ペ・ドゥナの透明感を凌ぐ、板尾創路の圧倒的な存在感――「空気人形」
2009/9/24 17:51
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ペ・ドゥナの透明感を凌ぐ、板尾創路の圧倒的な存在感――「空気人形」 (c)業田良家/小学館/2009『空気人形』製作委員会 写真/瀧本幹也
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あらすじはこうだ。
古びたアパートで持ち主の秀雄(板尾創路)と暮らしている空気人形(ペ・ドゥナ)。あるとき自我に目覚めた彼女は、メイド服を着て町へと繰り出し、東京で暮らす様々な人と出会う――。
言うまでもないが「空気人形」とはラブドールのことである。生まれたての赤ん坊のような純粋さと、男性の性欲を満たすために存在するという二面性を備えた空気人形は、それ自体が現代人を象徴する存在であり、視聴者は彼女の目線を通して、もう一度現代人――すなわち自分自身――の姿を再確認していくことになる。
途中に登場する“病める現代人たち”の描写についてはやや掘り下げが浅いと感じる部分もあるが、そうかと思えば中盤から後半にかけて吐き気を催すほどの人間の醜さを見せつけられる場面もあったりするので油断できない。一見するとそのしっとりとした雰囲気にだまされそうになるが、本作の本質はかなりダークだ。
一方で製作サイドに目を向ければ、注目したいのはやはりキャスティングである。空気人形役には、無垢な透明感と“今まさに初めて生まれたかのように世界を見る目”を同時に持つ女優としてペ・ドゥナが選ばれ、彼女はこの難しい役を見事に演じきった。日本ではそれほど知名度がある女優ではないが、だからこそ固定されたイメージがなく、結果として彼女の起用は大正解だったといえる。
しかし、その空気人形をも超えるベストキャスティング、それが空気人形の主人である秀雄を演じる板尾創路である。
秀雄はファミレスで働く冴えない中年男で、帰宅すると空気人形に話しかけ、夕食を一緒に食べ、彼女を抱いて眠る日々を送っている。ちょいちょい物語に挟まれる二人の生活は非常に生々しく(特にベッドシーンは色々な意味で必見)、空気人形に感情移入して外出時の開放感や高揚感を体感していた視聴者は、その度に一気に現実に引き戻される。
この何とも言えないどんよりとした空気を生み出しているのは、板尾が持つ“リアルなオッサン”としての天性の存在感だ。彼もまた、ペ・ドゥナとは違った意味で独自の空気をまとう一流の俳優なのである。 (文・山田井ユウキ)
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