「無断で撮られてネット上で晒される」を利用して広告効果を生み出すことは可能か?

2017/2/16 19:01 ネタりかコンテンツ部

私たちは「無断撮影」とどう向き合っていくべきなのか 私たちは「無断撮影」とどう向き合っていくべきなのか

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こんにちは、インターネット文化人類学者のセブ山です。

 

みなさんは「スマホ」を持っているでしょうか?

 

いまや国内のスマホ普及率は70%を超えるとも言われており、私たちの生活に密接に関わっています。

 

さまざまな便利な機能があり、なくてはならない現代人の必需品と言っても過言ではありません。

 

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そんな便利な「スマホ」が普及したことにより、人類は新たな問題に直面しました。

 

それが、「盗撮(無断撮影)」の問題です。

 

スマホに搭載されているカメラなら、簡単にすばやく写真が撮れるので、いつでも、どこでも、誰でもカメラマンになることができます。

 

あまりにも気軽に写真を撮れるので、あちこちで「勝手に写真を撮られてネット上で晒される」ということが起こっています。

 

怖いですね。

 

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▲Yahoo!画像検索「たわしおじさん」

 

しかしながら、そんな「勝手に写真を撮られてネット上で晒される」が上手く作用して、2014年ごろ、ネット上で話題になった人物がいました。

 

それが、たわしを散歩させる「たわしおじさん」です。

 

スーツを着て街中でたわしを散歩させているという「歪さ(いびつさ)」がウケて、あちこちで撮影され、その存在はネット上で拡散されました。

 

これこそまさに、SNS時代、スマホ時代が生んだ新しい形の有名人ではないでしょうか。

 

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このように、たわしおじさんの事例から、「勝手に写真を撮られてネット上で晒される」を上手く活用できれば、無名の人物を有名にするだけの広告宣伝効果があることがわかります。

 

それでは、「勝手に写真を撮られてネット上で晒される(無断撮影)」を逆手にとり、意図的に広告効果を得ることはできるのでしょうか?

 

ここであるひとつの実験をしてみたいと思います。

 

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「ふぇーふぇっふぇっふぇっふぇっふぇ!」

 

 

私たちは「無断撮影」とどう向き合っていくべきなのか

 

「意図的に無断撮影されて広告効果を得ようとしているヤツは、どこのどいつだぁ~~い?」

 

 

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スポンジおばあさん

たわしおじさんの「歪さ(いびつさ)」をさらに進化させた、スポンジを散歩するおばあさん。スポンジひとつひとつに愛情を注いでおり、すべてに元カレの名前をつけている。酔うとすぐに、元カレが女医と浮気した話をして「スポンジが女医に男を取られちまったなんて、とんだお笑いぐさだよ」とくだを巻くが、女医(じょい)と食器用洗剤(ジョイ)がかかっていることに誰も気づいていない。スポンジおばあさんの弟の嫁のいとこがスポンジボブ。

 

 

……というわけで、そんな「スポンジおばあさん」に扮して渋谷の街を歩くことにより、無断撮影され、ネット上で拡散されることを目指します。

 

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スポンジおばあさんの背中には、ただいま絶賛発売中の『インターネット文化人類学』(セブ山の著書)の書影を貼り付けておきます。

 

これにより、スポンジおばあさんを撮影すれば、必然的に広告が写り込み、その写真が拡散されればされるほど人々の目にとまって広告効果が期待できるという寸法です。

 

 

実験開始

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そんなわけで、いよいよ実験開始です。

 

スポンジおばあさんが渋谷の人ごみに紛れていきます。

 

あくまで自然に……街の風景から浮いた存在に……。

 

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すると、いきなり無断撮影する人が登場!

 

このスマホの先にスポンジおばあさんがいます。

 

いいぞいいぞ! 撮ってくれ! そしてネット上にあげてくれ!

