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「わたし出すわ」が炙り出したのは、生々しい人間の本質

2009/10/22 19:12
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 ある日誰かがポンと100万円ぐらいくれたりしないだろうか――そんな小市民的な妄想、誰もが一度はしたことがあるのではないかと思う。少なくとも筆者はこれまでの人生で10回ぐらいは考えたことがある。「わたし出すわ」は、まさにその夢のような状況が本当に訪れたら……という設定で展開される味わい深いヒューマンドラマだ。

「わたし出すわ」作品フォトギャラリー

 東京から故郷へ戻ってきた山吹摩耶(小雪)。かつての同級生と再会した摩耶は、彼らの夢や希望を実現するために惜しげもなく大金を差し出す。戸惑いながらもそのお金を受け取ってしまう友人たち。なぜ摩耶はお金を出すのか。何が目的なのか。そして大金を手に入れた友人たちの運命は――。

 この映画の見所はいくつかあって、それはたとえば摩耶が友人のためにあっさりと大金を出すという奇抜な設定の面白さだったり、摩耶自身が持つミステリアスな魅力だったりするわけだが、個人的にもっとも注目してほしいのは、“お金を受け取った友人たちの行く末”である。

 人によって抱えている欲望は様々なのだけど、とにかくお金さえあれば……と思っている人が本当にそのお金を手にしたとき、いったいどうなってしまうのか。お金が人を変え、さらには運命をも簡単に左右していく様子は、淡々と描かれているからこそ残酷な現実をよりいっそう克明に映し出す。

 そこで語られるのは、「お金はやっぱり大事よね」とか、「お金は人をダメにする」といった単純な結論ではない。お金という現代における絶対的な価値を手にしたときの人間の行動は、それこそ一括りにして語れるほどシンプルなものではないからだ。欲望を満たすことで満足する者もいれば、さらなる欲望に目覚める者もいる。あるいはそもそも金銭でどうにかなる欲望を持たない者だって存在する。森田芳光監督は、小さな田舎町で暮らす人々に「お金」という小石を投じることで、人間のある種の本質を容赦なく炙り出していく。

 そして、小雪をはじめとするキャストたちは、それぞれの役の言動を彼らなりに解釈し、見事に演じてのけた。一見すると非現実的とも思える本作の展開に妙な説得力を与えたのは、ひとえに俳優陣の力だと言えるだろう。

 「わたし出すわ」と言われたら、あなたならどうするか。自分自身に問いかけながら、ご覧いただきたい。 (文・山田井ユウキ)


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2009/10/22 19:32 更新

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