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お笑いコラム【この芸人を見よ!54】孤高の女芸人・友近が体現する「女としての業と生き様」

2009/11/9 21:38
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 昔から、お笑い文化というものは、男性が中心になって作られてきた。現在でも、お笑い芸人やお笑い番組制作者の多くは男性である。だから、私たちが普段テレビや舞台で目にしているものの大半は、男によって作られ、男によって演じられる「男の笑い」なのだ。

 そんなお笑い界という男社会の中で、女性芸人が笑いを作っていくためには、大きく分けて2つのアプローチがある。
 1つは、世の中の主流である「男の笑い」の方法論をなぞって、その枠組みの中で自分たちの芸を磨いていく、という方法だ。そしてもう1つは、女としての立場を生かして、「女の笑い」というものを一から新たに作っていく、という方法だ。

 もちろん、前者よりも後者の方が道は険しい。「男の笑い」を見慣れている視聴者や観客に対して、全く別の価値観を新たに提示して、それを理解させなくてはいけないからだ。

 友近は、デビュー以来一貫して、後者の道を歩んでいる女性芸人である。職人気質の彼女のこだわりに満ちたネタの数々は、業界内外で熱狂的な支持を受けており、女性芸人の中でも実力ナンバーワンとの呼び声も高い。

 友近の芸人としての魅力は、鋭い観察眼と高い演技力や歌唱力を生かした、精密で隙のないキャラ造形にある。だが、彼女がすごいのはそれだけではない。

 友近は、「自分が面白いと思っていることを表現したい」という揺るぎない信念を持ち、いかなるときでもそれを曲げようとはしない。彼女は、インタビューなどでも平然と「好きなことができれば、笑いがなくても構わない」という趣旨の発言をしている。そこまで割り切っているというのが彼女の恐ろしいところだ。

 11月3日、新宿・ルミネtheよしもとにて、友近の単独ライブ「吉本炎上」が開催された。本公演は、遊廓を舞台にした故・五社英雄監督の映画『吉原炎上』を下敷きにして構成されたもの。女性芸人を多数擁する吉本興業を、女の欲望が渦巻く吉原遊廓になぞらえた独自の世界観のもとに、珠玉の新作ネタを披露していた。

 自分自身を、女を売って生きる吉原の遊女に見立てて、ライブ冒頭から「好き勝手にやらせてもらうよ!」と宣言。その言葉通り、彼女は自分の感性だけを信じて、2時間あまりの単独ライブをやりきった。

 ネタバレになるので詳細は控えるが、このライブでは、平尾昌晃・畑中葉子によるデュエット曲「カナダからの手紙」が効果的に用いられる場面があった。この往年のヒットソングの歌詞の中に、こんな一節がある。

「あなたの愛を たしかめたくて わがままばかり 云いました」

 愛されているという実感が欲しくて、わがままを言って相手を振り回す。これがまさに、芸人・友近が抱える女の業というものだ。彼女の本当のすごさは、女らしさを抱えた自らの手の内を堂々とさらけ出して、「女としての業」をお笑い芸の形で昇華させようとしている、という点にあるのだ。

 自己満足と言われても仕方がないくらい、好きなことだけを無理に押し通す。それでも、心のどこかに、共演者や観客に自分のわがままをわかってほしい、という身勝手さを持っている。愛されているという確かな手応えだけが欲しくて、今日も彼女は舞台に上がる。女をまっとうする友近の芸人人生は、有無を言わさず見る者を圧倒する迫力に満ちている。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)


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日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が本になります。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オリエンタル・ラジオ、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる"お笑い愛"で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算したり、今年で9回目を迎える「M-1グランプリ」の進化を徹底的に分析したりと、盛りだくさんの内容になります。発売は11月下旬予定。ご期待ください。

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2009/11/9 21:38 更新

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