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クリスチャン・ラッセンはいつから人気?調べてみた

2017/1/28 12:01 ネタりかコンテンツ部

(画像はイメージです) (画像はイメージです)

クリスチャン・ラッセンはハワイ在住のアメリカ人アーティスト。ラッセンという名前を聞いてピンと来ない人も、彼が描いた色彩鮮やかなイルカの絵を見れば、「ああ、あの!」と思い当たる人は多いはずです。

ラッセンは1956年カリフォルニア生まれ。11歳でハワイに移住し、サーフィンと絵画制作に励みまし(『クリスチャン・ラッセン版画作品集』)た。海やイルカをモチーフにした作品で知られ、「マリンアート」とも称されます。

ところで、インターネット上のフリー百科事典である「ウィキペディア」には、ラッセンの項目は日本語でしかありません(2017年1月現在)。ラッセンは日本において、とても知名度が高い画家ですが、いったいいつから人気なのでしょうか?

 

調査方法

ラッセンのことを調べるにあたって、以下の方法を取りました。

まずは国会図書館にて、現在出ているラッセンの画集を閲覧。さらに国会図書館デジタルコレクション、聞蔵IIビジュアル、ヨミダス歴史館、日経テレコン21、大宅壮一文庫雑誌記事索引のデータベースを用いて、「ラッセン」と検索。出てきた新聞記事、雑誌記事をひたすら見ていきました。

すると、以下のことがわかりました(各文章の括弧書きのなかに、出典を記載しています)。

 

ラッセンはいつから日本で人気なのか?

ラッセンの絵は、日本ではアールビバン株式会社が販売契約をしています。彼の書籍によれば、その接点は1988年に遡ります。ハワイのヒルトンホテルにかけられたラッセンの絵を、アールビバンの社長が見かけてファンになったそうです。1989年、ラッセンとアールビバンは販売契約を結びました(『クリスチャン・ラッセン版画作品集』)。

一目見ただけでラッセンの絵だとわかるほど、彼の作風は個性的ですが、売れ方もそれまでの「美術」とは違うものでした。コレクターが敷居の高い銀座の画廊で買うのではなく(「月刊美術」1994年5月号「ハッピーに生きたい私達が求めるハッピーなアート」)、デパートやおしゃれなギャラリーで普通の会社員がローンを組んで購入したのです(「月刊美術」1994年5月号「時代の空気をめいっぱい孕んだアート」)。

90年には東急ハンズ渋谷店で作品を販売開始。月に80枚売れたそうです(「日経流通新聞」1991年4月18日「アートポスター 一味違うインテリア、自己表現の手段に(売れ筋)」)。

日本に紹介されてすぐに人気になったことがわかります。

 

ラッセンとヒロ・ヤマガタ

当時、ラッセンと一緒に並べられたのはヒロ・ヤマガタの作品。彼もラッセンとは方向性は違いますが、色鮮やかな画風で知られています。ヒロは80年代にアメリカで人気が出て、人類飛行200周年記念財団やロサンゼルス五輪などの公式ポスターを手掛けたことで注目されました(「月刊美術」1994年5月号「時代の空気をめいっぱい孕んだアート」)。

日本でも84年に新宿・小田急百貨店で個展を開催します(『山形博導画集』)。高額な版画作品が次々と売れ、人気を得ました(「月刊美術」1994年5月号「時代の空気をめいっぱい孕んだアート」)。

「普通の会社員がアート作品を買う」という下地を作ったのはヒロ・ヤマガタと言えるかもしれません。

90年以降、ラッセンは定期的に展覧会を開催し、作品を売っています。97年には日本全国を縦断する原画展も行いました(「宣伝会議」1997年8月増刊「クリスチャン・ラッセン原画展」)。

ただし、店頭で呼び込みをし、ローンを組ませる販売手法が強引だという声もあります(「週刊文春」1994年12月1日号「「絵の新興宗教」人気画家 C・ラツセン」)。

 

多彩なコラボレーション

ラッセンの活動で特徴的なのは、「コラボ」の多さです。代表的なのがジグソーパズル。それだけでなく飲料水のボトルや銀行の預金通帳、携帯の待ち受け画面にも絵を提供しています。彼が選曲したコンピレーション・アルバムを出したり、映画に出演したり、入浴剤に付けるオマケのフィギュアを監修したりと、幅広く仕事をしています(日経金融新聞、日経産業新聞、日経MJ、日経流通新聞、日本経済新聞の各紙より確認)。

このように、ただ絵を発表するだけでなく、多くのコラボレーションをすることで、様々なメディアに露出することも、彼の人気を支えている要因かもしれません。

 

専門家に聞いてみた

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お話を聞いた人:中ザワヒデキさん
1963年、新潟県出身。美術家。千葉大学医学部在学中にアーティスト活動を開始し、手法を変えながら作品を発表し続ける。著書に『現代美術史日本篇1945-2014』(アートダイバー)『西洋画人列伝』(NTT出版)、共著に『ラッセンとは何だったのか?』(フィルムアート社)などがある。

 

──ラッセンを最初に知ったのは?

