【ハリウッドレビュー】「サブウェイ123 激突」はトニー・スコット監督の「プロ論」を体現する
2009/9/3 13:11
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【ハリウッドレビュー】「サブウェイ123 激突」はトニー・スコット監督の「プロ論」を体現する
【ハリウッドレビュー】
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トニー・スコット監督は、もしかしたら今が旬ではないかと思う。80年代に「トップガン」や「ビバリーヒルズ・コップ2」(「1」の監督はマーティン・ブレスト)を撮っていた頃は、兄のリドリー・スコットが「エイリアン」や「ブレードランナー」などの名作を連発していたこともあり、どちらかというと、商業主義に走った“出来の悪い弟”というイメージだった(特に映画マニアの間では)。
ところが! 最近はなんだか兄弟の評価が逆転してきた。芸術性にとらわれ停滞感を増している兄リドリーに対し、トニーは還暦を過ぎたベテランとは思えぬフットワークの軽さで、「スパイ・ゲーム」「マイ・ボディガード」「ドミノ」「デジャヴ」など、アクションやサスペンスの佳作を1〜2年に一本のハイペースで放っている。まさに“量が質を生み、質がまた量を生む”という好循環で、勢いよく突っ走りつづけているのだ。
いまやハリウッドNo.1の職人監督の座を揺るぎないものにしたトニー。彼の強さの最大の要因は、やはり自分の文体を完全に確立しているからだろう。それは、やたらめまぐるしいカットワークに、ノリのいい音楽をシンクロさせるという、MTVタイアップの映画が華やかなりし時代に生み出されたスタイルである。それをトニーは独自にエスカレートさせ、いまでは単なる会話のシーンでも、パンチが効いたリズミカルな編集を見せてくれるのだ。
こうなると、もはや文体自体が商品登録である。映画の途中からでも画面を観ただけで、「あっ、トニーだ」と一発でわかるのだ。そして彼はこう思っているのではないか。「俺のスタイルがあれば、どんな脚本だって面白く撮れる」と――。
前フリが長くなったが、今回の新作「サブウェイ123 激突」も、トニー自身は「今回はいつもと違うよ」なんて語っているにもかかわらず、まったくいつものトニー・スタイルで面白く仕上げている。
⇒「サブウェイ123 激突」作品フォトギャラリー
原作はジョン・ゴーディの犯罪スリラー小説だが、これは74年に「サブウェイ・パニック」というタイトルで一度映画化されている。ただこの映画は、わりとゆるめのシチュエイション・コメディに近いノリ。ちなみにそれをしっかり地下鉄パニック・サスペンスの色合いを強める形で応用したのが、「踊る大捜査線」のスピンオフとして作られた「交渉人 真下正義」である。
一方、トニーの場合、当然あからさまに痛快でスピーディーだ。サイコな犯人(ジョン・トラボルタ)と実直な地下鉄職員(デンゼル・ワシントン)の対立、そして次第に芽生える奇妙な絆をドラマの軸に、ニューヨークを舞台にしたハイジャック・アクションを、容赦ない暴力描写もたっぷり盛り込んで手際よく描き切っている。
もちろん、映画史に残る傑作というわけでは全然ない。泣きのシーンではえらく安っぽい情緒過多に流れたりと、「こんな感じでいいんだろ」みたいな“心のなさ”が投げやりに現れる時が結構ある。しかし、そもそも一本の娯楽映画に求めるものは、それくらいで充分なのではないか?
ものすごく地力のある人が、70%くらいの出力で仕事をするとこうなる。「サブウェイ123 激突」は、その見本だ。「プロ論」としても興味深いのが、トニー・スコットの映画なのである。 (文・森直人)
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いまやハリウッドNo.1の職人監督の座を揺るぎないものにしたトニー。彼の強さの最大の要因は、やはり自分の文体を完全に確立しているからだろう。それは、やたらめまぐるしいカットワークに、ノリのいい音楽をシンクロさせるという、MTVタイアップの映画が華やかなりし時代に生み出されたスタイルである。それをトニーは独自にエスカレートさせ、いまでは単なる会話のシーンでも、パンチが効いたリズミカルな編集を見せてくれるのだ。
こうなると、もはや文体自体が商品登録である。映画の途中からでも画面を観ただけで、「あっ、トニーだ」と一発でわかるのだ。そして彼はこう思っているのではないか。「俺のスタイルがあれば、どんな脚本だって面白く撮れる」と――。
前フリが長くなったが、今回の新作「サブウェイ123 激突」も、トニー自身は「今回はいつもと違うよ」なんて語っているにもかかわらず、まったくいつものトニー・スタイルで面白く仕上げている。
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原作はジョン・ゴーディの犯罪スリラー小説だが、これは74年に「サブウェイ・パニック」というタイトルで一度映画化されている。ただこの映画は、わりとゆるめのシチュエイション・コメディに近いノリ。ちなみにそれをしっかり地下鉄パニック・サスペンスの色合いを強める形で応用したのが、「踊る大捜査線」のスピンオフとして作られた「交渉人 真下正義」である。
一方、トニーの場合、当然あからさまに痛快でスピーディーだ。サイコな犯人(ジョン・トラボルタ)と実直な地下鉄職員(デンゼル・ワシントン)の対立、そして次第に芽生える奇妙な絆をドラマの軸に、ニューヨークを舞台にしたハイジャック・アクションを、容赦ない暴力描写もたっぷり盛り込んで手際よく描き切っている。
もちろん、映画史に残る傑作というわけでは全然ない。泣きのシーンではえらく安っぽい情緒過多に流れたりと、「こんな感じでいいんだろ」みたいな“心のなさ”が投げやりに現れる時が結構ある。しかし、そもそも一本の娯楽映画に求めるものは、それくらいで充分なのではないか?
ものすごく地力のある人が、70%くらいの出力で仕事をするとこうなる。「サブウェイ123 激突」は、その見本だ。「プロ論」としても興味深いのが、トニー・スコットの映画なのである。 (文・森直人)
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2009/9/3 13:11 更新