 

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スポンジおばあさんはゆっくりゆっくり進んでいきます。

 

ババアなので、ゆっくりゆっくりと。

 

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すると今度は2人組の若者が。

 

「ギャハハハ! なにこいつ! おもれー!」とパシャパシャ撮っています。

 

うんうん、それでこそ渋谷の若者だ。

 

映画だったら真っ先に殺されるヤツのリアクションだけど、これは映画ではなく、実験なので、どんどん撮って、どんどんSNSに投稿してくれ!

 

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「インターネット文化人類学って書いてあるけど、なんだろう?」というヒソヒソ声が聞こえてきます。

 

街中に突然現れた異質な存在の目的が一体何なのかを、目撃者それぞれが探ろうとしているみたいです。

 

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そして、ここでスポンジおばあさんに関するツイートを発見。

 

これはどう見てもスポンジおばあさんのことを言っていますね。

 

しかし、残念ながら写真は添付されていませんでした。

 

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その後も、渋谷の街を徘徊し続けます。

 

おっと、交番だ!

 

今日もお巡りさんはがんばって渋谷の街を守ってくれていますね。

 

ごくろうさまです! 怪しいヤツがいたら、遠慮なく片っ端から検挙してやってください! 日本平和のために!

 

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男の子「あー、スポンジだあー」

 

お母さん「めっ! ほら行くわよ。こっち来なさい」

 

男の子「やらやらやらぁ! スポンジほちぃ」

 

お母さん「ダメって言ってるでしょ! ほら行くわよ、いい子にしなさい」

 

 

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(地べたに座り込んでギャン泣き)

 

 

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さて、そんなわけで実験開始から2時間が経過しました。

 

さすがに、ずっと中腰で歩き続けたので、腰に限界がやってきました。

 

普通に背筋を伸ばして歩きます。

 

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と、ここで再び、実験に関するツイートを発見。

 

背中に貼りつけた書影に「セブ山・著」と書いていたので、それを見てツイートしてくれたようです。

 

しかしながら、今回も写真は添付されていません……。

 

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その後、さらに1時間ほど渋谷の街をウロウロしたのですが、結局、写真付きのツイートが投稿されることありませんでした。

 

 

実験してみてわかったこと

さて、残念ながらスポンジおばあさんの写真がSNSに投稿されているのを発見することはできませんでしたが、今回の実験を通して、わかったことがいくつかあったのでまとめさせていただきます。

 

●若者は盗撮スピードが異常に早い

カメラ担当者が「スポンジおばあさんを無断撮影している人」に気付いてその姿を撮ろうとするも、それよりも早く一瞬でパッと撮って、サッとスマホを片付けてしまう人が多くなかなかカメラにおさめることができなかったそうです。

 

これはカメラ機能の発達も関係しているのではないかと思っています。瞬時に起動するカメラ機能が増えていることにより、盗撮スピードは確実に向上しているのでしょう。

 

 

●若者は盗撮スキルが非常に高い

こちらもカメラ担当者いわく、歩きながらさりげなく撮る人や、スマホを見るふりをしながらその流れで撮る人などが多く、なかなかその姿をカメラにおさめることはできなかったそうです。

 

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この写真は、偶然撮れたものなのですが、中央やや右の赤い丸にご注目ください。

 

スマホをいじっているふりをしながら、すれ違いざまに撮影しています。(※このスマホの先にスポンジおばあさんがいます)

 

このように、スマホの進化とともに、人々の盗撮スキルも格段に向上しています。

 

 

●逆に、外国人は堂々と撮る

これは文化の違いなのか、海外に遊びに来ている浮れたテンションによるものなのかわかりませんが、外国人は一切何も気にせず至近距離でバシバシ撮っていました。

 

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「街中で老婆がスポンジを散歩させている光景」は、万国共通で異常なんですね。

 

 

●「YouTuberだ」とめっちゃ言われた

今の世の中の共通認識として「街中でおかしなことをしている人=YouTuber」というのがあるみたいです。

 

街の人々は、おかしな格好の人を見た時に「YouTuberだ」と理由付けをして、気持ちを納得させているということがよくわかりました。

 