92、3年ぐらいです。ただ、ヒロ・ヤマガタについては、その5年ぐらい前。ヒロ・ヤマガタについては目について仕方ないから知りました。周りでも評判には一切なっていませんでしたが、広告として目に入ってきたのです。ファミレスのメニューで使われたり、銀行の通帳で使われたりしていました。

ヒロ・ヤマガタもラッセンも、美術の世界では無視される存在。というか、無視しないと成り立たないのですが、なぜタブー視するかというと、存在がタブーなだけあって上手く説明できません。

 

──ラッセンが売れ始めたのは90年代前半。その当時、美術業界の評判や扱いはどうでしたか?

暗黙の了解で、「言ったら終わり」のような扱いでした。

 

──なぜ「言ったら終わり」?

出現の仕方と……絵柄。美術では単純な具象はバカにされるのですが、そのバカにされる典型をやっているようなものだからです。

ただ、理論的には「それだっていいじゃない」という反証はいくらでもできて、それを逆手にとったアンディ・ウォーホルのような存在もいます。複合的な要因が絡まりすぎていて、説明しようとすると未だに上手くできません。

 

──ラッセンが人気なのはなぜだと思いますか?

ある意味、最大多数の最大幸福に寄与するような存在がラッセンやヒロ・ヤマガタ。美術の中ではラッセンの価格は安く、数千万円する作品が普通にあるなかで、ラッセンは数十万円。言ってみれば、「大衆相手の商売」を手掛けた存在です。

 

──ラッセンが美術業界に認められることはあり得ますか?

ウォーホルも80年代始めぐらいまでは「あんなのは芸術じゃない」という意見はあった。ルソーやピカソ、多くの印象派の画家を始め、最初は「こんなのは芸術じゃない」と言われるものです。

 

──じゃあ、ラッセンやヒロ・ヤマガタも50年後には?

評価されている可能性はあります。実際、ヒロ・ヤマガタのマイナスイメージは聞かれなくなりました。ラッセンも、若い人には嫌悪感を持っている人は少なくなっています。いずれ、ルソーなどの文脈で評価されることもあるかもしれません。

 

──美術史に載りますか。

今のところは載りません。

ただ、ラッセンは、初期の作風を確立させていく過程においては、やりたいことは「サイケデリックな具象で全てを描き切ろう」というものだったんだと思います。

ヒロ・ヤマガタもアメリカ西海岸から出てきた人で、強い色彩はサイケデリックの影響があるかもしれません。ヒッピー・ムーブメントから出てきた人たち、という文脈に載せようと思えば載せられます。

 

おまけ:「ラッセンと日本」年表(暫定版)

1988年

ハワイのヒルトンホテルにてアールビバン社長がラッセンの絵を見る。

 

1989年

アールビバンとラッセンが日本国内での販売契約を結ぶ。

11月、コナミが「光るパズル」シリーズでラッセンの絵を起用。

 

1990年

渋谷109の地下にアールビバンの直営店「ギャラリー・ミューゼ」がオープン(現在は閉店)。

12月、東急ハンズ渋谷店にて作品を販売。月に80枚売れる。

 

1992年

東京ドームで行われた環境保全大会の特別ゲストに呼ばれる。

 

1994年

5月、書籍『THE ART OF LASSEN』(マリン企画)出版。

この頃、恵比寿のバー&ギャラリー「絵心庵(えころあん)」で、壁にラッセンの絵が飾られる。オーナーはラッセンの絵を初めて日本に輸入した人。

 

1995年

2月、住友銀行が預金通帳にラッセンの絵を起用。ちなみに同じ年の12月に富士銀行がヒロ・ヤマガタ、翌年6月に第一勧業銀行がジミー大西を通帳の絵に起用している。

4月、アイクがラッセンのTシャツを販売。

5月、ラッセンの絵がボトルに描かれたアメリカ産の飲料水「アパニ・ピュアウォーター」が発売。

6月、クラレとエポック社がラッセンによるデザインの室内インテリア用のバルーンを販売。イルカの形をしたバルーン。

 

1996年

7月、シンフォレストがパソコン向けCD-ROMソフト「ラッセン作品集」を販売。

 

1997年

3月、書籍『海の宝もの』(小学館)出版。

4月、書籍『海の日』(小学館)出版。

5月、島根にて発生した重油流出事故の復興支援として日本で初めての原画展を開催。

6月、ビクターよりラッセンの選曲によるCD「クリスチャン・ラッセン・セレクション」を発売。

7月、増田屋コーポレーションがPCソフト「デジグ ラッセン」を販売。パソコンでラッセンのジグソーパズルがプレイできる。同ソフトはセガサターンでも販売された。

 

