代田区では郵送も窓口対応も受け付けています。「陳情したいんですけど」と直接来られる方もけっこういらっしゃいますよ。ただ、陳情書のフォーマットは決まっていて、件名は40文字まで、内容は1500文字まで。文字数をオーバーしていたら削ってもらい、再提出していただきます。

 

とはいえ、何でもありというわけではない

 

ーー 内容はどんなものでもOKなんでしょうか?

もちろん何でもありというわけではなく、陳情として取り扱わないものもあります。たとえば個人間の中傷であったり、名誉を傷つけるもの、裁判などで係争中の事件に関わるものなどもそうですね。また、原則として私人間の争いに関するもので、互いが自主的に解決すべきものなども取り扱いません。

 

 

ーー つまり、お隣さんの庭の木が目ざわりだから切ってくれ、みたいなご近所トラブルとかは受理されないわけですね。

提出された陳情は、議長判断により「議長預かり」となるケースがあります。そのうえで、各議員には「こういう陳情が寄せられていますので、ご覧になりたい方は事務局に申し出てください」とお伝えします。

 

ーー どんな内容であれ、「却下!」と突き返すことはないと。

直接窓口に来られた場合であれば「こういうものは難しいです」とご説明できるんですが、郵送で送られてくるものもありますので……。実際、私人間のトラブルにまつわる内容を陳情書として出される方もいらっしゃいますが、届いたものは「議長が預かりました」などの回答をさせていただいています。

ただ、これも千代田区の場合の話で、対応は自治体ごとに異なります。区によっては「いい加減な陳情は受け付けられない」ということで、対面での受け取りしか認めていない場合もあるようです。

 

ーー ちなみに、委員会に送付されたら、そこで陳情の内容を審査して多数決で決定するという流れですか?

そうですね、「これは区民生活に関わることだから地域保健福祉委員会で」など、陳情の内容によって担当の委員会を議会運営委員会で決め、そこで審査がおこなわれます。千代田区の場合は委員会で陳情の取り扱いを確定します。

ただ、うちの場合は少数意見もなるべく取り入れようということで、(委員会での取り扱いの結果にかかわらず)「こういう意見がありましたので、対応はしっかりやってください」と、執行機関である区に要望を出すことが多いです。

 

陳情する前に、区役所に訴えてほしい

 

ーー 窓口まで直接出向いて陳情される方って、どんな人が多いんですか?

「区にお願いしたけど聞き入れてもらえなかった、どうしたらいいでしょうか?」といった形で相談に来られる方が多いですね。そこで陳情のノウハウを知って、それから何度も来られるようになるケースもあります。

 

ーー 陳情にも常連がいるんですね。

ただ、区議会サイドとすれば、陳情を出す前に一度区役所に訴えていただきたいところではあります。執行機関はあくまで区役所です。区に言っていただければ、すぐに「わかりました」と対応してくれる内容だったりするケースもじつはあるんですよ。

区議会というのは執行機関ではなく、区のやり方が本当に適切なのかを監視するチェック機関なんです。ですから、順番としては、いったん区に訴えてみたけど意に沿わない対応をされた。だから陳情に来た。という流れをふまえていただきたいんですね。

 

ーー なるほど。じつは僕もこのあと陳情する気満々だったんですが、区役所に一度確認してからするようにします。今日はありがとうございました。

 

まとめ

というわけで、陳情はただ闇雲に主張をぶつければいいのではなく、自治体ごとの細かい取り決め、流れがある、ということがわかった。また、そもそもやたら出せばいいというものではなく、執行機関に働きかけたにもかかわらず、然るべき対応がとられなかった場合のカードとして切るべきものであるということも。

 

いつか渾身の陳情を出す日に備え、しっかり記憶にとどめておきたいと思う。

 

ライター/榎並紀行(やじろべえ)

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