多少、無茶な撮影をしていても「そうなんです、私、ユーチューバーなんです」という面(ツラ)をしておけば大体、納得してくれそうですね。

 

そういえば以前、とある公園で「大量のおがくず(材木を切る時に出る木くずのこと)が入ったビニールプールで泳ぐ」という撮影をしていたら、小学校低学年くらいの男の子を連れたお母さんが近づいて来て、「怒られるのかな?」と思ったら、「ユーチューバーさんですか? 私はよくわからないんですが、息子がユーチューバーのファンなので……」と言われて驚いたことがあります。

 

「そうです。ユーチューバーです。ヒカキンという名前で活動しています、ブンブン! チャンネル登録よろしくネ!」と答えておきました。

 

 

●渋谷の街、めっちゃ汚れてる

3時間あまり、渋谷の街を引きずったスポンジがこちらです。

 

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すんごい汚れたし、スポンジ群の中にゴミが絡まっています。

 

でも、これだけ渋谷の街をキレイにできたということだから、よかった。

 

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「スポンジおばあさんは、街のクリーン運動に力を入れています」

 

 

なぜ「スポンジおばあさん」の写真はSNSに投稿されなかったのか?

さて、若者の盗撮スキルの高さがわかった今回の実験ですが、「スポンジおばあさんの写真がSNSに投稿されて拡散される」という当初の狙いは達成できませんでした。

 

では、なぜ誰も投稿してくれなかったのでしょうか?

 

その答えは、実験終了後にカメラ担当者に言われたひとことに隠されていました。

 

yabai

 

そうです。

 

僕があまりにも「スポンジおばあさん」という役になりきりすぎたせいで、「そっち系」っぽさがプンプン出てしまい、撮った写真をSNSに投稿するのを自重した(投稿できなかった)のです。

 

これは最初に気付くべきでした。

 

「たわしおじさん」に対抗しての「スポンジおばあさん」という存在だったのですが、いきなり街中に「スポンジを何匹も散歩させている老婆」がいたら、たしかに「あ、マジのやつだ」と思われて、仕方ありません。

 

そういった「マジのやつ」の写真をSNSに投稿して笑い者にするのは炎上のもとなので、誰もネット上にあげてくれなかったのだと思います。

 

そういう意味では、若者のネットリテラシーは確実に育っているなと、少し安心しました。

 

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実験中、楽しくなってしまい、自動販売機のおつり口に手を突っ込んで小銭を探すスポンジおばあさん。

 

 

まとめ

以上の実験結果を総合しまして、「“無断で撮られてネット上で晒される”を利用して広告効果を生み出すことは可能か?」という疑問の答えに辿り着きました。

 

それは……、

 

chindon

 

ということです。

 

今回失敗した原因の多くは、スポンジおばあさんから漂う「撮っちゃダメな雰囲気」にあると思います。

 

逆に、「撮ってもOKな雰囲気」が出ていたら、たくさん撮られて、たくさんSNSに投稿されていたはず。

 

そういう意味では、楽しげな音楽を鳴らしながら、派手な衣装で街中を練り歩く「チンドン屋」という存在は、今の時代にマッチしているのではないかと思います。

 

もちろん、旧来の形ではなく、リアルな動物のマスクをつけていたり、きゃりーぱみゅぱみゅのような派手だけどポップでかわいい衣装などで歩けば、無断撮影を利用して広告効果を生み出すことは可能なのではないかと思います。

 

SNSが発達した今の時代だからこそ、チンドン屋という存在は需要があるのではないでしょうか?

 

「SNSでいかに拡散される広告を打つか?」というのは、各社の広報担当者さんは頭を悩ませている課題だと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

そんなわけで、今回のような実地調査やインタビューなどで「インターネットの真実」を読み解く一冊、『インターネット文化人類学』絶賛発売中です!

 

どうぞよろしくお願い致します。

 

 

セブ山(Twitter:@sebuyama)+有限会社ノオト

フリーのライター。平日毎日更新の ウェブマガジン「オモコロ」(外部サイト)や「トゥギャッチ」(外部サイト)で活動中。

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