1998年

5月、出演した映画「私は地球」の宣伝のために来日。その後、日本各地で上映会を開催される。

同月、雑誌「FOCUS」で女優・藤谷美和子とのデートを報じられる。

6月、NTTのデザイナー電報にラッセンが起用される。フレームスタンドにラッセンの絵。

10月、徳間ジャパンよりCDアルバム「TURN THE TIDE」をリリース。ラッセンが作詞・作曲した曲も収録。

 

1999年

6月、ブラザーインターナショナルがハワイ産のミネラルウォーター「ハワイアン・スプリングス・ナチュラル・ウォーター」を販売。ラベルにラッセンの絵が使われる。

 

2000年

6月、iモードのサービス「待受アートパラダイス」に待ち受け画面を提供。

11月、ウェブアイとイーピクチャーズがラッセンの絵を使った年賀状デザインをネット販売。

 

2001年

7月、セイワが自動車用のアートフィルム「ラッセンブラックライトフィルム」を発売。夜間にブラックライトを当てると発行し、ラッセンの絵が浮かび上がる。

10月、キンコーズ・ジャパンがラッセンの絵で年賀状が作れるサービスを提供(翌年も実施)。

 

2004年

3月、天田印刷加工(現・株式会社あまだ)がおまけ付き入浴剤「ラッセンの世界」を販売。入浴剤にラッセンが監修したイルカのフィギュアが付いてくる。

 

2005年

1月、ビバリーがパノラマサイズのジグソーパズル「C.R.ラッセンコレクション」を発売。

3月、フィッツコーポレーションが香水「パルファム クリスチャン リース ラッセン ライジングウェーブ」が販売。パッケージにラッセンの絵が入った男性用香水。

12月、平和がパチンコ機種「ラッセンワールド」を発表。

 

2006年

11月、かもめツアーが「クリスチャン・ラッセンと会食するセレブなホノルル休日」ツアーを開催(翌年2月にも)。

 

2007年

日本の温室効果ガス削減を目指すプロジェクト「チームマイナス6%」のメンバーに。

 

2008年

4月、ソースネクストがはがき作成ソフト「ソースネクスト筆王ZERO」にラッセンの絵柄を収録。

 

2010年

12月、ザッパラスがスマホ向け着せ替えアプリ「ラッセン ホーム」提供開始。

 

2013年

2月、アメーバブログにて公式ブログを開設。最後の投稿は2014年12月24日。

同月、書籍『Lassen Art&soul』(廣済堂出版)出版。作品のほかに家族写真、自宅写真なども掲載。

6月、書籍『ラッセンとは何だったのか?』出版。

8月、株式会社コスモウェブがラッセンの絵が入ったiPhone5用ケースを販売。限定10セット、値段は100万円。

9月、奈良美智、「ラッセンとファンが同じ」という美術関係者の発言に怒りを表明。

12月、ももいろクローバーZのライブ会場限定シングルのジャケットに絵を提供。

 

2014年

9月、「YOUは何しに日本へ?」出演。

 

2015年

8月、書籍『クリスチャン・ラッセン版画作品集』(アールビバン)出版。

この年から翌年にかけて「ラッセンが好き」が持ちギャグのお笑い芸人永野がブレイク。

 

2016年

8月、ジグノシステムジャパン、ラッセンのLINE着せ替えを配信開始。

12月、日清の「どん兵衛」とコラボ。かき揚げの絵を提供する。

 

主な参考文献

クリスチャン・ラッセン(2013)『Lassen Art&soul』廣済堂出版.
クリスチャン・ラッセン(2015)『クリスチャン・ラッセン版画作品集』アールビバン.
高橋ゆう里(1994)「ハッピーに生きたい私達が求めるハッピーなアート」, 『月刊美術』1994年5月号, pp.49-51, 株式会社サン・アート.
原田裕規ほか(2013) 『ラッセンとは何だったのか?』フィルムアート社.
山形博導(1986)『山形博導画集』小学館.
「クリスチャン・ラッセンの歩み」, 原田裕規編『ラッセンとは何だったのか?』pp.16-19, フィルムアート社.
「クリスチャン・ラッセン略年譜」, 原田裕規編『ラッセンとは何だったのか?』pp.256-259, フィルムアート社.
「時代の空気をめいっぱい孕んだアート」, 『月刊美術』1994年5月号, pp.45-48, 株式会社サン・アート.

その他、年表の作成には朝日新聞、日経金融新聞、日経産業新聞、日経MJ、日経流通新聞、日本経済新聞の各紙を参考にしました。

 

(取材・文:菊池良、写真:アフロ)

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